アウトソーシングとは?意味やメリット・注意点、利用のイメージとコツを解説
目次
少子高齢化や顧客ニーズの変化もあって、人材不足解消や多角化戦略に課題を抱えている企業は増えています。自社リソースだけでの事業継続に困難を感じており、アウトソーシングの意味や利用のコツを知りたい企業担当の方もいるのではないでしょうか。
アウトソーシングのニーズが高まる背景やメリット、注意点や活用方法を知ることで、効率的に課題を解決できるでしょう。クラウド型サービスの活用による自走についても目を向け、スマートな組織変革を検討しましょう。
そこでこの記事では、アウトソーシングの意味や、メリット・デメリット、リスクと上手に付き合い効果を高めるコツについてご紹介します。
アウトソーシングの意味や種類
アウトソーシングは特定業務の一部または全部を外部委託する経営手法の総称です。アウトソーシングの類型として、BPOやオフショアリング・ニアショアリング、シェアードサービスが挙げられます。まずはアウトソーシングと人材派遣の違いや、どのような種類があるかを見ていきましょう。
アウトソーシングとは
アウトソーシング(Outsourcing)とは、社内の業務を外部の専門会社に委託する経営手法です。Out(外側)とSourcing(資源調達)を組み合わせた語で、外注や外部委託とも呼ばれます。
アウトソーシングは1980年代のアメリカで生まれ、1990年代には日本でもブームとなりました。従来は荷物の梱包・配送や受付・データ入力など単純作業の委託に利用することが主流でしたが、近年は人事・法務・情報システムなど専門知識を要する分野での活用も広がっています。
アウトソーシングと「人材派遣」の違い
アウトソーシングと比較されやすい契約形態に「人材派遣」があります。人材派遣は人材自体を提供するサービスです。人材派遣は人材の労働に対して対価を支払いますが、アウトソーシングは案件や成果物に対して対価を支払います。
また、人材派遣は派遣会社と派遣先企業が労働派遣契約を結び、派遣会社と雇用関係にある労働者を、派遣先企業が指揮命令する仕組みです。一方でアウトソーシングは発注元企業と委託先企業の間で契約を結び、特定の業務遂行を丸ごと委託するため、労働者を何人使用し、どのように働かせるかは委託先が管理します。
注目が高まる「BPO」の意味
アウトソーシングにはさまざまな形態があり、近年利用が多くなっているのは「BPO(Business Process Outsourcing)」です。
アウトソーシングは業務を案件単位で考えますが、BPOは業務をプロセス単位で考え、特定分野の業務プロセスの一部または全部を外部委託します。
例えばWebサイトの企画から運用までや、コールセンター業務の仕組みを全て、外部に自社の業務部門を持つような形で委託する形態です。
分野によって呼び方が変わるBPO
BPOが活用される分野は多様化しており、業務委託する分野によって以下のように細分化されます。
・EPO(Engineering Process Outsourcing):設計・生産などのBPO
・ITO(Information Technology Outsourcing):ITシステム関連業務のBPO
・KPO(Knowledge Process Outsourcing):データ分析を中心とした知的生産活動のBPO
・SPO(Sales Process Outsourcing):営業活動のBPO
・LPO(Legal Process Outsourcing):法的手続きのBPO
・RPO(Recruitment Process Outsourcing):採用活動のBPO
「オフショアリング」や「ニアショアリング」の意味
自国内で業務を完結させることを「オンショア」と呼びますが、発注元・委託先に地理的・文化的な差異がある場合、アウトソーシングは「オフショアリング(オフショアアウトソーシング)」や「ニアショアリング(ニアショアアウトソーシング)」と呼びます。
・オフショアリング:遠方の国・地域へのアウトソーシング。日本から見ると中国・ベトナム・インドなどの諸外国
・ニアショアリング:近隣の国・地域へのアウトソーシング。日本だと首都圏・大都市圏から見た北海道・沖縄など
「シェアードサービス」という形態も
BPOとよく比較される経営手法に「シェアードサービス(Shared Service)」があります。シェアードサービスとは、グループ企業内で経理・総務・ヘルプデスクなど共通する業務や部署を、ひとつの組織に集約する経営手法です。
例えば、グループ企業内の経理部門を各企業から分離し、本社直属の専門子会社にグループ企業の経理業務を一括して担当させます。これにより業務品質の標準化やコスト削減などが可能です。
アウトソーシングのニーズが高まる背景
アウトソーシングは主に以下のような背景から利用が拡大しています。
・人材不足解消と事業継続の必要性
・競争力強化と多角化戦略の必要性
