ランサムウェア対策を徹底するには?中小企業が直面する脅威と防御策
目次
ランサムウェア攻撃が年々巧妙化し、被害が拡大しています。特に中小企業は、セキュリティ対策の不備から狙われやすい傾向にあります。従業員のセキュリティ意識の低さ、バックアップ体制の不備、パッチ管理の怠慢など、ランサムウェア攻撃に付け入られる隙は意外と多いのが現実です。
もしランサムウェアに感染してしまったら、業務停止や多額の身代金要求など、深刻な被害に見舞われるかもしれません。そのような事態を避けるために、企業が取るべきランサムウェア対策とは何でしょうか。
本記事では、最新のランサムウェア動向を踏まえ、効果的な対策方法を紹介します。
ランサムウェアの脅威と最新の攻撃手口
ランサムウェアは、企業や個人に対して深刻な影響を及ぼすサイバー攻撃の一種であり、年々その手口が進化しています。特に中小企業を標的にするケースが増えており、攻撃者はシステムの脆弱性を悪用して、データを人質に取り、身代金を要求することで大きな利益を得ようとします。
ランサムウェアとは何か?基本的な仕組みと脅威
ランサムウェアとは、コンピュータに保存されたデータを勝手に暗号化し、身代金を要求してくる悪質なプログラムのことです。感染すると、大切なファイルが使えなくなるだけでなく、企業の場合は業務が停止し、多大な損害を被る可能性があります。
感染経路は、以前は不特定多数へのメール送信が主流でしたが、最近はVPN(仮想プライベートネットワーク)機器の脆弱性を突いた標的型攻撃が目立ちます。ランサムウェアによる被害を防ぐには、セキュリティ対策の徹底が欠かせません。
最新のランサムウェア攻撃の特徴と手口
最近のランサムウェア攻撃は、より巧妙化・悪質化しています。例えば、標的型攻撃では、事前に組織のネットワークに侵入し、機密情報を窃取した上でランサムウェアを拡散・実行します。
また、二重脅迫といって、データの暗号化だけでなく、盗み出した情報を公開すると脅す手口も増えています。さらに、RaaS(Ransomware as a Service)の登場で、技術力のない攻撃者でも容易にランサムウェア攻撃ができるようになりました。
こうした攻撃の巧妙化に加え、テレワークの普及でセキュリティリスクが高まる中、中小企業は従来の対策だけでは不十分です。最新の脅威に備えた多層的な対策が求められています。
中小企業がランサムウェアの標的になる理由
中小企業がランサムウェアの標的になりやすい理由は、大企業のシステムへの侵入口として狙われるためです。攻撃者は、セキュリティ対策が手薄な中小企業を足掛かりに、最終的な目的である大企業への攻撃を仕掛けます。
実際、サイバー攻撃の影響が取引先から自社に及んだと回答する大企業は少なくありません。中小企業は、リソース不足からセキュリティ対策が後回しになりがちで、従業員の意識も低い傾向にあります。さらに、テレワークの導入で、外部からの脅威にさらされる機会も増えています。こうした状況が、中小企業をランサムウェア攻撃の格好のターゲットにしていると考えられます。
【関連記事:サイバー攻撃とは?動向・目的・種類・被害事例とセキュリティ対策】
中小企業におけるランサムウェア対策の重要ポイント
ランサムウェアから大切な情報資産を守るには、多角的な対策が欠かせません。中でも中小企業が特に注力すべきポイントが3つあります。
- ・従業員1人1人のセキュリティ意識を高め、適切な行動を習慣づけること
- ・万が一の感染に備えたバックアップ体制の整備
- ・セキュリティソフトの導入とこまめなパッチ管理
この3つのポイントについて、具体的な進め方を見ていきましょう。
従業員教育とセキュリティ意識の向上
ランサムウェア対策において、従業員教育は非常に重要です。なぜなら、ランサムウェア感染は、従業員の不注意なクリックや判断ミスが原因であることも少なくないからです。
具体的な教育方法としては、定期的なセキュリティ研修の実施や、フィッシングメールの模擬訓練などが効果的でしょう。また、セキュリティポリシーを整備し、従業員に周知徹底することも大切です。
1人1人がセキュリティ意識を高め、適切な行動を取ることで、ランサムウェアのリスクを大幅に減らすことができるのでしょう。
適切なバックアップ体制の構築
ランサムウェア対策として、適切なバックアップ体制の構築が欠かせません。万が一感染しても、バックアップからデータを復元できれば、被害を最小限に抑えられるからです。
特に重要なのが、オフラインバックアップです。ネットワークから切り離された環境にバックアップを保存することで、ランサムウェアの感染拡大を防げます。例えば、LTOテープやRDXカートリッジを使ったバックアップは、ドライブに入っていない間はネットワークから隔離されるため、安全性が高いです。
コストを抑えたい場合は、外付けHDDを使い、バックアップ後に取り外すのも一案です。
