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防災インタビューVol.4

災害時に情報を役立てるために

放送月:2005年2月
公開月:2006年11月

市川 啓一 氏

レスキューナウ・ドットネット 代表取締役

首都直下型地震発生時の帰宅困難者について

実際この東京周辺で直下型地震があったときはどのようになるか、ということは、昨年12月にも、内閣府からいろいろな被害想定が発表されました。最悪のケースの場合、1万2千人の方が亡くなるとありましたが、もう1つ注目してほしい数字は帰宅困難者の数です。この被害想定によると、帰宅困難者の人数は650万人という数値が出ました。以前、東京都が発表した時は370万人と言われていましたが、さらに増えて650万人に及ぶという数字が出ています。(赤字部分削除)これは、電車が止まったりして交通がストップしてしまうために、帰りたくても帰れない人が650万人出るだろうということです。

最近、この問題もすごくクローズアップされてきましたので、会社ですとか、いろいろなところが、どうやってそれを帰そうかということを考え始めています。そのために準備をしていこうと動き始めています。ここで1つ、「帰れない中で、無理して帰すということが、いいことかどうか」というのが大事なポイントになっています。まだそれほどクローズアップされていないポイントですが、650万人もの人が日ごろ使っている電車が動かない中で帰ろうとする、つまり徒歩で帰るわけです。最近、帰宅困難訓練、徒歩で帰ってみましょうという訓練が年に何回かあって、まさに徒歩で帰るのですが、通常の歩道を使って訓練されています。でも実際に災害のときにはどうなっているかというと、東京で歩道を歩いて上を見ていただくと、そこには電信柱があって、ビルがあって、看板が出ています。そうしたものが災害時にはぶらさがっていたり、倒れてきたりします。ガラスが散乱していたり、そのような状況の中にあって、歩道はとても危険で歩けませんので、650万人もの人が道路の真ん中に出てきて歩きます。しかし、東京都は大地震が起こると環状7号線の内側、主要幹線道路は通行止めになります。その理由は緊急車両が通れるようにということです。つまり、怪我をした方を運ぶ救急車、あるいは火災を消すための消防車、あるいは壊れている電気や通信など、いろいろな復旧のためのメンテナンスの車、あるいは私たちのために非常食を運んでくれる、毛布を運んでくれるトラックなど、そういう緊急車両のために道路を空けなくてはいけないわけです。皆さんが大量に道を歩くと、それら緊急車両が通れなくなってしまいます。ですので、災害時は、まずは帰ろうとするのではなく、まずとどまって、交通が復旧していくのを待つということが必要だと言われ始めています。

しかし皆さん、やはり家族のことや自宅が心配です。いち早く帰りたいと思っているわけですので、その人たちに対して帰らないでくださいと言うからには、2つのことが必要だと言われています。1つは情報、もう1つは、そこにとどまるため居続けるための物資です。

帰宅困難者が東京にとどまるために

帰宅困難者が東京にとどまるためには、家族や自宅についての正確な情報がまず必要です。というのは、自分の家族がどうなっているか、家がどうなっているかということが、皆さん心配でしょうがないからです。昨年、ある調査がありましたが、災害が起こったときには、何かの方法で何としてでも家に帰るという人が7割という結果が出ていました。また帰った後、今度は再び出社してくるかという調査については、まだ交通も乱れたり止まったりしているし、家もぐじゃぐじゃかもしれませんが、そんな中で出社してくると答えた人は5割でした。なかなか帰れない中で帰ってしまい、帰ったら出てこないということになると、東京の経済が滞ってしまいます。そのために、復旧や復興につながるはずの事業が止まってしまうということになります。また、650万人もの帰る人が道にあふれてしまうことで、復旧活動を止める弊害を引き起こし、さらなる悪循環を起こしてしまうわけです。

帰宅途中で道路が陥没している可能性もある

そういうことにならないために、家族はどうなのか、復旧活動はどう進んでいるのかを正しく伝えてあげると、安心して、ここにとどまっていようと思えるわけです。でも、そういうことが分からないと、とにかく一目散に帰ってしまいます。それをとどめるのに必要なのが情報と物資です。

皆さんが無事だという情報を家族に伝え、皆さんの家族も無事で、家のそばで行われている救援活動の様子や、被害がそれほど出ていないというような情報が伝えられ、今ここの被害はこれくらいが、こういう復旧活動が続いているので、明日まで待てばこうなるでしょう、例えばあの電車は明後日には動き出すそうですよ、今日は電気が止まって真っ暗だが、明日にはこのビルの灯りがつく見通しだとか、そういうことを伝えると心が落ち着くわけです。しかし、実際にはおなかも減りますし、夜になると寒いかもしれない。そうするとパニックが起こってきますので、あとは物理的なもの、水、食料、毛布といったものが、どうしても必要になってきます。そこにとどまらせるためのスペース、雨露をしのぐような建物があって、その中で食料があり、情報が正しく提供されれば、パニックにならずに皆さんとどまることができると考えられています。

帰宅困難者に対する備えの必要性

帰宅困難者の対処方法については、各々の方の備えも必要ですが、組織、会社自体も考えていかなければいけないことです。個人個人が行うということは非常に難しいので、まずは会社が帰宅困難者に対して備えていかなければなりません。会社として情報、物を備えて、しかるべきタイミングまではビルの中で社員を安全に守って、そして順次帰れる人から帰すことが必要です。

家族が本当に大変なことになっている、家が大変になっている、そういう情報も来るわけですが、それは全員ではなく一部のはずです。その人に対しては、本人だけではなくて別の人を何人かつけて、会社として物も渡すなど逆に応援をつけて、何としてでも帰らせる。でも、ほとんどの人は、そんなに慌てることはないので、まずはとどまることを正しく事業会社が行動できるように、備えをしていくことが必要です。

また、郊外に住んでいる家族のほうも、災害があったときには、基本的に働きに出ている家族は帰って来られないのだということを、あらかじめ、お互いが認識しておくことが必要です。そうすればパニックにはなりません。「帰ってくるはずだ」「帰らなくちゃ」となるからおかしくなるわけで、災害時には帰りたくても帰れないのだということを、事前によくイメージして、そのために何を備えておけばいいか、どうやってお互いの安否を伝えあえばいいのか、会社の中には何を保存しておいたらよいのか、そういうことを考えることが必要だと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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