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防災インタビューVol.9

自分の命、家族の命を守るためにできること

放送月:2004年1月
公開月:2007年4月

目黒 公郎 氏

東大生産技術研究所 教授

災害をイメージして対策を立てる

災害に対しては、自助、共助、公助が重要だという話をしましたが、では、その重要な自助につながるような環境整備をどうしたらいいかという話をしたいと思います。今、我が国は地震学的に大変活動度の高い時期を迎えております。今後30~50年くらいの間に、マグニチュード8を超えるような地震が4、5回、我が国を襲います。その前後に起こるであろうマグニチュード7クラスの地震はその10倍になると思われます。これらの一連の地震で受ける被害総額は、最悪300兆円を超えると予想されています。仮に30年間で300兆円とすると、年平均で10兆円の被害ということです。兵庫県南部地震の直接被害が10兆円ですから、年間10兆円という被害は、阪神・淡路大震災クラスの地震災害が、これから30年間毎年起こり続けるくらいに相当します。これだけ大変な状況の中で、我々がやらなければいけないことは何かと言ったら、起こったときにどうしようではなくて、起こるまでの時間を有効に活用して、被害をどうやって減らすかということだと思います。

ではなぜ今まで、防災対策がうまく進まなかったのでしょうか。世界各地の地震被害を見てきた私の考える防災力向上の基本は、発災からの時間経過の中で、自分の周辺で起こる災害状況を具体的にイメージできる人をいかに増やすかに尽きます。効果的な防災対策は、「災害状況の進展を適切にイメージできる能力」に基づいた「現状に対する理解力」と「各時点において適切なアクションをとるための判断・対応力」があってはじめて実現するのです。

人は、イメージできない状況に対する適切な心がけや準備などは絶対にできません。現在の防災上の問題は、社会の様々な立場の人々、すなわち、政治家、行政、研究者、エンジニア、マスコミ、そして一般市民が、災害状況を適切にイメージできる能力を養っておらず、この能力の欠如が最適な事前・最中・事後の対策の具体化を阻んでいる点にあります。地震被害の状況を具体的にイメージする能力の向上には、私が提案している災害イマジネーションツール「目黒メソッド」や「目黒巻」などを利用して、発災時の季節や天気、曜日や時刻などの条件を踏まえた上で、発災からの時間経過にともなって自分の周りで起こる事柄を具体的に考えた上で抜き出し、問題点を理解することが重要です。こうすることで、事前準備の重要性が認識され、抑止力を含めて総合的な防災力が向上します。

しかし、災害のように、めったに起こらない状況を適切にイメージすることはとても難しいことです。ゆえにイメージのきっかけ作りが必要になります。人はきっかけを得て、ある程度自分で考えられるようになると、あとは自分で、いろいろと考えることができるようになります。自分の損得勘定に結びつくところまで考えが及べば、対策をとるなといっても、自分ができることを探しながらやりはじめます。あなたの街はどうなる、家は、さらに部屋は、と突き詰めてゆくと、ぐっと現実味を帯びたテーマになるのです。そこで、個々人が災害時にどういう状況におかれ、どう行動すればいいのかをイメージするためのツールとして、「目黒メソッド」と呼ぶ災害イメージトレーニング法を考えたのです。さらにこれを簡略化して、一般の方々にも簡単に使っていただけるように改良したものが「目黒巻」です。

目黒メソッドでは、縦軸に平均的な一日の時間帯別の詳細な行動パターンを、横軸には地震発生後の経過時間を、3秒、10秒、30秒、1分、2分、5分、・・・、5年、10年と記入した表を使います。一日の自分の行動を考えるときには、住んでいる地域や職場周辺の環境や建物の耐震性、家具の配置、時間帯別の家族各メンバーの居場所や行動パターンなども表にまとめておきます。通勤手段が使えなくなった場合に、すべて徒歩とするとどれくらいの時間がかかるのか。その上で、季節や天候、曜日を決めて、各時間帯に大きな地震が発生したと仮定して、自分の周りで起こると思うことを一つ一つ具体的に記載します。ほとんどの人は何も書くことができません。イメージできないのです。イメージできないということは、地震に直面した際に適切な行動が取れないということです。