ここでは、なぜ多くの企業にアウトソーシングが重視されるのかを見ていきましょう。
人材不足解消と事業継続の必要性
アウトソーシングは人材不足解消と事業継続のために需要が増加している状況です。少子高齢化と労働力人口の減少が続く中、多くの業界・企業は人材不足に悩まされて おり、人材獲得競争は過熱しています。
コロナ禍で転職志向・安定志向が強まっていることもあり、「事業継続に必要な人材を確保できない」「優秀な人材が資金の豊富な(待遇の魅力的な)大企業に取られてしまう」といった問題を抱える企業は珍しくありません。
アウトソーシングなら専門事業者の人材を間違いなく確保できるため、人材不足解消と事業継続のために利用する企業が増えています。
競争力強化と多角化戦略の必要性
アウトソーシングは競争力強化と多角化戦略という意味でも需要が増加している状況です。例えば近年加速するICT(情報通信技術)の発達により、消費者はインターネットやスマホを日常的に利用し、新たなWebサービスが日々ローンチされています。
消費者と製品・サービスのマッチングに地理的な制約がなくなりつつある中、高品質かつ低価格な海外発の製品・サービスが市場競争力を高めている状況です。
そこでグローバル市場での生き残りをかけた競争力強化のために、新規製品・サービスのローンチや新規市場へのアプローチ、つまり多角化戦略のために外部リソースを活用する企業が増えています。
アウトソーシングを利用するメリット
アウトソーシングを利用するメリットには以下のようなものが挙げられます。
・自社の「コア・コンピタンス」を強化できる
・自社の苦手分野をカバーできる
・多角化戦略に伴う組織再編が容易になる
・人件費や設備関連費を削減できる
・固定費を変動費化できる
ここでは、アウトソーシングが解決する課題と有効なアプローチ方法について見ていきましょう。
自社の「コア・コンピタンス」を強化できる
アウトソーシングを利用するメリットのひとつに、「コア・コンピタンス」の強化につながることを挙げられます。
コア・コンピタンスとは、他社にまねできない、競合他社を大きく上回る強みです。利益に直結しない企業活動を外部委託し、企業の核(Core)となる能力(Competence)に経営資源を集中することで、効率的に競争力強化を目指せます。
特に人材不足に悩まされている企業は、利益に直結しないノンコア業務の遂行を外部リソースに任せ、限られた人材を付加価値の高いコア業務に従事させることが大切です。
自社の苦手分野をカバーできる
アウトソーシングを活用すると、自社の苦手分野をカバーできることもメリットです。例えば競争力強化や業務改善を検討する際、「データ活用をしたくても分析・予測に長けた人材がいない」「多様化するサイバー攻撃に対応したくてもセキュリティに強い人材がいない」といった問題が発生します。
こういった問題の解決は自社リソースだけでは困難ですが、外部リソースを活用すれば容易です。アウトソーシングの事業者はさまざまな分野のスペシャリストを抱えているため、自社の苦手分野を的確にカバーできます。
多角化戦略に伴う組織再編が容易になる
多角化戦略に伴う組織再編が容易になることも、アウトソーシングを利用するメリットに挙げられます。多角化戦略を進行させると、事業規模の拡大に伴い組織も肥大化しがちです。
新規事業の立ち上げや新規商品・サービスの開発にアウトソーシングを活用すれば、組織を肥大化させることなく多角化戦略を進められます。またノンコア業務を担う専門組織としてシェアードサービス会社を設立し、組織のスリム化と事業規模の拡大を両立させることも可能です。
人件費や設備関連費を削減できる
コスト削減につながることもアウトソーシングを利用するメリットです。これは特に、安価な労働力を確保しやすく、人件費と委託費の差額が大きいオフショアリングの場合に顕著な効果を得られます。
また外部委託する業務に関しては自社で設備を抱える必要もないため、設備の調達や維持・廃棄・更新にかかるコストも削減可能です。
固定費を変動費化できる
アウトソーシングを利用すると固定費の変動費化につながることもメリットです。正社員の人件費は固定的ですが、アウトソーシングは業務量に応じた委託費を支払います。
繁忙期と閑散期で業務量に差があるような業務の場合、外部委託を前提とするなら人材配置をピークに合わせる必要はありません。閑散期に必要な人材だけを自社で抱え、必要なときに必要なだけ外部委託することで、固定費の圧縮によるコスト削減が可能です。
アウトソーシングを利用するデメリット
アウトソーシングはメリットもある一方、以下のようなデメリットもあります。
・ノウハウや人脈を蓄積できない
・業務をコントロールできない
・情報漏えいリスクが付きまとう
・成果がコストに見合わない場合も
デメリットも加味して、委託先企業や対象業務を慎重に見極めることや、利用の可否を検討することが求められます。
ノウハウや人脈を蓄積できない
