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自治体システム標準化が必須の20業務とは?クラウド移行の重要性

自治体情報システムは20の業務について、ガバメントクラウドを活用した標準準拠システムへの円滑な移行が目指されています。これまでは、各自治体における個別の仕様作成や情報システムのカスタマイズによって、さまざまな弊害が生じていました。

この記事では、自治体情報システムの標準化・共通化が目指すものや、標準準拠システム・ガバメントクラウドへの移行イメージを解説します。重要な業務については標準仕様に基づくシステムを利用し、政府と自治体が共通のクラウド基盤を活用して、自治体の負担軽減や行政サービスの円滑な提供を目指しましょう。

自治体システム標準化が求められる20業務とは?

自治体情報システムの標準化・共通化は、デジタル庁・総務省や関係府省によって推進されています。2025年5月時点では、住民基本台帳、国民健康保険、児童手当など、20の基幹業務について、標準化基準に適合した情報システム(標準準拠システム)への移行が求められています。

これらの業務システムの移行に際しては、ガバメントクラウドの活用が推奨されています。

標準化の背景と制度:法律・推進主体の整理

2021年9月、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」が施行されました。この法律に基づき、自治体情報システムの標準化・共通化が推進されています。

標準化・共通化の対象となる業務システムは、全国の自治体からの提案も踏まえて検討が進められていますが、2025年5月時点では、地方自治体の主要な20業務を処理する基幹系システムが対象です。 自治体情報システムの標準化・共通化においては、デジタル庁、総務省、関係府省が以下の役割を担っています。

  • デジタル庁と総務省:地方公共団体情報システムの標準化に関する法律の所管
  • デジタル庁:地方自治体の情報システムの整備・管理方針の策定
  • 総務省:地方自治体との連絡調整・進捗管理・財政支援
  • 総務省と関係府省:20業務の標準化基準の策定

標準準拠が義務付けられた20の業務一覧

自治体情報システムの標準化・共通化が求められている20業務について、所管する府省と対象となる業務の関係は以下の通りです。

【総務省】
1.住民基本台帳
2.戸籍の附票
3.印鑑登録
4.選挙人名簿管理
5.固定資産税
6.個人住民税
7.法人住民税
8.軽自動車税

【法務省】
9.戸籍

【文部科学省】
10.就学

【厚生労働省】
11.国民健康保険
12.国民年金
13.障害者福祉
14.後期高齢者医療
15.介護保険
16.生活保護
17.健康管理
18.児童扶養手当

【内閣府】
19.児童手当
20.子ども・子育て支援(厚生労働省と共管)

ガバメントクラウド活用と自治体の対応義務

自治体情報システムの標準化・共通化に関連して、政府はガバメントクラウドの整備を進めています。ガバメントクラウドとは、政府機関や地方自治体などの公共機関が共同で利用するクラウドコンピューティング基盤です。

ISMAPクラウドサービスリストに登録されたAmazon Web Services(AWS)、Google Cloud、Microsoft Azureなどを活用し、各府省庁の情報システムや地方自治体の基幹業務システムなどを共通のクラウドサービスで運用することを目指しています。

地方自治体は、ガバメントクラウドを活用した標準準拠システムへ移行することが努力義務とされています。なお、標準準拠システムのクラウド移行にかかる諸経費については、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)に設けられた支援基金から補助を受けられます。

自治体が標準準拠システムおよびガバメントクラウドに移行するメリット

自治体は20業務について標準準拠システムに移行したり、その際ガバメントクラウドを利用したりすることで、これまで抱えていたさまざまな課題の解決を目指せます。人的・財政的な負担の軽減はもちろん、オンライン申請など住民サービスの利便性向上、ベンダーロックインの解消などにつながります。

行政業務の効率化とコストの抑制

地方自治体の情報システムは、住民記録をはじめとした多くの行政サービスを提供していますが、従来は各自治体が独自にシステムを開発・カスタマイズしており、共通仕様が整備されていませんでした。

このため、システムの維持管理や制度改正時の改修などにおいて、個別対応を余儀なくされ、人的・財政的な負担が大きいという課題がありました。

自治体の主要な業務が標準化・共通化されれば、各自治体が個別に仕様の策定やシステム開発をする必要がなくなります。制度改正時の改修も標準化され、非効率な業務プロセスを改善でき、職員の負担軽減や限られた予算の有効活用につながるでしょう。

全自治体がガバメントクラウドの共通基盤を利用できれば、大口割引や長期利用契約により、将来的に大きなコストメリットも期待できます。

住民サービスの利便性向上と対応力強化

各自治体が統一的な基準に適合する情報システムを利用し、処理内容も共通化されれば、住民サービスの利便性の向上にもつながります。

例えば、全国の自治体でマイナポータルを通じたオンライン申請などの基盤が共通化されることで、住民はマイナンバーカードも活用しながら24時間365日、スムーズに行政サービスへアクセスできるようになります。

また、災害時などの緊急時にも、ガバメントクラウド上でシームレスな情報連携が可能となり、政府と全国の自治体が緊密に連携し、迅速な行政サービスの提供が期待されます。

システム間連携とデータ互換性の向上

自治体情報システムの標準化・共通化は、システム間の互換性を確保することにも役立ちます。従来は共通または関連する業務でも、システムや自治体によってデータ形式が異なるなど、互換性の問題がありました。

標準準拠システムに移行すれば、関連する業務や組織とのデータ連携の際、都度データを整形するような手間がかからなくなります。これまで情報システムを一部共有していた近隣の自治体などはもちろん、遠方の自治体や政府とデータを連携させることも容易になるでしょう。

