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人件費削減に有効な3つの方法|業種別の人件費率の目安や計算方法

企業経営において「人件費」は、大きな固定費の1つであり、利益率や資金繰りに直結します。ただし、無理に人件費削減を進めると、従業員のモチベーション低下や企業イメージの悪化を招くおそれがあります。では、リスクを抑えつつ人件費を削減するには、どのような策を講じればよいのでしょうか。

この記事では、業種別の人件費率の目安や計算方法、人件費が負担となる原因を整理し、有効な削減方法を紹介します。自社の人件費が適正かどうかを把握し、無理のない形でコスト削減につなげるための参考にしてください。

削減できる人件費には何がある?

人件費には、給与や賞与(ボーナス)、法定福利費、退職金など、多様な内訳が含まれます。社会保険料や労働保険料といった法定福利費は削減できないものの、工夫によって見直しが可能な人件費も存在します。

代表的な例が「残業代」です。長時間労働が常態化すれば、その分の割増賃金が企業にとって大きな負担となります。業務の効率化やシフト管理の見直しによって残業時間を減らせば、直接的なコスト削減に結びつきます。

教育研修費も、工夫の余地がある費用の1つです。外部研修に依存するのではなく、社内講師やオンライン教材を活用することで、質を維持しながら費用を抑えられる場合があります。

人材採用費も、戦略次第で抑制が可能です。求人媒体に頼りきらず、社員紹介制度やSNSを活用すれば、コストを削減しつつ定着率の高い人材を確保できる可能性があります。

自社の人件費が適切か判断するには

企業の人件費が適切であるかどうかは、その業種やビジネスモデルによって大きく異なります。人件費の適正さを測るために役立つ指標が「人件費率」です。人件費率は、売上高や売上総利益といった収益に対する人件費の割合を示すものです。

人件費率は、目的に応じて「売上高人件費率」と「売上総利益人件費率」の2種類がよく用いられます。

【売上高人件費率】
「人件費 ÷ 売上高 × 100」で算出し、売上全体に対して人件費がどの程度を占めているかを把握します。簡易的にコスト感を確認できる指標です。

【売上総利益人件費率】
「人件費 ÷ 売上総利益 × 100」で算出します。粗利を基準とするため、実際に企業が自由に使える資金に対して人件費がどれほど負担になっているかを、より正確に示します。

以下の表は、「中小企業実態基本調査 / 令和6年確報(令和5年度決算実績) 確報」から各業種の売上・売上総利益(粗利) をもとに計算した人件費率です。計算結果は小数第1位まで表記しています。

業種売上高人件費率(%)売上総利益人件費率(%)
業種全体9.636.1
建設業8.836.4
製造業7.435.2
情報通信業17.336.6
運輸業・郵便業8.737.2
卸売業5.838.4
小売業11.036.8
不動産業・物品賃貸業11.324.3
学術研究・専門・技術サービス業23.338.5
宿泊業・飲食サービス業24.536.4
生活関連サービス業・娯楽業12.631.4
サービス業(その他)19.647.3

※「販売費及び一般管理費」に含まれる「人件費(Personnel costs)」項目のみを使用
(参考:『中小企業実態基本調査/中小企業庁』

なぜ人件費が負担になっているのか問題を洗い出そう

人件費は企業にとって避けて通れないコストですが、その負担が大きくなるのには必ず理由があります。まずは「どこで無駄が生じているのか」を明確にすることが重要です。生産性の低下や業務フローの非効率、人員配置の偏りなど、複数の要因が複雑に絡み合っている場合もあります。

ここでは、人件費が負担となりやすい主な原因を3つ紹介します。

問題1.従業員の生産性が低い

従業員のモチベーションやエンゲージメントが下がると、同じ時間をかけても成果が上がらず、「人件費に見合う成果が出ていない」という状況に陥ります。

また、スキル不足も生産性低下の一因です。十分な知識やスキルを持たないまま業務を行うと、ミスの増加や作業の遅れを招き、結果的に余分な人件費が発生してしまいます。

生産性を高めるには、まず従業員のモチベーションを引き上げる仕組みづくりが欠かせません。評価制度を見直し、成果に応じた報酬や適切なフィードバックを行うことで、やる気を喚起できます。さらに、OJTや定期的なスキルアップ研修を組み合わせ、従業員が成長を実感できる環境を整えることも大切です。

問題2.業務フローに無駄が生じている

どれだけ従業員が努力しても、業務フローそのものに無駄が多ければ人件費は膨らむ一方です。例えば、紙ベースでの申請や承認に時間がかかる、同じ内容を複数の部署で二重入力している、情報共有が不十分で作業をやり直すといったケースは珍しくありません。

非効率な流れが積み重なると、実際には不要な工数が発生し、人件費の増大につながります。解決のためには、まず業務プロセスを可視化し、どこにボトルネックがあるのかを把握することが大切です。その上で、ITツールの導入やシステム連携によって自動化・効率化を進めると効果的です。

