M2MとIoTの違いは?仕組みや事例・活用方法を分かりやすく解説
目次
M2Mは機械同士が自動的に情報をやりとりするセンサーネットワークを構築するもので、近年急増するIoT機器の活用基盤にもなっています。主に携帯電話網を活用して、多種多様なIoT/M2Mサービスが開発・運用されています。
この記事では、M2MとIoTの違いや活用イメージ、一般企業にも拡大する活用事例を解説します。通信経路にインターネットを含む場合のセキュリティ対策も知っておきましょう。
M2Mの意味やIoTとの違いとは?
M2MとIoTにはいくつかの違いがありますが、共通点も多く、明確に区別することが現実的に意味を持たない場合もあります。そのため、両者を組み合わせた「IoT/M2M」という表現がよく使われています。まずはM2MとIoTの意味や違い、IoT/M2Mという考え方を見ていきましょう。
M2Mとは
M2M(Machine-to-Machine)とは、機械と機械がネットワークを介して相互接続することにより、人の介在なしで特定の操作を自動化するシステムの総称です。
一般的なシステムは、有線接続または無線接続の閉域網を経由し、センサーからの入力を受けてアクチュエーターが自動制御を行います。センサーで視覚情報などを入力し、その情報の性質に応じて、有線または無線で直結されたアクチュエーターが自動的に駆動する仕組みです。通信には携帯電話網がよく利用されます。
IoTとは
M2Mと似た概念にIoT(Internet of Things/モノのインターネット)があります。IoTとは、世の中のさまざまなモノにセンサー機能と通信機能を持たせ、インターネット経由で遠隔操作や各種データ活用をする仕組みの総称です。
産業用機械に実装されることもありますが、家電製品などに実装し、一般ユーザーが離れた環境を把握したり機械を遠隔操作したりする目的にも利用されます。
M2MとIoTとの違い
M2MとIoTは共通する部分も多いシステムですが、主に以下の点で仕組みが異なります。
- インターネットを経由するかどうか:M2Mは携帯電話網などを利用することも多く、インターネット接続を必要としないが、IoTはインターネット経由が前提
- 人が介在するかどうか:M2Mは人が介在しないが、IoTは人が判断・操作の主体となる場合も多い
他にも、M2Mの主な目的はあらかじめプログラムされた自動制御であるのに対し、IoTはより広い意味でデータ活用するための技術であることも違いの1つです。
「IoT/M2M」という表現も
M2MとIoTにはいくつかの違いはありますが、共通点も多いため、明確な区別が困難な領域もあります。そこで近年はM2MとIoTを明確に区別するのではなく、これら類似概念をまとめて扱う「IoT/M2M」という表現もよく使われます。
IoT/M2Mの技術は多様化・複雑化を続けており、クラウドサービスに蓄積したデータをAIで分析して高度な予測を行うなど、さまざまな分野で便利に活用されています。
IoT/M2Mの市場規模や成長要因
近年の技術向上によりIoT/M2Mの基盤となるセンサーネットワークの構築は容易になっており、機器の急速な増大に対応するためにM2Mサービス専用の電話番号帯も創設されています。5G対応通信モジュールの登場などを背景に、国内M2M市場は高い成長を続ける見通しです。
高性能かつ安価なセンサーネットワークの構築が容易に
IoTやM2Mの基盤となる技術は、センサー同士がつながり情報を交換する「センサーネットワーク」です。M2Mは以前から存在していましたが、近年のセンシング技術や通信技術の進化によって、その需要は急速に拡大しています。
現在では、小型で高性能、しかも低コストなセンサーが多数流通しており、さまざまな機器へのセンサー内蔵が容易になっています。さらに、通信モジュールの価格が下がり、省電力で信頼性の高い通信技術が進化したことで、高性能で低コストなセンサーネットワークを簡単に構築できる環境が整っています。
M2M専用の電話番号帯が創設
IoT/M2Mの需要拡大やさまざまなサービス形態の登場に伴い、M2Mサービスのために構築されるセンサーネットワークは爆発的に増加・拡大しています。この状況がよく分かる例として、M2Mサービスなど専用の番号創設が挙げられます。
通信技術として携帯電話網を使う場合、センサーネットワークを構築する機械は電話番号を使用します。以前は090/080/070番号を利用していましたが、これら11桁番号のひっ迫に伴い、2017年1月1日にM2Mサービス用の020番号帯(番号容量8,000万番号)が創設されました。
これも2022年内に枯渇することが予想されたため、2019年12月25日に14桁の0200番号が創設され、020番号から0200番号への移行が進められています。