政府と全自治体の連携を目指して設計されたガバメントクラウドであれば、情報システムの差異の調整にかかる負担を抑え、スムーズなクラウド移行をかなえられます。

所有から利用へ:クラウドによる運用最適化

ガバメントクラウド上に展開される標準準拠システムを活用すると、各自治体が基幹業務システムを「所有」していた形態から「利用」する形態に移行できます。これによりサーバの調達や維持管理にかかるコストを大幅に削減できます。クラウドサービスの利用料・利用条件などはデジタル庁にて調整済みのため、事務負担を軽減してクラウド移行をかなえられるのも利点です。

またガバメントクラウドは、日本国内に設置された堅牢なデータセンターを利用するなど高水準なセキュリティ要件を満たします。高コスト構造の是正だけでなく、セキュリティやガバナンスを強化できるところにもメリットがあります。

ベンダーロックインの解消と導入の自由度向上

従来の自治体情報システムは、カスタマイズされたメインフレームやサーバがなければシステムを維持できないなど、特定のベンダーに過度に依存したシステム運用体制となっているケースもよく見られました。こういったベンダーロックインの問題を解消できることも、標準準拠システムおよびガバメントクラウドへ移行するメリットです。

AWSやGoogle Cloudなどを基盤とするガバメントクラウドは技術的な仕様がオープンで、任意のアプリを導入する自由度も高く、ベンダーロックインの是正に役立ちます。ベンダー依存体質による柔軟性の低さや撤退リスクを回避できる他、スタートアップ参入機会の創出など公正な競争環境の確保につながります。

自治体情報システムの標準化・共通化に向けた課題

自治体情報システムは20の業務について標準化・共通化が目指されていますが、システム移行に向けた課題もあります。例えば、2025年内の移行完了が難しいシステムもあることや、クラウド移行によってコスト増となる場合もあることです。

2025年内の移行完了が難しいシステムもある

自治体情報システムの標準化・共通化に関する基本方針が定められた2022年10月時点では、2025年度末までにガバメントクラウドを活用した標準準拠システムへの移行が原則とされていました。

しかし、2025年度に移行を予定する自治体が集中したことや、移行の難易度が極めて高いと考えられるシステムが存在することが判明しています。

移行が難しいケースとしては、現行システムがメインフレームなどの個別開発システムで運用されている場合や、現行システムを構築・運用するベンダーの撤退により代替システムの調達が困難な場合などが挙げられます。

これらの状況を踏まえ、関係省庁は状況を把握した上で、特定移行支援システムとして期限を設定するなど、特別な措置を講じています。

クラウド移行によってコスト増となる場合もある

ガバメントクラウドを活用した標準準拠システムへの移行は、コスト削減につながることが期待されていますが、現行システムの構成などによってはコスト増となる場合があります。

例えば、既存アプリケーションの変更を最小限に抑えてガバメントクラウドへ移行する際、クラウド環境に最適なシステム構成となっていない場合などです。

実際、中核市市長会の調査によると、移行前の運用経費の平均が約3億3,800万円であったのに対し、移行後は約6億8,400万円と、平均で2.3倍、最大で5.7倍に増加する見込みであることが明らかとなっています。

クラウド移行のメリットはコスト削減だけではありませんが、各府省庁が規定する基幹業務システムの要件を踏まえ、クラウド環境に最適なアプリケーションを導入することが求められます。

自治体システム標準化を補助する通信回線やアプリの導入ならイッツコム!

自治体情報システムの移行に際し、ガバメントクラウドの調達やテンプレート提供などはデジタル庁が行いますが、アプリや通信回線の導入・運用管理は自治体とベンダーが協力して行うことになります。イッツコムなら、自治体のニーズに合わせ、効率的なシステムの導入・運用をサポートできます。

「モバイル閉域接続」によるデータ保護強化

ガバメントクラウドはLGWAN経由で接続できますが、リモートワーク中の職員や各種IoT機器などには、個別のインターネット回線が必要になる場合もあるでしょう。

対策として有効なのが「モバイル閉域接続」です。イッツコムのサービスでは、PCやスマホに専用SIMカードを挿入するだけで、NTTドコモ網とイッツコム網を通じた閉域ネットワークを自動で判別し、社内LANへ直接アクセスできます。ユーザー側でVPN設定を行う必要がなく、管理者によるIDやパスワードの管理作業も不要になります。

「Box」活用による安全なファイル管理とDX推進

自治体は標準化・共通化が求められている20業務以外にも、さまざまな業務で情報システムを活用します。各種業務で作成・共有するファイルは、サイバー攻撃や情報漏えいなどの被害に遭う恐れがあるため、安全なプラットフォームで管理することが重要です。

ISMAPクラウドサービスリストに登録されているコンテンツクラウド「Box」を活用すれば、さまざまなサイバーリスクを最小限に抑えつつ、効率的にファイルを管理できます。全ての有料プランで容量無制限のストレージを活用でき、容量不足によるコスト肥大化の恐れはありません。

AWSやGoogle Cloudなどガバメントクラウドで活用するクラウドサービスとの親和性が高く、また1,500以上の業務アプリと連携できるため、各種業務の効率化を促進するニーズに最適です。

【関連記事:クラウドストレージ「Box」の魅力は?使い方やメリットを徹底解説

まとめ

自治体情報システムは20の業務について、ガバメントクラウドを活用した標準準拠システムへ円滑に移行することが目指されています。これは全国の自治体の人的・財政的な負担を軽減したり、平時・緊急時にかかわらず行政サービスを円滑に提供したりするために重要な取り組みです。

デジタル庁が整備するガバメントクラウドを基盤として、より使いやすいアプリや通信回線を導入・運用し、これまで抱えていた課題を解決しましょう。システム移行に際して導入・運用のパートナーをお探しなら、ガバメントクラウドとの親和性も高いシステムを提案できるイッツコムにご相談ください。