目黒メソッドの中で、私が特に大切だと思っているのは、「自分の生活を強く意識して考える点」です。これまでも多くのメディアが災害の教訓特集を組んでいますが、それらがなかなか皆さんの心に響かなかったのは、全てが他人事だからです。一方目黒メソッドでは、災害を考えるときに、常に自分の生活を意識しなくてはいけないので、リアリティが全く違うのです。実際にやってみると、まず容易には書けないことがわかります。それが第一歩です。

目黒メソッドを簡略化した「目黒巻」は、小学校や幼稚園、一般家庭で行うことを目的としており、自分で条件を設定して、災害時の様子を、自分を中心とした物語として書いていくというものです。細長い紙の上に経過時間に沿って物語を書き込むので、巻物状になるため「目黒巻」と呼ばれています。「目黒巻」をみんなで書いて縦に並べてみると、同じ時間帯で、各人がそれぞれどういうことを書いているか比較できます。みんなの認識がずれていることや、相互の連絡が難しいことなどがいろいろとわかります。物語を書き進める上で、自分の問題点がわかったり、疑問点が出てきます。この問題点や疑問点をみんなで話し合ったり、調べたりすることから、具体的な防災対策が始まります。どうすれば、自分の物語がハッピーエンドになるのかを考えることがポイントです。事前に何をしておけば、物語がどう変わるのか。事前対策の重要性が認識できます。事後の対応力も身につきます。関係者で条件を変えながらやってもらうことで、個人個人の、そして組織としての防災力を高めていくことができます。

例えば、学期の初めに、季節と対応させて、学年が変わった時、引っ越した時、それぞれの時に書いてみることをお勧めします。

健常者は潜在的災害弱者だ

ほとんどの人は緊急事態におかれていても、自分が健常であることを信じて疑いません。自宅で寝ている時間帯、地震の揺れの最中に、眼鏡やコンタクトが紛失してしまい、スペアも見つからない。上から何か落ちてきて腕を骨折した。足をくじいた。そのような状況を前提に目黒メソッドの表をもう一度埋めてみてください。日常的に健常者という意識しかない大多数の人たちが、自分が簡単に災害弱者になることに初めて気づくでしょう。防災では、「健常者=潜在的災害弱者」と考えることが重要です。全く違う状況が見えてくるはずです。また、不幸にして、家族にけが人や亡くなった人が出てしまった状況を想定すると、物語は大きく変わります。

いろいろな状況を考えると見えてくるもの

私たちは日常的にいろいろな場所を動き回ると同時に、いろんな顔を使い分けています。「社会的な顔、私的な顔」、「守ってもらう側、守ってあげる側」、「つくってあげる側、つくってもらう側」、「情報を出す側、受ける側」。自覚の有る無しに関わらず、個人としての2面性(多面性)があるのです。自分はいつも「守ってもらう側」と考えている圧倒的に多数の一般市民が、例えば家庭の若い主婦が、目黒メソッドを通して、家に子供と自分しかいない時間帯に地震に襲われれば、自分が「守る立場」にならざるを得ないことを実感します。自治体の防災関係者が、職員として住民を「守る側」にある時間が、1日8時間勤務、週休2日、その他の休暇…と考えていくと、時間的には全体の20パーセントちょっとであることに気づきます。他の住民同様に被災する可能性と、防災職員として活動できない状況の多さも実感します。自分自身が負傷した場合、幸いにして自分は大丈夫でも自宅が倒壊したり家族が負傷・行方不明となった場合など、いくらでも考えられるのです。相反する個人としての2面性(多面性)と、立場で変わる「すべきこと」と「ニーズ」の把握、双方の立場に立った対策の立案が重要なのです。

