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防災インタビューVol.20

来るべき災害に負けないように、足下を見て我が身を正そう!

放送月:2007年8月
公開月:2008年2月

福和 伸夫 氏

名古屋大学大学院教授

高層ビルでの地震

昔と違って今の都会は随分変わりました。次々と超高層ビルが建って空が見えなくなってきました。昔、私たちが子供のころに霞が関ビルができた時に「超高層ビルは関東地震がきたって大丈夫だよ」とよく言われていました。「どうして大丈夫ですか」と聞くと、多くの人たちは「いや、地震の揺れはガタガタ揺れるから、超高層ビルのように、ゆったりと揺れる建物は、柳に風と振る舞って揺れないんだよ」と言います。われわれは高層ビルは柔らかい柔構造だからどんな揺れにも安全なんだと勘違いをさせられました。

例えば超高層ビルが地震で揺れると、館内放送で「この建物は関東地震でも大丈夫なように造ってありますから、ご心配なく」とよく言われていました。でも、このところの地震で、意外と超高層ビルがよく揺れたという報道を耳にします。これはどういうことでしょう? 昔、私たちが思っていた地震の揺れというのはガタガタというものでしたが、実は関東平野のように大きな平野では、ゆったりした周期の長い揺れが意外と長い間続くということが分かってきたのです。ゆったりした揺れの上に、ゆったり揺れやすい建物があると、時間と共にどんどん揺れが大きくなります。これを共振現象といいます。

例えば、うちわをゆったり振るときには、手を大きく持ってやります。イライラしているときは、短めに持ってパタパタパタってやりますよね。これも共振現象なのです。ということは、背の低い建物はカタカタと揺れ、背の高い建物はゆったり、ゆったり揺れるわけです。もしも地面の揺れがゆったり、ゆったりだったとすると、同じようにゆったりよく揺れる背の高い建物は、すごく大きく揺れてしまいます。僕たち建築屋は設計する時に大体、建物の高さの1パーセントぐらい、100分の1ぐらいは揺れることを考えて設計しています。例えば250メートルの建物だと2.5メートル揺れることになります。右へ2.5メートル、左へ2.5メートル、5秒ぐらいの間隔で往復するのです。往復5メートルを5秒で何度も往復してみてください。どんな揺れか体感できると思います。高い建物に居住すると言うことは、そのくらいの揺れを覚悟しておかないといけないということなのです。このように考えると、エレベーターの問題、建物の上の方の家具の固定の問題が、とても大事だということが分かってきます。われわれ、高層ビルはなるべく安全なように造っていますが、よく揺れるということに対しては、無対策の建物が多いのです。高層マンションに住みたい方は、揺れについてはある程度覚悟を決めてお買い求めいただきたいと思います。高層マンションは、同じ土地の面積の上に沢山の部屋があるので、相対的に土地の値段が安くなります。駅にも近くて便利です。たくさんの人が住んでいるので、1階にはいろいろなお店が入ります。そして見晴らしも良いので、多少の優越感もあります。一方で、高層難民になってしまう危険性もあります。都会にお住まいの方は、ぜひそんなことも頭に入れておいて、住宅を選択してほしいと思います。

緊急地震速報について

突然、緊急地震速報を前にしたときどう行動できるか?

10月1日から始まった緊急地震速報の話を少しします。先ほどお話しした高層ビルのエレベーターについて考えてみると、高層ビルというのはその性質上、揺れ始めてから本当に大きく揺れるまでに時間がかかります。ですが、多くのエレベータの中には、エレベータの位置によって建物と共振してしまうものが有り、意外と早くから揺れるものもあります。この揺れは長周期の揺れで、地震計が感知するのには苦手な揺れです。早く止めてあげないと閉じ込められてしまいますので、揺れ始める前に伝えてくれる緊急地震速報がとても役に立ちます。

緊急地震速報というのは、地震が起きたときに震源の近くの地震計で、最初に伝わるガタガタガタというP波の揺れを検知します。このガタガタの揺れは秒速7キロぐらいでやってきます。例えば震源から10キロぐらいの所に、地震計が置いてあったら、1.5秒でガタガタの揺れをチェックできます。これがP波です。例えば地震が伊豆半島であったとします。伊豆半島から東京まで相当距離があります。例えば100キロあったとしましょう。このガタガタの揺れは秒速7秒で来るから、100キロあれば15秒です。ということは、15秒引く1.5秒は13.5秒あるということで、意外と時間が稼げます。それはガタガタの揺れです。地震の時の揺れは、最初にガタガタ、その後ゆさゆさと強い揺れになります。ゆさゆさという揺れは、S波と言いますが、これは秒速3、4キロで伝わってきます。そうすると100キロ離れていると、25~30秒あるわけです。もしも震源から非常に近いところでP波のガタガタの揺れをキャッチして、それを1.5秒~2秒ぐらいで処理をして、東京にいる人に「もうすぐ揺れるよ」と教えてあげれば、強い揺れまでに20秒ぐらい時間が残ります。この20秒間を有効に活用しようとするのが緊急地震速報です。短い時間ですが、自分の命を守る行動、危険なものを止める行動ができます。ただ、今の理屈から分かることは、すごく近い所で地震が起きてしまうと、強い揺れが到達するのに間に合わないということです。例えば、新潟県中越沖地震の時には震源に近かった柏崎や刈羽では、緊急地震速報は間に合わなかったのです。でも、同じ震度6強があった場所でも、少し離れていた飯縄という所では、20秒弱の時間が稼げたそうです。さらに東京では、揺れが到達する前に電車が止まりました。建設現場では、クレーンを事前に止めることができたようです。このように考えてみると、完全では有りませんが、利用の仕方によって素晴らしい武器になりそうです。震源直近のように、多くの建物が倒壊し多数の人が命を落とす強い揺れに対しては、有効活用が難しいかもしれませんが、ちょっと離れている所でけがを防いだり、危険物を緊急停止するという意味では使えそうです。

ただし、いろいろな制約条件があることは知っておく必要があります。この東急沿線では、イッツコムから緊急地震速報が皆さんに届けられるようになるそうです。これは、テレビやラジオを通してもらう情報より活用しやすい情報です。テレビでは詳細な情報を伝えることは難しいので、「もうすぐ地震が起きます、強い揺れに注意して下さい」という情報だけです。この情報では、速やかに安全な場所に移動するしかありません。これに対して、イッツコムから提供される情報には、「あと何秒後にあなたの家は震度幾つぐらいで揺れます」という情報が加わります。この場合には、残り時間や揺れの強さよって行動を変えることもできます。ただ、この緊急地震速報を有効に活用しようとすると、事前の備えが大事になります。まず、逃げられる安全な場所がないといけません。そのためには、まず建物が壊れないことが前提になります。短い時間では屋外に出ることはできないので、建物が壊れないことが重要です。それから家具が倒れてきてしまったら安全な空間が無くなりますから、家具を留めておくことも必要です。家具を留めておいて、壊れない家にしておくことが、この素晴らしく画期的な情報「緊急地震速報」を最大限活用する最低限必要な条件だ、ということも覚えておいてほしいです。緊急地震速報はとても役に立つ情報ですので、ぜひ皆さん、これを最大限活用してほしいと思います。この緊急地震速報を受ける端末についての情報は、イッツコムに電話すれば説明をしてもらえるようですし、ホームページにも載っているみたいです。一度ごらんになってはどうでしょうか。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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