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防災インタビューVol.26

人と環境に優しい「暮らしの中の防災」

放送月:2008年1月
公開月:2008年8月

福井 義幸 氏

平塚・暮らしと耐震協議会 副理事長

ワイヤーを使った耐震補強

ワイヤーを使った耐震補強・ブレース工法

新しく始めた耐震補強は、建築基準法の構造材としては今まで使われていなかったワイヤーを使いました。ワイヤーは土木のほうでは橋梁に使用していました。例えば横浜のベイブリッジや鶴見のつばさ橋では、ワイヤーを使って橋がしっかりと造られています。あの橋は常に揺れているわけですが、いくら揺れても落ちません。家は地震が来たら揺れますが、揺れたときにその家を守ってくれるのは何でしょうか。それはワイヤーです。ワイヤーは揺れの衝撃を吸収してくれるのです。しかし衝撃を吸収してくれるワイヤーというのは、建築の中では構造材として認められていません。その意味で、これは建築基準法を無視しているわけです。これはある意味、むちゃくちゃをやっているように見えると思います。そのむちゃくちゃがみんなに取り上げられたというのが、すごくうれしいことです。

2004年の4月に「防災まちづくりの会」というのが平塚でありまして、そこのフォーラムに市長が来られました。そこで市長が「平塚市は助成金を出します」ということを公言されました。それから建築指導課の職員を中心に、平塚市は大変だったと思います。それから激動の1年みたいなのがありました。基本的に技術者としては、ワイヤーを使っている工法というのは認められないわけです。構造計算もできないわけですから、計算も成り立たない。実験をやるしかありませんでした。しかし、実験はとても大きな金が掛かるので、なかなかできません。そこで静岡の建築専門学校に実験施設があるというので、ボランティア価格で実験を4回ぐらいやってもらいました。そのデータを基にして、大丈夫だということを証明できたので、やっと平塚市が助成対象にしてくれたということです。これに1年間かかっています。建築の構造材ではワイヤーを認めるわけにはいかないというのは当たり前の話ですが、なぜこのようなことが認められないのかという市民の力、市民の声が後押ししてくれました。その結果だと思っています。ありがたいことです。

平塚耐震補強推進協議会の設立へ

すずらん設立時のスタッフ

このワイヤーを使った工法は耐震補強を推進する道具として平塚市で活用され、この推進のシステムが2007年11月に内閣総理大臣賞を頂くことになったわけですが、その前に壮大なストーリーがあります。この工法は「耐震後付ブレース工法」といいますが、その工法でやったところがモデルハウスになりました。そのモデルハウスに、専門家を含めていろいろな方が見に来てくださり、新聞やマスコミなどが取り上げてくれたために、専門家や関係者を含めて、見学者が1年間で200人を超えました。

そういう経過をたどって、耐震補強を進めて行く上で、どういうふうにしたらもっと進んでいくだろうかということを考えました。何が分からないのだろう、何で進まないのだろうと考えていくと、その理由はたったの4つでした。1つ目は、耐震補強するのに、その費用が分からないこと。2つ目は、どんな工事か分からないということ。3つ目は、どんな工事か分からないから、工事が煩わしいのではないかというようなマイナスのことを考える方が多いということ。4つ目は依頼先が分からないということです。この4つを解消するのにどうすればいいかを考えたときに、そういうのができる市民活動団体でもいいので、そういうシステムをつくって、みんなで集まってやろうじゃないかという話になりました。それで「平塚耐震補強推進協議会」という任意団体ができました。

その任意団体の中に5つの部会があります。まず耐震診断をするお医者さんの耐震部会。その次は耐震のための計画をしなければいけません。計画をしたらお薬を与えたり、手術をするというような処方をしなければいけないわけですから、その人たちの計画部会。計画をした後、工事をやる人の工事部会。工事しっ放しでは駄目だから、点検や評価をしなければいけないので評価点検部会。ここまでできれば工事は終わりですが、あとは黙っているだけでは広がらないので広報しなければいけません。そのための広報部会と、5つの部会をつくったのです。この5つの部会を町ぐるみでやろうと考えて、それぞれの専門家の人たち、やりたい人たちがその中に入ってくれるような、そういうシステムを平塚の中でつくってしまいました。そこに気持ちのある人たちが集まって取り組んでいく中で、先ほど言った耐震後付ブレース工法がきっかけになったというのは、まず間違いのないところです。

そういういきさつがありますが、この5つの部会は皆それぞれが独立しています。お互いに相手の言うことは聞かないし、おれたちは頑張っているんだというような思いがありますが、みんなすごく仲がいいのです。1カ月に1回必ず定例会を持って、お互いに全部さらけ出して、お互いの悪いところを指摘しながら、これを直しなさい、あれを直しなさいということをずっと言い続けて、もう4年になります。最初のころは皆の見える場所で話し合いをしようということで、平塚には市民活動センターというのが駅前にあるのですが、そこのフリースペースで定例会をやっていました。「みんな聞いてよ、聞いてよ」ということで、皆で楽しみながらしっかりしたものを造っていこうと活動したのがきっかけで、先ほど言った内閣総理大臣賞に結び付きました。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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