ところが、「対策の立案」というと、我々は急に公的な、社会的な存在としての一面にのみ立った思考をとり始めてしまいがちです。この点に注意しないと、「受手側の期待、求められるもの」の把握困難に落ちいってしまいます。逆に「サービスの受手側」としての自覚しかない人々にとっては、「地域社会の実力/耐力と自分達からのリクエスト」のアンバランスさに気づけないという状況を生んでしまうのです。

自分が死んだときのことまで考えられない

私は学生さんに目黒メソッドをやってもらいますが、学生の場合は、ある時間帯や状況では自分が死んでしまうようなことも起こります。そのときには、次のように彼らに言います。「もし自分が亡くなってしまったら、そこで物語を止めるのではなく、君の死を周りの人がどう受けとめて、その後生きていかれるのかを考えて記入しなさい。」

そのとき彼らは初めて気づきます。自分がいかに周りから大切にされ、多くの人たちのサポートを受けて生きているかを、そして自分は死んではいけない存在だということを。この認識が得られると、彼らには、何か防災対策をしなさいなどと言わなくても、自分でできる対策をしっかり考え、具体的に実行に移し出すのです。

災害イマジネーションと事前の防災対策

従来の防災教育のように、「Aやってください、Bやってください、Cやらないでください」のようなものはだめなのです。このようなことをいくら言っても心に響かないし、まして心にとどめておいてくださいと言っても無理です。防災教育としてやるべきことは、災害に直面したときに、何が起こるのかを、きちんと考えられる能力、災害イマジネーションを向上させることです。その能力がつくと、現在の自分の問題がわかるので、地震が来る前の時間を有効活用して、その問題をなるべく解決する事前対策を取ることができます。

地震が起こるまでの時間と地震直後の時間、どちらに時間的な余裕があるでしょうか。言うまでもなく前者です。目黒メソッドの地震発生からの時間軸を地震発生までの時間軸に変えて考えると、災害イマジネーションのある人は、現在の自分の問題がわかるので、地震までの時間が与えられた場合に、その長さに応じて有効な事前対策をとることができます。ここで初めて具体的な減災が実現するのです。そしてもっと時間が短くなって1分以下になると、季節や天気、曜日や時間、自分の場所やしていることを前提に、何秒あれば何ができるかを具体的に考え、それを実施できるように準備しておくことが可能となります。これが緊急地震速報の利用できる猶予時間です。緊急地震速報とは、最先端の技術と地震計の高密度配置によって実現したものです。地震動には伝播速度の異なるP波やS波、表面波などがあります。速度の最も早いP波は通常上下動として感じられる揺れです。次にやってくるのはS波で、これが建物を壊したりする地震動です。通常は横揺れとして感じます。S波の後に、大規模なタンクや長大橋、高層ビルなどを良く揺らす表面波がやってきます。伝播速度の違いからP波がまず地震計で観測されますが、その後4秒間程度で、そのP波がどこで発生したどの程度の規模(マグニチュード)の地震によるものかが評価できるようになりました。地震の規模と場所が分かれば、あとはそれぞれの地域に対して、「いつ、どのくらいの激しさでS波や表面波が襲うか」は計算できるので、震源から少し離れた場所であれば、実際に揺れが襲う前に、「○○秒後に、あなたの場所は震度△△で揺れます」という情報を流すことができるわけです。この情報が緊急地震速報です。

「グラッと来たら何をすべきか?」をあれこれ考える前に、「グラッと来たときに、なるべく何もしなくていい状況」を事前に準備しておくことがポイントです。そして実際にその日を迎えてしまったときには、自分はおかれる状況を時間先取りで認識できるので、その状況がなるべく悪くならないように、そのつど適切な対応をすることができます。こうして、トータルとして受けてしまう被害を最小化できるわけです。

災害時におけるライフラインについて

電力・上下水道・ガス・交通・通信など、人々の日常生活になくてはならない機能を「ライフライン」と呼びますが、これらは被災地の人々の生活にとって重要であるにもかかわらず、地震で機能障害を起こしやすい特徴を持っています。兵庫県南部地震では、地震直後に、停電戸数が260万戸(ただし当日の朝7時30分には100万戸)、断水は約136万戸、ガスの供給停止は約86万戸、電話については約28.5万回線に障害が出るなどの被害が発生しています。復旧期間は、電気の応急復旧が6日、電話は2週間、水道とガスは途中段階での復旧率に差がありますが、全域が普及するのには約3ヶ月の時間を要しました。ライフラインが復旧しないと、仮に建物が大丈夫でも生活が困難であることから、避難所で生活する人々の数もライフラインの復旧状況とリンクします。