国内M2M市場は高い成長を続ける見通し
矢野経済研究所が行った調査によると、2023年度の国内M2M市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比10.4%増の2,660億円でした。2020~2021年度の低位推移から完全に脱却し、今後も年率10%前後の伸長を継続して、2030年度は5,300億円に成長すると予測されています。
成長要因として挙げられるのは、5G対応通信モジュールの登場による、カメラ・画像系ソリューションなどのM2M需要の創出です。通信機能を持ったコネクテッドカー、LPWA(Low Power Wide Area)や920MHz帯を中心とした新たなIoTネットワークの普及も奏功し、国内M2M市場は2030年に向けて高い成長を続ける見通しです。
(参考:『IoT/M2M市場に関する調査を実施(2024年)』)
IoT/M2Mにできることは?具体的なサービス事例
M2Mでは主に4G LTEや5Gといった携帯電話網を使って、機械同士で情報をやりとりします。他にも、大容量データのやりとりに向いたWi-Fi、近距離無線通信技術のBluetooth・ZigBee・NFC、低消費電力・長距離通信を特徴とするLPWAなどが活用されます。ここでは、IoT/M2Mの具体的なサービス事例を解説します。
VICSやアメダス
機械から情報を収集するM2Mサービスの著名な例は、VICS(道路交通情報通信システム)やアメダスです。
- VICS:道路上に設置されたビーコンで収集した情報をVICSセンターに収集し、処理された道路交通情報をカーナビなどへリアルタイムに送信
- アメダス:全国に設置された測器で温度計・雨量計・風向風速計などで気象情報を収集し、降水短時間予報や気候統計資料などに活用
他にも、ビルのエレベーター監視やウェアラブル端末による健康管理など、さまざまな用途に活用されます。また、センサーから収集した情報に基づき機械の制御を自動化するM2Mサービスもあります。例えば、ビルの照明や空調の自動制御、車の自動運転などです。
位置情報管理や遠隔監視
モバイル回線やモバイルWi-Fiルーターを活用したM2Mサービスの事例として、車両の位置情報管理や遠隔地の監視業務などが挙げられます。
- バスの位置情報管理:GPSデータ取得による位置情報収集・管理、クラウドセンターを通じた同報配信やナビゲーションに加え、各車両のドライバーに業務用スマホも一括提供
- ネットワークカメラによる遠隔監視:固定回線を引けない場所にネットワークカメラ(IPカメラ)を設置し、広域なモバイル回線を利用して工事現場や不法投棄などを監視
- 太陽光発電システムの遠隔管理:ネットワークカメラによる監視映像、パワーコンディショナーの発電量などを遠隔で管理し、保守メンテナンスのサポート
施設管理や店舗の端末管理
モバイル回線は多種多様な機械と連携できるため、施設のエネルギー管理や小売店の端末管理を効率化するM2Mサービスも活用されています。
- 電力検針機器のデータ収集:モバイル回線を通じ、運用施設の電力検針機器の電力情報や内部状態データを収集し、把握した電力使用情報に基づくピーク電力の抑制などにより適切なエネルギー管理
- クレジットカード決済端末:常時接続・低価格のモバイル回線を通じ、各決済端末から少量のテキストデータをサーバに収集
- デジタルサイネージ:店舗で運用する数千台のタブレット端末のモバイル回線を統一し、データ送信を夜間に限定、パケット量のリアルタイム監視により、通信データ量および通信コスト削減
IoT/M2Mを導入するメリット
IoT/M2Mの活用事例は多彩ですが、導入によって主に以下のようなメリットを享受できます。
- 人的コストの削減
- ヒューマンエラーの防止
- 業務効率化や生産性向上
システム構成次第ではイノベーション創出につながりやすく、さまざまな業界で注目度が高まっています。
人的コストの削減
IoT/M2Mを導入するメリットの1つは、マンパワーで行っていた業務を自動化することにより、人的コストを削減できることです。
例えば、製品製造・管理のプロセスを自動化することで、現場に張り付く作業員の数・負担を減らせます。また店舗や倉庫の在庫管理を自動化すれば、棚卸しの負担が軽減され、システムによっては発注作業まで自動化が可能です。
24時間365日の監視などとも相性が良く、人材配置の最適化と省力化、人的コストの削減につながります。
ヒューマンエラーの防止
ヒューマンエラーを防止できることもIoT/M2Mを導入するメリットの1つです。
