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無料翻訳ツールの危険性|情報漏洩リスクと安全な対策とは

無料翻訳ツールの利用には、情報漏洩のリスクが潜んでいます。特に企業が機密情報を扱う際、翻訳ツールのデータ管理に注意を払わなければなりません。

本記事では、無料翻訳の危険性と具体的なリスク、さらに安全な翻訳手段や対策について解説します。ビジネスでの翻訳をより安全に行うためのポイントを押さえておきましょう。

無料翻訳ツールで起こりうる情報漏洩リスク

無料の翻訳ツールは手軽に利用できますが、入力したテキストが保存・収集される可能性があるため、情報漏洩のリスクを考慮する必要があります。特に、ビジネスや機密情報を扱う場面では、翻訳ツールのデータ管理の仕組みを理解し、適切な対策を講じることが重要です。

ここでは、無料翻訳ツールのリスクと安全な翻訳手段について解説します。

無料翻訳サービスのデータ取り扱い

多くの無料翻訳サービスでは、入力されたテキストがサービス向上のために収集・保存されることがあります。これにより、機密情報が意図せず第三者に漏洩するリスクが生じます。

・Google翻訳:無料版では、ユーザーが入力したテキストがサービス改善のために使用される可能性があります。

・DeepL翻訳:無料版では、入力されたテキストがサーバーに保存され、ニューラルネットワークのトレーニングや性能向上のために使用されます。

・Microsoft翻訳:無料版では、入力データがサービス改善のために記録される場合があります。

有料翻訳サービスのセキュリティ対策

有料の翻訳サービスでは、データの取り扱いに関してより厳格なポリシーが設けられており、入力データの保存や二次利用が制限されています。

・Google Cloud Translation:有料版では、ユーザーのデータが翻訳トレーニングに使用されないと明記されています。

・DeepL Pro:有料版では、送信されたテキストや文書は翻訳完了後すぐに削除され、サービス向上のために使用されることはありません。

・Microsoft Azure翻訳:有料版のAzure AI Servicesでは、送信されたテキストや音声は記録されず、トレーニング目的で使用されることはありません。

実際に発生した翻訳ツール経由の情報漏洩事例とその被害規模

2015年には「I Love Translation」という無料翻訳サイトで深刻な情報漏洩事件が発生しました。このサイトでは、翻訳のために入力されたテキストが誰でも閲覧できる状態になっており、大手企業や中央省庁の機密情報を含むメールのやり取りが世界中に公開されてしまったのです。

問題の原因は、サービス上に存在した「機密情報を保持するか否か」を選択するチェック欄を利用者が見落としていたことでした。検索エンジンの結果にまで機密情報が表示される事態となり、被害は急速に拡大しました。

この事例が示すように、たった一人のミスが企業全体の信用失墜、商談機会の損失、さらには賠償請求といった深刻な問題を引き起こす可能性があります。無料翻訳ツールを利用する際は、便利さの裏に潜む情報漏洩リスクを十分理解し、慎重な対応が求められます。

情報漏洩のリスクと対策

情報漏えいが発生した場合、企業は多大な損害を被る可能性があります。日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)の調査によれば、2011年の個人情報漏えいインシデントにおける1件あたりの平均想定損害賠償額は約1億2,810万円でした。 また、2017年の調査では、1件あたりの平均想定損害賠償額が約5億4,850万円と報告されています。

このようなリスクを軽減するためには、ISO27001認証やプライバシーマークを取得した企業のサービスを選択し、可能であれば有料の法人向けプランを利用することが望ましいでしょう。

業界別・文書タイプ別の機密情報翻訳リスク分析

機密情報を含む文書の翻訳には、高い精度だけでなく、情報漏洩リスクへの十分な配慮が必要です。特に、医療・法律・金融といった分野では、誤訳による影響が大きく、翻訳の際には慎重な対応が求められます。また、契約書や人事情報などの重要文書は、企業の信頼や法的責任に直結するため、安全な翻訳手段の選択が不可欠です。

医療・法律・金融分野における翻訳リスクの特殊性

医療、法律、金融分野の翻訳作業には、他の分野以上に厳格な情報管理と高い専門性が求められます。以下に、これらの分野における翻訳リスクの特殊性をまとめます。

医療分野の翻訳リスク

医療分野では、患者の個人健康情報(PHI)の保護が極めて重要です。日本においても、個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)により、医療機関は患者情報の適切な管理が義務付けられています。無料翻訳ツールを利用すると、氏名、住所、社会保険番号などの機密情報が外部サーバーに保存され、漏洩リスクが高まる可能性があります。

また、医療翻訳では専門用語が多く、誤訳が患者の健康や安全に直接影響を及ぼすリスクがあります。そのため、医療分野における翻訳は、専門知識と高度な語学力を持つ翻訳者が担当することが重要です。

