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防災インタビューVol.28

防災・福祉を核として地域コミュニティの再構築を

放送月:2008年3月
公開月:2008年10月

金澤 淳 氏

防災まちづくりの会・東久留米代表

総合学習で学ぶ「防災」

ゆとり学習が取り入れられたときに、文部省から総合的に学習することの大事さが説かれ、年間を通して総合学習が取り入れられました。これは各学校が独自に主題を選ぶことができるようになっています。学年ごとに環境であるとか、防災であるとか、あるいは見学であるとか、いろいろなスケジュールが立てられています。

五小総合学習・発表風景

その中で私どもは、市立第五小学校の4年生のところに、3年ほど続けて防災学習のお手伝いに行っています。この学校では、4年生が防災学習を勉強した後、それを3年生に教えるというもので、われわれは「世代を引き継ぐ防災教育」と称しております。平成19年度の例ですと、われわれは2学期の間に4年生の教室に2回ほど行きました。第1週目は「地震はなぜ起こるか」とか「ボランティアとは何か」から始まり、防災一般の知識を得てもらいました。第2週目には防災学習のヒントを与えます。例えば第五小学校の地域には大きなマンションがたくさんあるのですが、そこに住んでいる子どもたちには、マンションの防災上の問題点は何かということを考えてもらいます。「停電になったらどうする?」「エレベーターが止まったらどうする?」「断水になったら20階からどうする?」というような質問を出し、ただ教えるのではなく、そのことを調べなさいという宿題を出します。また逆に戸建ての多い地域生徒たちに対しては、「学校が避難所だよね。そこへ来るまでに危ない点がどこにあるのかな?」ということについて質問します。例えば自動販売機、ブロック塀、大谷石塀などのある場所についてです。1978年の宮城沖地震の時に、ブロック塀が倒れたことによって小学生が11人も死んでいます。そんなこともあって、「通学路の危険性がどこにあるかというのを勉強しなさい」「家の中で地震が起こったらどうするか」というようなことをお父さんとお母さんと一緒に話し合いなさいというような課題を出します。そのほかには「家の中で防災備品として普段備えておくものには何が必要なのか」「171の安否確認のしかたについて、この電話はどういう仕組みになっているかを調べなさい」とか、そんなことを生徒たちにお話しします。そして次の冬休みの間にこれらを調べてきなさいという宿題になるわけです。

4年生から3年生へのプレゼンテーション

小学生にとっても、このような宿題を通して学び、それを下の学年の子にプレゼンテーションをして発表するというのは、自分が教えなければいけないと思えば一生懸命勉強せざるを得なくなりますので、非常に良い仕組みだと思っています。

この発表会は学校公開日にやります。3年生に教える4年生は、3年生の後ろに父兄が控えているから、よけい緊張するわけです。そんな中で、みんないろいろな工夫をして発表します。大きなボール紙のついたてみたいなものに、自分たちが調べたことを、あるグループは事細かに、あるグループは大きな字で書いて、いろいろなテーマに沿って発表するわけです。これが素晴らしいと思うのは、まず発表する際にとんがり帽子をかぶったり、カラフルないでたちをしたり、発表の内容に円グラフや棒グラフを取り入れたりしていることです。その基のデータを取るために、近所のおじさんたちにインタビューに行きます。子どもたちはアンケートをやったりしてデータを取って、それをグラフにして3年生に教えるわけですけれども、3年生にさらに深く興味づける、印象づけるために何をするかといったら、クイズを盛り込んでいるのです。「こういうときにはどうなると思う?」とか「答えはAかBかCか?」とか、手を挙げさせたりもしています。本当に教える側に立つと、いろいろなことが考えつくのだというのがよく分かります。

五小総合学習防災

教えることは最大の学びになるということの大変良い例であると思いますが、同時に今私どもが恐れているのは、文部省が総合学習の時間を減らすことを検討していることです。これは世代を引き継ぐ防災教育ということで、ぜひ何とかずっと残していただきたいと考えております。

実際に大人にインタビューしたり、ブロック塀を調べたり、校外に出て実際の場でいろいろ体験してきたことを通して、家の人と家庭で地震があったらどうするかという話し合いができます。また子どもたちから「防災でこういうことを知っているか」というインタビューを突然受けた大人たちも、後になって「あれはそういうことだったのか」と分かることで、このことを基に地域・家庭の防災の輪が広がると思います。

