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防災インタビューVol.16

まちづくりとは「地域力を高める運動」

放送月:2007年3月
公開月:2007年11月

宮西 悠司 氏

神戸市長田区・真野地区、まちづくりプランナー

救援物資の奪い合いを防ぐ

被災した時は、最初は皆で炊き出しをしていましたが、そのうち役所が救援物資を配布することになりました。救援物資というのは、午前中はパンで、昼からはお弁当。最初、避難してきた人が1,360人いました。ところが、その人たちは家がつぶれているか、また家が大丈夫でもガス、電気、水道がないためにご飯が作れません。そうすると、街全体がみんな被災者になるわけで、この地区に5,000人分の食料が必要なわけです。それでも真野地区では、個人で役所に救援物資を取りに行くことはやめようということを決めました。

大震災が起こると、スーパーマーケットやコンビニでは略奪が起こるのではないかと、私は心配していましたが、さすがに、それは起こりませんでした。しかし救援物資の配布現場では、最初は乾パンとか毛布とか若干の米など、普段、備蓄している物を放出するわけです。それは誰にでも、お上が分け与えるというようなものですから、タダの物はもらってくる。取りに行くほうは、若くて力の強いやつと、おばあちゃんが一人でそれをもらいに行って競争したら、どちらが勝つと思いますか。そこでは弱肉強食というか、力の強い者が勝つという、分捕り合いが起こっているわけです。だから、そこで知恵を絞りました。

ここには一人暮らしのお年寄りが700人ぐらいいると分かっていますので、その人たちそれぞれが物資をもらいに行くというのは、時間的にもロスだし、みんなまとめてもらったほうがいいんじゃないかということに気が付いたわけです。そこがプランナーのいいところなんですね。どのくらいの地区では、どういう状況にあるかということをちゃんと分かっていて、次はどういう手を打たないといけないかということをしっかり把握しています。そこで「この地区では、救援物資を各人が取りに行くのをやめるので、まとめてください」ということにしました。

朝晩の救援物資の運搬

ところが普通、住宅地では、個人は乗用車しか持っていません。5,000人分の食料を確保するためにトラックがいるわけですが、住宅地にはトラックはありません。しかし真野地区の場合は、工場が多い町ですから、トラックやなんかがあるわけです。ですから、すぐにそういうのが役に立ちました。

地震に備えるという意味では、町の姿としては、やはり純粋の住宅地というのは、もしかしたら弱いのかもしれません。トラックだとかパワーショベルとか、そういうものもないとダメだということもあるので、あらかじめ、あるところから、何かあったら借りることができるような約束をしておくとか、事前の準備をしておく必要があります。まちづくりというか、事前に準備しておくことも大事なのかもしれません。

被災者と無災者

大震災に対して、個人でできる準備というのはないです。私たちも神戸で地震がくるとは思っていませんでした。結果的に神戸では、6,400人ぐらいの人が地震で亡くなっているんです。その中で、5,000人の人は瞬間的に亡くなっています。地震は20秒ぐらいだったんですが、20秒の間に家がつぶれ、家具が倒れ、その下敷きになって死んでいる人が5,000人いるわけです。ですから、地震への備えというのは、基本的には家がつぶれないようにするというのが、大事なポイントだろうというふうに思うわけです。

耐震診断/常時微動の測定

ところが、私たちは事前にその備えをしていたかというと、していないからつぶれてしまったわけです。ですから、神戸から、横浜の市民に何を学んでほしいかと言ったら、やはり家がつぶれないようにするということです。これは個人ができる最大のことなのです。これをやらない限りは、命は守れないんです。ここのところは、ぜひやってほしいと思います。今、耐震補強ということを、横浜市も、とても力を入れて頑張っています。私たち市民は、耐震補強の重要さを神戸からぜひ学んでほしいと思います。

私は、地震の被害に遭った被災者という言葉に対して、災害の被害を受けなかった人を無災者と言っていますが、自分の家がつぶれなければ、被災者にならないで済むわけです。あなたはどちらを選びますか? 地震の際に、電気、ガスが来なくて、救援物資を食べることはあるかもしれません。でもそのときに、救援物資を配るほうに回るのか、配ってもらったのを食べるほうになるのか。その選択はどこで決まるかというと、家が地震でつぶれないかどうかということです。被災者にならなければ、ボランティア活動や、皆に奉仕することもできるわけです。このところを皆さんに、ぜひ考えてほしいと思います。自分の家がやられてしまったら被災者ですから、救援物資をもらう立場になってしまいますが、そうではなくて、救援物資を運んでいって「はい、おばあちゃん食べてください」と、そういう立場になってほしいですね。これが、神戸から学ぶ、唯一のメッセージだと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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