法律分野の翻訳リスク

法律分野では、依頼者との守秘義務が厳格に求められます。契約書や訴訟関連文書の誤訳は、法的紛争や裁判の長期化、さらには特許出願の却下など、重大な結果を招く可能性があります。

また、法律文書には特殊な様式があり、フォーマットや構成の違いが文書の無効化につながることもあります。

金融分野の翻訳リスク

金融分野では、顧客の資産情報や取引情報など、極めて重要な情報を扱います。情報漏洩は、深刻な信頼損失や訴訟リスクにつながります。

また、金融翻訳には投資、銀行、保険、会計、税金など多岐にわたる専門知識が必要であり、法律の改正に伴う新たな用語にも対応する必要があります。

契約書・企画書・人事情報の翻訳で特に注意すべきポイント

契約書、企画書、人事情報は企業の命運を左右する重要文書です。これらを無料翻訳ツールで処理すると、極めて高いリスクが生じます。

契約書には法的拘束力のある条項や機密情報が含まれており、誤訳が法的紛争や不利な契約条件の受諾につながる危険性があります。企画書には競合他社に漏れると致命的な戦略情報や知的財産が詰まっています。また、人事情報には個人情報保護法で厳重管理が求められる従業員の機密データが多数含まれます。

これらの文書を安全に翻訳するには、翻訳前に固有名詞や数値の匿名化処理を行い、NDA締結済みの専門翻訳者を活用すべきでしょう。さらに、企業向けの高セキュリティ翻訳サービスの利用や、翻訳後のデータ消去の徹底が不可欠です。

翻訳精度とセキュリティのトレードオフ関係

翻訳の精度とセキュリティは、しばしばトレードオフの関係にあります。高精度な翻訳を実現するには、大量のデータを学習に活用する必要があり、その過程で情報漏えいリスクが生じることがあります。

無料翻訳ツールは便利ですが、入力データが外部サーバーで処理・保存されるため、機密情報の漏えいリスクが高まります。一方、セキュリティを重視した翻訳サービスでは、日本国内のサーバーでの処理や翻訳ログの非保存などの対策が講じられていますが、導入コストがかかります。

企業が適切な翻訳サービスを選ぶには、翻訳対象の機密度を見極めることが重要です。例えば、高機密情報にはISO27001やISO27017認証を取得した国内完結型の有料翻訳サービスを活用し、一般的な情報には無料翻訳ツールを使い分けるといった方法が有効です。

無料翻訳ツールを安全に利用するための具体的対策

無料翻訳ツールを安全に利用するには、単に機密情報を匿名化するだけでは不十分です。翻訳前のデータ加工、各サービスのセキュリティ設定の最適化、翻訳後の履歴管理など、多層的な対策が必要となります。

ここでは、無料翻訳ツールを利用する際に実践すべき具体的な対策について、段階的に解説します。

翻訳前に機密情報を匿名化・加工する方法

無料翻訳サービスを利用する際、機密情報の漏洩を防ぐために、事前の匿名化や加工が重要です。以下の方法を活用することで、リスクを軽減できます。

1.個人情報の置き換え
氏名、住所、電話番号などの個人情報は「〇〇〇」や「XXX」に置き換えてから翻訳しましょう。

2.数値データの調整
実際の数値から±10%程度ずらすことで、本質を損なわずに情報を保護できます。

3.固有名詞や製品名の変更
社内コードや製品名などの固有名詞は、仮称に変えて特定されにくくします。

4.文書の分割翻訳
重要な文書は部分ごとに翻訳し、後で再構成することで、全体像の把握を難しくできます。

5.テキスト変換による情報保護
メタデータの漏洩を防ぐため、ファイル形式をテキストに変換してから翻訳すると安全性が高まります。

6.オフライン翻訳ツールの活用
機密情報を含む翻訳は、オフライン対応の翻訳ツールや専用デバイスを活用するのも有効です。

これらの方法を組み合わせることで、無料翻訳サービスをより安全に利用できます。ただし、高度なセキュリティが求められる場合は、有料の法人向け翻訳サービスの利用も検討しましょう。

無料翻訳サービスのセキュリティ設定を最適化する方法

無料翻訳サービスを利用する際は、適切なセキュリティ設定を行い、情報漏えいのリスクを最小限に抑えることが重要です。以下のポイントを押さえ、安全に活用しましょう。

■Google翻訳のセキュリティ対策

  • シークレットモードを使用:ブラウザのシークレットモードを使うと、翻訳履歴やキャッシュの保存を防げます。
  • 履歴の保存設定を確認:翻訳履歴の保存をオフにすることで、データが残らないようにできます。

■DeepL翻訳のセキュリティ対策

  • 無料版でもアカウント設定を活用:無料版でも、アカウントを作成して「翻訳データを保存しない」設定が可能です。
  • 機密情報は有料版を検討:DeepL Proでは、翻訳データが保存されず、セキュリティが強化されています。