大切なデータを守るために、今一度バックアップ体制を見直してみてはいかがでしょうか。
セキュリティソフトとパッチ管理の徹底
セキュリティソフトの導入とパッチ管理は、ランサムウェア対策において非常に重要です。OSやソフトウェアの脆弱性を突くランサムウェアが増加しているため、システムを常に最新の状態に保つことが求められます。
また、最近のアンチウイルスソフトは、振る舞い検知や機械学習などの高度な技術を取り入れていますが、組織によっては追加の対策ツールが必要になることもあります。
セキュリティソフトを選ぶ際には、必要な機能や利用環境との適合性、コストを考慮することが重要です。特にクラウド管理機能を持つソリューションは、複数デバイスの一元管理が可能であり、大規模な組織にとって有用です。
技術的対策に加えて、従業員教育やセキュリティ意識の向上も重要な要素です。また、インシデント対応計画の策定と定期的な訓練を行うことで、攻撃を受けた際の被害を最小限に抑えることができます。
自社の環境やリソースを考慮し、これらの要素を組み合わせた総合的な戦略を策定することで、ランサムウェアを含む様々なサイバー脅威から効果的に防御する体制を構築できるでしょう。
ランサムウェア被害事例と教訓
ランサムウェアによる被害は、国内外の中小企業に深刻な影響を及ぼしています。実際の被害事例を通して、ランサムウェア対策の重要性と具体的な教訓を学ぶことができます。
ここでは、中小企業が直面したランサムウェアの脅威と、その対処法について見ていきましょう。
国内外の中小企業のランサムウェア被害事例
国内外の中小企業がランサムウェアの被害に遭うケースが急増しています。2023年上半期に警察庁に報告された企業のランサムウェア被害は103件に上り、そのうち約6割が中小企業でした。
サイバー空間が犯罪者の温床となる中、高度な技術を持たない者でも容易に攻撃に加担できる状況は、中小企業の脆弱性を突く格好の的となっている状況です。
例えば、従業員数50名ほどの地方の製造業者が、ランサムウェアに感染し、設計図や顧客情報などの重要データが暗号化されて身代金を要求された事例もあります。こうした被害は、企業の存続を脅かしかねません。
ランサムウェア被害から学ぶ教訓
2021年10月31日、徳島県つるぎ町立半田病院はランサムウェア攻撃を受け、電子カルテシステムを含む主要なコンピューターシステムが使用不能に陥りました。病院は急遽、紙ベースでの診療記録や会計処理に切り替える必要があり、通常の診療や手術に大きな支障が生じました。
病院はデータ復旧のため、外部の専門業者に依頼し、犯罪者から300万円で復号キーを購入して復旧作業を進めました。しかし、最終的に約7,000万円の費用がかかり、システムの完全復旧には2か月を要しました。
この事件は、医療機関がサイバー攻撃に脆弱であり、患者の安全に直接影響を与える可能性があることを浮き彫りにしました。同時に、適切なバックアップや緊急時対応計画の重要性が再認識される出来事になったといえるでしょう。
ランサムウェア被害からの復旧方法
ランサムウェア被害からの復旧は容易ではありませんが、事前に備えていればリカバリーの可能性が高まります。最も確実な方法は、定期的なバックアップからのデータ復元です。日頃からバックアップを取り、外部の安全な場所に保存しておくことが重要です。
被害に遭った場合は、専門家や警察に相談することで、データ復旧の可能性を探ることができます。攻撃者から復号鍵を入手することや、ランサムウェア自体の脆弱性を突く方法もありますが、これには高度な技術と迅速な対応が求められ、成功が保証されるわけではありません。
古いランサムウェアの場合、専用の復号ツールが利用できることもありますが、すべてのケースに適用できるわけではありません。ランサムウェアに感染しても、まずは冷静に対処し、専門家の助けを求めることが重要です。日頃のマルウェア対策、バックアップ、そしてセキュリティ意識の向上が、ランサムウェアから身を守る鍵となります。
中小企業向けのランサムウェア対策ソリューション
中小企業もランサムウェアの脅威に直面しており、効果的な対策が求められています。クラウドやゼロトラストセキュリティなどの新技術を活用すれば、手軽にセキュリティを強化することが可能です。ここでは、これらの対策を紹介し、リスク軽減に役立つソリューションを解説します。
クラウドを活用したランサムウェア対策
クラウドを活用したランサムウェア対策は、企業にとって非常に有効な手段です。なぜなら、クラウド上にバックアップデータを保存することで、社内ネットワークとは物理的に隔離され、万が一、ランサムウェアに感染しても、大切なデータを守ることができるからです。
さらに、クラウドサービスを利用すれば、バックアップ用サーバの運用・保守をベンダーに任せられるので、社内のIT担当者の負担を大幅に減らせます。