アウトソーシングを利用するデメリットのひとつは、自社でノウハウや人脈を蓄積できないことです。アウトソーシングの形態・契約内容にもよりますが、外部委託した分野に関しては、社内でスペシャリストを育てる機会がなくなります。
特に新規顧客の開拓・関係構築や新サービスの開発・運用などを外部委託している場合、自社にノウハウが蓄積されていなければ、担当者の引き継ぎやアプローチの転換は困難です。契約解除とともに人脈が失われる恐れもあるため、長期的な視点で利用の可否を検討する必要があります。
業務をコントロールできない
外部委託した業務をコントロールできなくなることもアウトソーシングのデメリットです。アウトソーシングに依存するとノウハウが蓄積できないだけでなく、記憶も薄れるため、外部委託した業務に対して知識のある社員が少なくなっていきます。
このため対象業務を自社でコントロールすることが次第に困難になっていき、委託先に業務の品質・納期・委託費などをコントロールされるリスクが高まっていく恐れもあることは懸念点です。
情報漏えいリスクが付きまとう
情報漏えいリスクが付きまとうこともアウトソーシングのデメリットです。外部委託する限りは対象業務に関する機密情報や顧客情報を他社に預けることになり、重要な情報資産を保存する主体が分散化します。
委託先企業のモラルや経営体質によっては、情報を無断で販売されたり、サイバー犯罪に悪用されたりする恐れがあることも否めません。また委託先がサイバー攻撃を受けるなどして情報漏えい事故を起こした場合、委託先だけでなく、発注元も損害賠償責任を負う恐れがあります。
成果がコストに見合わない場合も
成果がコストに見合わない場合もあることもアウトソーシングのデメリットです。コスト削減を目的としてオフショアリングを利用しても業務品質が低く要求を満たさない、自社にない高度なノウハウ・技術を期待しても付加価値の向上につながらない、といったケースもあり得ます。
また外部委託の対象業務は緊急対応がしにくいため、タイミングが重要な業務には向かない場合もあるでしょう。結局、「時間や費用はかかっても社内で人材を育成したほうが良かった」となることも考えられます。委託先企業や対象業務は慎重に見極めが必要です。
アウトソーシングの効果を高めるコツ
アウトソーシングには情報漏えいリスクなどのデメリットもあり、また外部委託に向かない業務もあるため、利用に当たっては外部委託する業務の見極めが大切です。また、外部委託しない業務に関しては、クラウド型サービスを活用することで効率化できます。ここでは、アウトソーシングの効果を高めるコツを見ていきましょう。
外部委託する業務を見極める
アウトソーシングと上手に付き合うには、外部委託する業務を見極めることが大切です。ノンコア業務のうち、以下のような性質のある業務は自社リソースを効率的に活用し、その他の専門的または単純なノンコア業務のみを外部委託します。
・情報漏えいリスクが高い
・自社でコントロールが必要
・緊急対応の発生が多い
・詳細な背景情報が必要
こういった要素から外部の企業に任せられないと判断した業務は自社リソースで効率的に遂行することを検討します。その上でコア業務に自社リソースを集中化しましょう。
クラウド型サービスで業務を効率化
自社リソースで遂行する業務は、クラウド型サービスの活用で効率化することもポイントです。クラウド型サービスは複雑なデータ分析やワークフローの自動化、情報の一元管理やセキュリティ強化の他、委託先企業との緊密な連携にも活用できます。
またシステムの本体はサービス事業者が保守管理するため、インターネット経由で24時間365日アクセスでき、設備を抱える必要がありません。
ノウハウや人脈を蓄積しながらガバナンスを強化し、自走する能力を保ったまま多角化戦略を進めるには、クラウド型サービスの活用が効果的です。
クラウド型サービスを活用して効率的に自走するならイッツコム!
外部委託しない業務に関しては、クラウド型サービスの活用による効率的な自走が求められます。イッツコムが提供する名刺管理・SFA・MA一体型の「ホットプロファイル」は営業部門の自走に効果的です。
また、クラウドストレージ「Box」は情報管理のコントロールとノンコア業務の効率化に役立ちます。Boxに関しても、イッツコムが提供から導入、運用サポートまでを提供しています。
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まとめ
アウトソーシングは人材不足解消や多角化戦略のために活用される例が増えている一方、ノウハウ蓄積ができないことや情報漏えいリスクなどの問題もあり、利用の可否は慎重に見極める必要があります。外部委託する業務は比較的低リスクのノンコア業務に限定し、クラウド型サービスで自社リソースを効率的に活用することが大切です。
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