兵庫県南部地震で被災した家庭の室内(1995年)

ところで、兵庫県南部地震以前の過去の地震においても、ライフライン被害は頻繁に発生しています。むしろライフライン被害の問題は、地震の揺れの強さが兵庫県南部地震のように甚大な建物被害を及ぼすほど強烈でなくとも発生する点にあります。揺れがそれほど強くない地震でも、停電や断水、鉄道の不通、電話の輻輳などの機能障害が起こってしまうのは、これらの施設が線的・面的に広がった構造を持ち、その総延長が非常に長いためです。だから構造のどこか1箇所でも被害を受ける確率となると、非常に高くなってしまうのです。もしシステムが直列系であれば、どこか1箇所の被害のために、システム全体の機能障害が発生してしまいます。もちろん現実のシステムでは並列化や多重化などの対策がとられてはいますが、それにしても線的に伸びる施設のどこかに被害が生じることによって、あるエリア内の施設が機能障害を受ける確率は、点として存在する建物に比べてずっと高くなるのです。これが地震の度にライフライン障害が発生する大きな理由です。

電話に関しては、もう一つ大きな問題があります。それは「輻輳(ふくそう)」という問題です。通常電話回線の容量は、対象ユーザーの5%程度が同時に回線を利用することを想定して、つまり20人に1人くらいが電話を使うことを前提として決定されます。日常的にはこうして決定された容量で全く問題ないのですが、何らかの理由で、同時に多数の人々が電話を利用すると、回線がパンクして電話が非常にかかりにくい状況に陥ってしまいます。設備の被害は特にない状態でも電話の機能が失われてしまう状況が生じるのです。これが「輻輳」で、平常時でも電話による前売りチケットの予約販売とかで、この「輻輳」が問題になることがあります。地震直後に「安否確認」や「状況説明」などの電話が被災地に殺到するために回線がパンクし、「輻輳」が発生します。通常の利用数(電話では一般にトラフィックと言う)の数倍から数十倍のトラフィックが生じ、全く電話がかからない状態になってしまうのです。このような状況では、一般家庭用の電話よりも公衆電話の方が優先されるので、こちらを使うことをお勧めします。停電時はカードは使えないが、10円硬貨による通話は大丈夫なので、これが兵庫県南部地震でも多いに利用されました。ただしコインがすぐにいっぱいになり、しかも回収作業が十分できずに、結果的に使えなくなってしまった公衆電話が多かった反省から、現在では、大規模な地震などの災害が発生した場合には、10円の硬貨がなくとも通話可能なシステムとしています。ただで電話がかけられるわけですが、災害時の長電話は他への影響も考慮して慎しんでください。

復旧に要する時間の差

ライフラインの機能障害の復旧の特徴は、被害の規模によって復旧日数に差はあるものの一般的な傾向として、電力→電話→水道→ガスの順で機能が回復していくことです。このように復旧に要する時間がライフラインの種類によって違ってくるのはなぜでしょうか?

理由はそれぞれのライフラインが有する供給システムの特性や供給している「もの」の差にあります。復旧時間を支配する要因の第1に、ライフライン施設に発生する物理被害の量の大小が挙げられます。