「防災まちづくりの会 東久留米」の夢

なかなか実現はしないのですが、夢の一端は「東久留米を安全安心で住みよい町にしたい」ということです。そのためにはどうしたらいいかということで、「地域コミュニティーの再構築、防災・福祉を核としたまちづくりを」ということを、われわれは標語として掲げています。

例えば、災害時の要援護者というのはどんなイメージがわきますでしょうか? 普通は身体障害者とか高齢者ということが一番に目に浮かんできますが、災害時にけがをした方も要援護者となります。「それでは、災害時要援護者をどうしますか?」といろいろな出前講座のときに聞きますが、みんな自分は助かると思っているので、「私が助けます」と言うのです。そこで「助けられる立場に立たないためには、事前にすることがありますよ」というお話をすると同時に、「高齢者」のことも話します。私どもが高齢者についての説明をすると、「自分は高齢者ではないから助ける側だ」と思っているわけですが、今は高齢者ではないと思っておられますが、5年後、10年後、あなたは高齢者になってもまだ人から助けてもらわなくても済むと思いますかと尋ねます。われわれ高齢者は、運がよければ大地震が来る前に死ねます。でも運が悪ければ、けがをしてしまいます。助けてもらわなきゃいけない立場になるわけです。このように災害時要援護者について考えていくとことは、町の福祉を考えることになるわけです。

先ほど、われわれは小学生に防災教育をしていくことの大事さをお話ししましたが、高齢者は皆、今の小学生が大人になってから払う年金から助けてもらわなければいけないわけですから、今のうちに小学生を学校だけでなくて、地域で支える仕組みをつくることが必要だと思っています。そのためにわれわれは将来、練馬、板橋、世田谷区のような学校協議会をつくって、地域でお互いに助け合うコミュニティーをつくっていきたいと、こんなふうに考えています。

自治体と市民の防災意識は車の両輪

自治体で防災が進んでいるか進んでいないかは、自治体の考え方や予算があるかどうかだけでは決まりません。市民の防災意識がしっかりしていないといけないわけです。その意味では、自治体と市民の防災意識は車の両輪の関係にあると思っています。車の両輪がしっかり同じタイミングで動かないと、真っすぐに進んでいかないのと同じように、防災もうまく進んでいきません。

そこで悩みが1つあるのですが、実は防災の出前講座に行くと、「なんだ、行政はそんなこともやっていないのか、けしからん」ということで、今度は市民の皆さんが防災担当のところへ行ってクレームを言うことがあります。防災担当から見ると、僕らの会が出前講座で「市民をたきつけて言わせている、けしからん」というふうに思われているのです。これが悩みですね。

「防災まちづくり学校」に入っていただいた生徒には、そこはきっちり教えています。市民の意識がしっかりしない限り、市役所の意識もしっかりしないし行政も進まないということは分かってくれます。特に大地震の場合、3日間、行政は何もできないから、自分の身は自分で守らなきゃ駄目よということは、学校の卒業生は全部分かってくれています。このことは最後のアンケートで非常にはっきりしていますが、出前講座だとそのような悩みがあります。

NPOと市との協働

行政は今のところ、どこも非常に財政難で、リストラもしていますが、その中で今まで市が直接やっていた仕事を、NPOに委託するという考え方があります。ある意味で、偽NPOみたいなのが現われて、簡単に委託していくというところがあるわけですが、われわれはこれは少し違うのではないかと思っています。

どういうことかと申し上げると、行政というのは機会均等であるとか、平等でなければいけないというところが考え方の基本になっています。一方、市民のほうは、例えばこれだけ少子化になり、お母さん方は共働きで外に出なければならなくなると、地域が子どもを守らなければいけないというようなニーズがどんどん出てきます。こういうようなことには市役所は、臨機応変に対応はできません。そういうところこそNPOと一緒になって、市と協働でやっていくことが重要です。これが本来のNPOと行政の、これからの役目ではないかと思っています。

私は学生時代、経済学の勉強をしましたが、当時の経済学者にピーター・ドラッカーという人がいます。この人が亡くなる前の数年間、「人間はコミュニティーなしでは生きられない。ところが現代社会に必要なコミュニティーは失われてしまった。それをつくるのは政府でもない、企業でもない、NPOだ。これからの世界を変えるのはNPOだ」ということを言っています。私どもはここのところに、いたく感動しておりまして、われわれ自身はNPOにはしていませんが、市と協働して地域コミュニティーの再構築を図りたいと思っています。これが私の夢です。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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