問題3.人員配置が適切ではない

ある部署には人が余っており、別の部署では人手不足で残業が常態化しているといった、人員配置の不適切な状況は効率を大きく損ないます。このようなアンバランスが続けば、採用や残業代に無駄なコストが発生し、組織全体のパフォーマンスも低下します。

解決には、まず現状の人員配置を客観的に把握することが重要です。部署ごとの業務量や繁忙期の傾向をデータで可視化し、「どこに余剰があり、どこに不足があるのか」を明確にしましょう。

その上で、ジョブローテーションや多能工化(従業員1人が複数の業務をこなせること)を進め、柔軟に人員を配置できる体制を整えると効果的です。加えて、外注や派遣の活用も一時的な人手不足の解消に有効です。

人件費削減に有効な方法

人件費は企業のコスト構造の中でも大きな割合を占めるため、経営課題として真っ先に検討されることが多い項目です。しかし、単純に給与を下げたり人員を削減したりするだけでは、従業員のモチベーション低下や生産性の悪化につながるおそれがあります。

ここでは、企業を成長させながら人件費削減にも効果的な方法を紹介します。

人材育成に注力する

従業員1人1人のスキルを高めて生産性を向上させることは、長期的に見て人件費削減に直結します。例えば、業務効率が上がれば残業時間を減らすことができ、総労働時間の削減につながります。

さらに、高いスキルを持つ従業員が増えれば、同じ人数でもより大きな成果を上げられ、人件費率を下げることが可能です。人材育成の手法としては、次のような取り組みが効果的です。

  • コーチング:上司や先輩が個別に指導し、思考力や課題解決力を引き出す
  • ジョブローテーション制度:部署異動を通じて幅広いスキルを習得させる
  • ストレッチアサインメント:通常より難易度の高い業務を経験させ、成長を促す

こうした育成施策は即効性こそ低いものの、長期的には組織全体の能力向上と人件費の効率化に大きく寄与します。

アウトソーシングを活用する

アウトソーシングとは、外部の専門業者に業務を委託することです。繁忙期と閑散期の差が大きい企業にとっては有効な手段で、必要なときに必要な人数やスキルを確保できるため、人件費を固定費ではなく変動費として扱えるようになります。

アウトソーシングを活用すれば、慢性的な人員過多や人材不足を防ぎやすくなります。さらに、採用や研修にかかるコストを抑えられる点も大きなメリットです。アウトソーシングが有効な業務の例としては、次のようなものがあります。

  • 経理・総務などのバックオフィス業務
  • コールセンターやカスタマーサポート
  • 物流・配送業務
  • システム開発や保守運用

自社の強みとなるコア業務は内製化し、付帯業務を外部に委ねることで、効率的かつ柔軟に人件費をコントロールできるようになります。

ITツールで業務を効率化する

人手に頼っていた作業をITツールによって自動化・効率化することで、作業時間を短縮し、生産性を向上させることができます。例えば、次のような業務はITツールの導入で効率化が可能です。

  • データ入力や集計業務:RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用すれば、大量のデータを短時間で処理可能
  • 問い合わせ対応:チャットボットやFAQシステムを導入することで、定型的な質問に自動応答でき、対応人員を減らせる
  • スケジュール管理:クラウド型システムを利用すれば、管理業務を効率化し担当者の負担を軽減
  • 勤怠管理:入退室管理システムやスマートロックを導入し、ICカードやスマートフォンアプリで自動記録すれば、従業員の入退室データを勤怠管理と連動できる

ITツールの導入には初期投資が必要ですが、中長期的に見れば業務効率の向上によって、人件費削減を超えるコストメリットが得られます。特に、定型的で繰り返し発生する業務から優先的にIT化を進めると効果的です。

【関連記事:仕事を効率化するコツとは?優秀な社員の特徴や効率化に役立つツールも解説

人件費削減を強行することで起こり得るリスク

人件費は企業の大きな支出項目であるため、安易に「減らす」ことだけを目的にすると、思わぬ副作用を招く恐れがあります。確かに人員削減や賞与カットといった施策は即効性がありますが、長期的に見ると従業員の離職やサービス品質の低下を引き起こし、結果的に企業の成長を妨げる可能性が高まります。

人件費削減を検討する際は、まず以下のようなリスクを理解しておきましょう。

従業員のモチベーション低下

人件費を抑えるために、従業員数を減らしたりボーナスを削減したりする方法は一般的です。しかし、このやり方は従業員のモチベーション低下を招きやすく、注意が必要です。

例えば、飲食店で人員を削減した場合、残されたスタッフ1人あたりの業務量が増加します。その結果、接客が雑になったり、長時間労働による疲労が蓄積したりすれば、顧客満足度が下がるだけでなく、離職率も高まります。