土の中に埋め込まれた管状構造物が地盤条件の違う広域なエリアに広がっている水道やガスの埋設管ネットワークシステムは、以下のような理由から被害をうける可能性が高いのです。エリアによる地盤の揺れやすさの違いや液状化現象の有無、さらに液状化を原因とする大規模な地盤の永久変形などの影響を受けやすいためです。またこれらのシステムの整備には長い時間を要することから、施設全体を見渡した場合、強度特性の随分と違う施設が組み合わされて使われています。建設された年代、用いられた工法や材料/製品の違いによるものです。老朽化に応じた更新はなされていますが、それにしてもシステムを構成する全要素の性能を同程度に高くすることは困難なことから、どうしても被害が生じてしまうことは避けられないのです。具体的には、システム全体の中で相対的に老朽化が進んでいるエリアや地盤条件の悪いエリアの施設の管と管の継ぎ目を中心として被害が発生しやすい事実があります。

一方、電力や通信の施設は架空であったり、地下でも埋設管の中に導線を巡らせるシステムであるため、更新作業は埋設管そのものの更新に比べて容易です。

次の問題は、被害が発生した際の被害箇所の特定です。この点でも電気や通信は、他のライフラインに比べて被害箇所の特定が容易です。すなわちキャリアモニタリング(電気や水やガスなど、供給している「もの」の量や圧力を計測すること)によって、被害箇所の特定が高い精度で容易です。水道やガスでもキャリアモニタリングが不可能なわけではないですが、電力や通信に比べてキャリアモニタリングによる被害箇所の特定は難しいのです。さらに精度の高い位置の特定は、対象施設が地下埋設管であるために、掘削等をしない限り最終的な確認ができません。

次は復旧作業の問題ですが、ここにも大きな差があります。電力や通信は系統の切り替えなど生き残った設備によるサービスの継続が可能な場合も多く、また仮設の導線を地上や架空に設置することでとりあえずの応急対応が可能です。水道は水源が豊富であれば、漏水を覚悟して供給を続けることもできます。しかしガスではそうはいきません。いったん供給を止めてしまうと、次の供給の再開時には、一軒一軒の需要家を回り、ガスの施設に問題ないかどうかを確認した後に初めて再供給が可能となります。この確認作業に膨大な時間と労力を要するのです。だからガスの供給会社は、供給エリアのブロック化をはかり、ブロックを単位とした供給調整によって災害時のガスの供給停止エリアを最小限化に努力しているのです。

以上のような理由から各ライフラインが復旧に要する時間に差が生じ、電力→電話→水道→ガスの順となります。ところで、ライフライン関係機関は、災害時には地元の組織の人材と資材だけでの対応では不十分であることから、相互に協力して復旧活動に当たるための支援協定を結び有事に対応できる体制を整えています。

ライフラインは生命線か

ライフライン施設には、新技術の開発や老朽化した施設の補修・補強をはじめとして、様々な地震対策が講じられています。しかし、いかに努力しようが、どんな災害時にも機能損失のないライフライン施設などは有り得ません。災害時に起こるであろう状況に関して、需要家に正確な情報を提供し、置かれている状況を十分理解してもらわなくてはいけません。「建前としての万全な体制や安全の保障」などは全くナンセンスです。ライフラインは「生活線」であり「生命線」ではありません。日常生活を支えるものがライフラインです。非常時に生命を救ったり維持したりするものではないことを明言すべきです。もしそれらが「生命」と直結するならば、需要家が自前で対策をとるよりしかたがありません。またわが国のライフラインシステムの信頼性の高さは世界的に見てもトップクラスです。このトップクラスに高い信頼性の状況をさらに高めようとしても、もはやちょっとくらいシステムに投資をしたところで変化しないほど限界に近い状況です。つまり投資対効果が悪くなってくるわけです。ですから、例えば今の年平均停電時間を半分にしたいというようなリクエストがユーザー側からあった場合、それを実現するために電気代を何倍も高くしないと、それができないというような状況まできているわけです。このような状況を供給事業者はもっと積極的に需要家に説明し、理解してもらわなくてはいけません。と同時に、供給が停止された場合の有効な事後対策に関する知恵と情報を提供する必要がありあります。さもないと、災害の度に事業者は予期できなかった出来事と言って逃げ腰にならなくてはいけないし、一般の需要家は災害に対する準備を疎かにするばかりか、災害時にまで平常時と同じぜいたくを求めてしまうことになります。これは双方にとって不幸な状況です。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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