加えて、システム全体をクラウドに移行することで、感染したサーバをすぐに停止し、バックアップからの復旧も迅速に行えます。まさに、クラウドのメリットを生かしたランサムウェア対策といえるでしょう。
ゼロトラストセキュリティモデルの適用
ゼロトラストセキュリティモデルは、ランサムウェア対策として非常に有効です。社内ネットワーク内の通信であっても信頼せず、常に認証と検証を行うため、攻撃者が侵入できる範囲を最小限に抑えられます。
さらに、アクセスログを記録・分析する仕組みにより、不審な動きがあれば即座に検知できます。クラウド上で認証を行うため、コスト面でも優れており、特別なハードウェアを必要としません。導入や運用コストを抑えつつ、セキュリティ強化を実現できるため、中小企業にとっては理想的な選択肢といえるでしょう。
テレワーク環境におけるランサムウェア対策
テレワークが普及すると、社外からのネットワークアクセスが増えるため、ランサムウェア感染のリスクが高まります。特に注意すべきは、VPNの脆弱性を悪用した攻撃です。VPNは社内ネットワークへの安全な接続を提供しますが、適切に管理されていないと攻撃者に狙われることがあります。
対策として重要なのは、侵入を検知し、迅速に対応することです。統合脅威管理(UTM)やエンドポイントセキュリティを導入することで、マルウェアの自動検知や隔離が可能となり、被害を最小限に抑えられます。
さらに、メールやWebフィルタリングも欠かせません。テレワークではクラウドサービスを介したマルウェア感染のリスクが高まるため、フィルタリングにより悪質なメールやサイトへのアクセスを事前に防ぐことが効果的です。
また前述の通り、クラウド上に定期的なバックアップを取ることで、ランサムウェア被害に遭った場合も迅速にデータを復旧できるよう備えておくことが重要です。
ランサムウェア対策ならイッツコム
サイバー攻撃が増加する中、企業はネットワークの安全性を確保し、重要なデータを守るための対策が必要です。特にリモートアクセス環境では、IDやパスワードの盗難やVPNサーバの不正アクセスにより、ランサムウェアやAPT(持続的標的型攻撃)などのリスクが高まります。イッツコムは、攻撃経路を最小限にし、早期に異常を検知できる堅牢なセキュリティ対策を提供します。
「モバイル閉域接続」による安全なリモートアクセス
リモートアクセス環境のセキュリティが弱いと、IDやパスワードが盗まれたり、VPNサーバがハッキングされたりするリスクがあります。その結果、ネットワークに侵入され、ランサムウェア攻撃やAPT(持続的標的型攻撃)を受ける危険性が高まります。ランサムウェア対策として、攻撃経路をできるだけ減らし、異常を早期に検知できる体制を整えることが重要です。
イッツコムが提供する「モバイル閉域接続」は、SIMカードを利用してデバイスを特定し、閉域網で安全にリモートアクセスを行うシステムです。この方式では、VPNアプリやID・パスワードによる認証が不要で、インターネットを経由せずに社内LANへアクセスできるため、セキュリティを大幅に向上させます。
また、社外からクラウドサービスに接続する場合でも、社内LANを経由させることで通信ログを取得でき、不正な通信を検知して制限することが可能です。これにより、リモートワーク環境のセキュリティを強化し、企業の重要な情報資産を守ることができます。
「Box」でファイルを安全に一元管理
さらに、クラウドストレージ「Box」を活用すれば、社内外でのファイル共有もセキュアに行えます。「Box」は高度な暗号化機能を備え、ランサムウェアが実行されにくい構造を採用しており、メール添付やUSBメモリの利用を避けることで感染経路を遮断します。また、50以上のファイルバージョンを自動保存しているため、万が一の感染時にも簡単に復元が可能です。
オプションの「Box Shield」によるAI検知を利用すれば、未知のランサムウェアもリアルタイムでブロックし、安全なコラボレーション環境を確保できます。企業全体でのデータ保護とランサムウェア対策が可能になるのが「Box」の強みです。
イッツコムの「モバイル閉域接続」と「Box」を活用し、企業のセキュリティを強化したい方はぜひご相談ください。
まとめ
ランサムウェアは中小企業にとって大きな脅威ですが、OSやソフトの更新、ウイルス対策、データバックアップ、ユーザー教育、ネットワーク制御などの対策を講じることで、リスクを大幅に軽減できます。攻撃の手口や被害事例を理解し、感染時の対処法を身につけ、組織全体で意識を高めることが重要です。適切な対策を実施し、専門家の支援を得ることで、ランサムウェアから企業を守りましょう。
「いつ自社がランサムウェア攻撃を受けても不思議ではない」という意識を持ち、多方面からの対策を講じることが必要です。リモートアクセス環境の通信制御に課題を感じている場合は、ぜひイッツコムにご相談ください。