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防災インタビューVol.14

楽しく儲かる震災対策

放送月:2004年4月
公開月:2007年9月

安井 潤一郎 氏

NPO東京いのちのポータルサイト理事長、早稲田商店会長

早稲田商店会の耐震補強

環境の街 早稲田

早稲田の街の防災を考えていくうちに、現在、行政や地域がやっている震災対策、防災の活動の中には、私たちが考えている、街が動くキーワード、街が動き続けるキーワードがないなということに、商店会は気がつきました。我々はこういう一連の活動を通じて、街が動くキーワード、動き続けるキーワードは、「儲かることと、楽しいこと」だと感じました。儲かると言って耳障りが悪ければ、「得する」ということですね。得するということは、金銭だけではなく、精神的にも肉体的にも得することがあります。楽しいというのは、実は遊び心です。遊び心というのは知恵です。知恵は知識の活用と言われています。知識という言葉と情報という言葉を、もしイコールでつなげられるならば、我々が作った実行委員会、いわゆる商店会、街を作って、そこに行政、企業、団体、学校、PTA、学生、皆さんがそれぞれの立場の情報をここに流し込んでいるということは、ここの地域は知恵を働かせやすいということです。

このように震災対策を考えていくと、防災の一番の決め手は耐震補強工事であるということになりました。私たちの商店会は、昨年夏に、昭和56年以前に建てられた木造建築物に対して、一部行政の補助金を使って耐震補強工事を行ないたいという陳情をしました。それに対して、助役から言われたのは、次のような話でした。平成8、9、10の3年間、新宿区には既存不適格建物が3万棟あると言われました。その建物に対して、無料の倒壊家屋診断が出来るようになったのですが、実際にこの診断を受けたのは、3万棟のうち、なんと78棟でした。そこから耐震補強工事を本当に行なったのは、1棟しかありませんでした。この例を見て、「一部でも自分のお金を使わなければならないとしたら、街の人たちは、本当に耐震補強のためにお金を出すのか」と言われたんです。街に戻ってこの話をしたら、街の皆さんが異口同音おっしゃったのは、「人間所詮死ぬんです」ということでした。その言葉を聞いて、「どうも今、この国は、人がポジティブに生きていない」という気がしました。昨日の夜寝て、今朝目が覚めて、死ぬのも面倒臭い、だから生きている、そんな雰囲気さえありました。その中で、我々商店会が、「儲かって楽しいというのは何か」ということを考えていくと、逆に「死んでたまるか」ということに考えが至りました。今、我々商店会にできることは何かといったら、「死なないほうがいいよね、生きているほうが楽しいよね」と思えるコミュニティづくりをすることしかありません。それが我々商店会にとっての一番大事な耐震補強、いわば震災対策だということに気がついたのです。

儲かって楽しい震災対策

そこで、早稲田商店会の考え出した「儲かって楽しい震災対策」が、「震災疎開パッケージ」です。中学生以上は年会費一人5000円で、このパッケージをお求めいただくと、もし、もし震災が起こって、ご自宅が災害救助法の認定を受けると、北海道から沖縄まで、どこでも、一定期間、お客さんとしてお迎えいれしますよ、というものです。もちろん5000円ですから、上限はあります。具体的に言うと30万円分で、交通費が5万円、宿泊費が25万円まで、各地の商店会に疎開できます。震災が起こらなくて翌年更新をしていただいた方には、「ご無事お祝い」ということで、北海道から沖縄までの、うちへおいでと言ってくれている地域の皆さまがこだわって使っている商品が会員さんのところに届くというものです。

これをやっていくうちに、長野県の飯山市が、受け入れ地として名乗りをあげてきました。お隣の新潟県の入広瀬村も、うちも名乗りを上げますよというように、どんどんそうやって受け入れ先が増えてきました。その一方で、商店会のメンバーで話をしているうちに、震災にあっても、疎開はしないのではないかという話になりました。自分の家が壊れてしまったからといって、温泉に言っているわけにはいかないだろうということです。しかし、震災が起こると治安が乱れます。そのような時に、年寄り、女、子どもを預かってもらえれば安心です。

しかし、知らないところには預かってもらえない、ということで始まったのが「震災疎開パッケージ、現地視察の旅」で、昨年5月21、22の2日間、早稲田にお住まいの70代の方たち20名と、新潟県の入広瀬村に行きました。向こうで大歓迎してもらって、帰りのバスの中で、参加された方が、「なんかあったらうちにおいでと言ってもらえた、生きる元気が沸きますね」と言われました。この言葉だけでいいんです。私たちはこの街を作ってくれたベテランの人たちに、生きる元気を与えたかったのです。ところが、この報告書を書いてびっくりしたことには、ここに参加した20人の人たちの一人平均お土産代は2万円超えていたのです。入広瀬村の観光協会もびっくりしました。お客さまが何をお望みになっているかをもっと的確に提供できれば、お互い早稲田も入広瀬の商店会も、まだまだやれること、いっぱいあると気がつきました。これが第1回の疎開交流ツアーでした。

震災疎開パッケージ

震災疎開パッケージ「ご無事お祝い」

震災疎開パッケージに5000円の年会費を払っていただいた方で、ご地元での震災がなく、更新していただいた皆さんには、「ご無事お祝い」として、いろいろなものをお届けさせていただきました。その中で一番人気があったのは、実は長野県の高遠町の高遠さくら米です。5キロで5800円するお米が、5000円の更新料を払ったら届いたというのは、お得です。

さんまのセールポスター

また、私ども早稲田の街では、飛散防止のフィルムを提供させてもらいました。飛散防止のフィルムというのは、震災時に、ガラスが割れてもガラスが飛び散らないようにするもので、実はこれは、貼るのはそんなに難しくはないですが、一人暮らしのお年寄りの皆さんには、この飛散防止のフィルムを貼ってあげようという、早稲田大学の学生さんによる「早稲田助け隊」というボランティア活動がスタートしました。もし何かあったときに、この早稲田の学生さんたちは、自分たちを助けに来てくれる、ということで、「学生さんに、お昼ご飯くらいおごろうよ」ということになり、昔の学生街の雰囲気を再現しようとしています。この更新時にお送りする品物は、いまでは、各地からいろいろな物がどんどん出てきていて、実は、加入者のほうからすると、お中元やお歳暮の内覧会のような形になっているので、産地は競い合っていいものを出してきています。

また、北海道のお仲間から、B&B協会のご紹介を受けました。B&Bというのは、朝ごはんとベッドを提供しますということで、1泊2000円です。これは、北海道の農家の現金収入になっていますが、実はここから、B&B協会が、離農農家、農業を辞めて空き家になった家を、東京の震災対策に参加された皆さんに、1カ月1万円から3万円の家賃で貸してくれることになりました。「6、7、8の3カ月間、北海道に来て涼みませんか」というもので、3カ月間、ただのんびりしているのではなく、花を育てたり、原木に菌を埋め込んで、山に置いてくる、きのこ作りの仕事もあるそうです。これは、ある意味、逆季節労働者です。今まで、何もすることがないんだと言っていたお年寄りが、仕事を通して、自分が生きていることが望まれているということになれば、またまた元気になれます。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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