また、モチベーションが低い従業員は生産性も低下するため、短期的には人件費を抑えられても、長期的にはかえってコスト増につながるおそれがあります。

企業の信用・ブランドイメージの毀損

人手不足によってサービス品質が低下すれば、顧客からの不満やクレームが増え、売上減少に直結します。さらに、従業員が待遇への不満をSNSなどで発信すると、ネガティブな情報が拡散し、企業イメージを損なうリスクも高まります。

一度失った信用を取り戻すには、多大な時間とコストがかかります。人件費削減策を講じる際には、ブランド価値への影響も慎重に考慮することが大切です。

人件費以外を削減することも検討しよう

人件費は企業経営において大きな割合を占めますが、削減には限界があります。むしろ、人材を軽視した施策は前述のようなリスクを伴うため、まずは「人件費以外の固定費」を見直すことが重要です。

例えば、オフィスの光熱費や通信費、紙の使用や印刷コスト、倉庫や設備の維持管理費などは、工夫次第で削減が可能です。近年では、ペーパーレス化やクラウドサービスの活用によって印刷コストや保管スペースを削減したり、リモートワークを導入してオフィス賃料や電気代を抑えたりする企業も増えています。

さらに、サブスクリプション契約や保守契約を見直すことで、不要な支出を減らせる場合もあります。

【関連記事:コスト削減とは?価値創出に向けた考え方や実行手順、アイデアやツールを解説

人件費削減に役立つ「クラウドサービス」や「スマートロック」の導入ならイッツコム!

紙の使用や印刷コストを抑えたい場合は、boxなどのクラウドサービスの導入が効果的です。また、鍵の受け渡しにかかる人手やコストを削減したい場合は、スマートロックを活用した入退室管理が効果的です。イッツコムでは、レンタルスペースやオフィス、会員制店舗など、さまざまなシーンで利用できる「Connected Portal(コネクティッドポータル)」と「Connected Space Share(コネクティッドスペースシェア)」というサービスを提供しています。

ここでは、それぞれのサービスの特長を紹介します。

情報共有の効率化には「Box」

情報共有の効率化には、クラウド型のコンテンツマネジメントシステム「Box」が効果的です。有料版Boxは容量無制限のファイル共有システムとして活用できる他、オンライン共同編集やタスク管理・プロジェクト管理にも対応し、1,500以上のアプリのファイルマネージャーとしても活用できます。

レンタルスペースの無人営業も可能に:Connected Portal(コネクティッドポータル)

「Connected Portal(コネクティッドポータル)」は、スマートロックとゲートウェイを組み合わせ、特定のユーザーに対して特定の期間のみ有効な「時限式の鍵」を発行できるサービスです。スタッフが現地で対応する必要がなく、スマートフォンやICカード、暗証番号によるスムーズな解錠・施錠が可能になります。

さらに、スマートロックの操作と連動してIPカメラや空調を制御できる機能も備えており、遠隔からの施設管理を自動化できます。ホテル管理システム(PMS)などと連携すれば、予約から時限キーの配布までを自動で行えるため、 24時間無人での店舗運営にも対応可能です。

LINEでスムーズな入退室:Connected Space Share(コネクティッドスペースシェア)

「Connected Space Share(コネクティッドスペースシェア)」は、LINE公式アカウントを活用した施設予約サービスです。専用アプリを新たにダウンロードする必要はなく、LINE上でスペース予約から決済、スマートロック解錠までを一貫して行えます。

ユーザーは利用したい施設のLINE公式アカウントを「友だち登録」するだけで操作が可能なため、予約の手間が少なく導入ハードルも低い点が特長です。

施設管理者にとっては、鍵の受け渡しにかかる業務を削減できるほか、LINE Payやクレジットカード決済(Stripe)による料金回収にも対応しています。また、専用ダッシュボードから全施設の予約状況や売上、ライブ映像を一元管理でき、清掃スタッフや委託業者の入退室も統合的にコントロールできます。

まとめ

人件費削減の方法としては、「人材育成によって従業員の生産性を高める」「アウトソーシングを活用してコストをコントロールする」「ITツールで業務を効率化する」といった手段が挙げられます。人件費は企業にとって大きなコストですが、無理に削減を進めるのは危険です。従業員のモチベーションを下げないよう、慎重に取り組むことが大切です。

クラウドサービスを活用した情報共有の効率化や、スマートロックを活用した入退室管理を導入すれば、効率的な施設運営や勤怠管理が可能になります。イッツコムが提供する「Connected Portal(コネクティッドポータル)」は、鍵の受け渡しを不要にし、無人営業を実現できるサービスです。

「Box」や「Connected Space Share(コネクティッドスペースシェア)」は、人件費の削減とサービス品質の向上を両立させたい企業にとって、有効な選択肢となるでしょう。導入を検討されている方は、イッツコムへぜひご相談ください!