監視・計測業務を人間が行ったり、センサーから得た情報を人間が認知・判断したりすると、動体の検出漏れや判断ミスが起こります。結果的に「作業者によって業務水準が異なる」ということになりがちです。
IoT/M2Mなら人間を介在させずに機械が認知・判断・行動できるため、ヒューマンエラーを防止し、業務を標準化できます。
業務効率化や生産性向上
業務効率化や生産性向上につながることもIoT/M2Mを導入するメリットの1つです。
人間ではムラが生じやすい業務を標準化し、機械が的確にこなせる業務を機械に任せることで、業務プロセスの改善やコア業務への集中につながります。
またクラウド型のサーバにデータを蓄積し、AIで分析することで、高度な予測も可能です。場所にとらわれずデータ活用ができることで、テレワークなどの多様な働き方にも対応でき、業務効率化や生産性向上につながります。
IoT/M2Mを導入する際の注意点とポイント
IoT/M2Mを導入する際、機械同士がスムーズに情報をやりとりできる通信方式を採用することが重要です。一般的には携帯電話網を活用しますが、通信経路上で情報窃取などの恐れがある場合、よりセキュアな法人向けアクセスサービスを選択することが求められます。
通信方式の確立が必要
IoT/M2Mを導入するに当たっては、機器間でデータをやりとりするための通信方法の確立が必要です。特に遠距離通信の場合、自社でのネットワーク構築は困難な場合もあるでしょう。
そこで多くの企業は、IoT/M2M向けの通信サービスを活用します。代表的なソリューションは、機器にSIMカードを挿入し、携帯電話網で通信するものです。この方式なら機器の仕様にかかわらず導入でき、インターネットを経由せずにデータのやりとりができます。
セキュリティリスクの対策も重要
M2Mサービスは、特定施設内などで完結する閉じたネットワークで構築されることもあります。ただし通信機能がある限り、システムのハッキングなどを受けるリスクはゼロではありません。
特にインターネット接続を前提とするIoTサービスの場合、通信データの窃取やIoT機器の乗っ取りなど、常にサイバー攻撃のリスクがあることは注意点です。IoT/M2Mに対応した法人向け閉域網アクセスサービスなど、セキュアな通信方式を採用することも検討しましょう。
IoT/M2Mをスマートに導入するならイッツコム!
センサーネットワークが拡大するほどSIMカードの契約枚数は多くなりますが、イッツコムの「法人データSIM」なら、安価に安定した携帯電話網を活用できます。よりセキュアな法人向けアクセスサービスをお求めなら、法人データSIMと閉域網接続を組み合わせた「モバイル閉域接続」がおすすめです。
低コストであらゆる機器の通信環境整備「法人データSIM」
IoT/M2Mを導入するには通信方法の確立が求められますが、機器によって通信システムが異なるとコストは肥大化します。
そこで導入したいのがイッツコムの「法人データSIM」です。サービスは機器に専用SIMを挿入するだけで利用開始でき、安心のNTTドコモ回線を利用してIoT/M2M機器の快適な通信環境を整備できます。
SIMカードに対応しているあらゆる機器に導入できるため、POSレジ・ドライブレコーダー・監視カメラなどの他、テレワーク環境で利用するスマホやタブレットにも一括導入が可能です。
また「シェアプラン」を利用すれば複数SIMでデータ通信量を分け合えます。機器によって月間のデータ通信量に差があっても、費用の無駄が生じにくいのもメリットです。
よりセキュリティを強化したい場合は「モバイル閉域接続」
法人データSIMはあらゆるSIM対応機器に通信環境を一括提供できますが、これだけでは通信セキュリティにやや不安を感じることもあるでしょう。
そこで導入したいのが、法人データSIMと閉域網接続を組み合わせた「モバイル閉域接続」です。NTTドコモ網・イッツコム網による閉域網を経由し、目的のサーバへ仮想的な直結回線を形成できるため、データプラットフォームまでの通信経路をインターネットから秘匿できます。外部からは通信の存在自体も知り得ません。
こちらも「シェアプラン」に対応しているため、通信量の少ないIoT/M2M機器と通信量の多いスマホやタブレットを併用しても、トータルの費用を抑えられます。
まとめ
IPカメラによる遠隔監視やクレジットカード決済端末からのデータ収集など、M2Mサービスはモバイル回線と組み合わせて比較的容易に導入できます。ただし通信経路にインターネットを含む場合、情報窃取や機器の乗っ取りなど、セキュリティリスクへの対策が必須です。
法人向けの閉域網接続サービスを活用すれば、よりセキュアにIoT機器を運用できます。IoT/M2Mサービスの導入をお考えなら、要件に応じた最適な通信サービスを提供できるイッツコムにご相談ください。