■Microsoft翻訳のセキュリティ対策
・個人情報保護設定を確認:クッキーの使用制限やプライバシー設定を調整し、データ管理を強化しましょう。

これらの設定を適用することで、無料翻訳サービスをより安全に利用できます。ただし、機密性の高い文書を扱う場合は、有料翻訳サービスや専門の翻訳者の活用も検討しましょう。

翻訳後のデータ消去と履歴管理の重要性

翻訳作業後のデータ管理も、情報漏えいを防ぐ上で欠かせません。無料翻訳サービスを利用すると、翻訳履歴やキャッシュが残り、機密情報が長期間サーバーに保存されるリスクがあります。翻訳後は、履歴やキャッシュを削除し、第三者による情報の閲覧を防ぎましょう。

Google翻訳を使用した場合は、「マイアクティビティ」ページで翻訳履歴を確認し、定期的に削除することが推奨されます。企業で翻訳業務を行う際は、「一定期間経過後にデータを削除する」ルールを設定し、「翻訳データ消去チェックリスト」を作成して担当者が確実に削除したことを記録すると、より安全です。

また、クラウド翻訳サービスでは、「一定期間アクセスがない場合にデータを自動削除する」設定を有効にしておくと安心です。翻訳作業後は、アカウントからログアウトする習慣をつけることで、不正アクセスによる情報漏えいリスクを軽減できます。

組織全体で取り組む翻訳セキュリティポリシーの構築

企業の翻訳セキュリティを効果的に構築するためには、組織的なアプローチが欠かせません。以下では、翻訳業務の安全性を高めるための具体的な実践方法を解説します。

翻訳業務におけるリスク評価とセキュリティガイドラインの作成

まず、翻訳対象の文書を機密レベルごとに分類し、それぞれに適した取り扱い方法を定義します。評価結果をもとに、以下の内容を盛り込んだセキュリティガイドラインを作成します。

・無料翻訳サービスの使用禁止文書の明確化
機密性の高い文書や個人情報を含む文書は、無料ツールの利用を禁止する。

・機密情報の匿名化・加工手順
文書中の個人情報や固有名詞は、事前に適切な方法で置き換え・加工する。

・安全な翻訳サービスの選定基準
有料サービスやセキュリティ対策が整ったツールを利用する基準を明確にする。

このガイドラインは、技術の進化や法規制の変更に合わせて定期的に見直し、更新することが求められます。また、全スタッフへの教育もガイドラインの一環として位置付け、無料ツールのリスクや安全な代替手段について周知徹底することが重要です。

従業員向け翻訳ツール利用教育の重要ポイント

従業員が安全に翻訳ツールを利用できるよう、以下のポイントに基づいた教育を実施します。

・利用範囲とガイドラインの明確化
利用可能なツールのリストと、入力してはいけない情報(個人情報、機密情報など)を具体的に示したガイドラインを共有します。

・実際の情報漏えい事例の共有
過去の漏えい事例を紹介し、無料翻訳ツールのリスクを具体的に理解させます。

・各ツールのデータ取扱いポリシーの解説
無料と有料の翻訳ツールで異なるデータ取り扱い方法について説明し、なぜ無料ツールにはリスクがあるのかを明確にします。

・安全な代替手段の推奨
セキュリティ対策が整った有料翻訳サービスの利用を促し、業務内容に応じた適切なツール選択を支援します。

・継続的な教育と確認テストの実施
定期的な研修やテストを通じて、従業員のセキュリティ意識を高く維持します。

定期的なセキュリティ監査

翻訳業務の安全性を維持・向上させるために、定期的な監査が必要です。具体的には、以下の取り組みを実施します。

・半年ごとに翻訳フロー全体を点検し、無料翻訳ツールの使用状況やガイドライン遵守状況を確認する。
・抜き打ちでツール使用履歴をチェックし、情報漏えいの懸念点を洗い出す。
・ペネトレーションテストなどを通じて、翻訳プロセスの脆弱性を評価し、防御策の強度を検証する。

これらの取り組みにより、組織全体で翻訳業務のリスクを把握し、セキュリティポリシーを段階的に強化することができます。

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プライバシー保護の面でも安心して利用できる設計がされています。翻訳のために送信された音声データは処理後に削除され、AIの学習には一切使用されません。

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まとめ

無料の翻訳ツールを利用する際は、情報漏洩のリスクを十分に理解することが重要です。入力データが保存・収集される可能性があるため、特に医療・法律・金融業界では機密情報の取り扱いに注意が必要です。

企業では、専用の翻訳ソリューションの導入や、明確なセキュリティポリシーの策定が求められます。セキュリティに優れた翻訳機を導入することで、安全性を高めることができます。

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