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防災インタビューVol.32

防災を大いに語り、大いに考えよう!

放送月:2008年7月
公開月:2009年2月

上原 美都男 氏

横浜市危機管理監

防災は学習と訓練から

人に害をもたらす災いをいかに回避するか、これが防災です。防災はいわば防犯や防衛と並んで危機管理の1つです。危機管理は危機意識の問題ですから、防災でも意識が一番大切です。緊張感を長く維持するためには知恵が必要です。知恵をつけるのは学習と訓練だろうと思っています。

防災に対する意識レベルを高めるには、まず絶えず自分の意識を自分で刺激し続けることです。それから互いに指摘しあえる仲間を持つことです。それから情報を絶えず集めて学習し続けることです。その際、他山の石から学ぶ謙虚さを持つことも重要です。その後、あの手この手で訓練をし続けることです。結局のところ、自分を守るのは自分しかない。自分の家族を守るのも自分しかないと考えることだと思います。他人に頼っていると、いつまでも自分の意識レベルは上がってきません。

防災を広く考える

私からの1つの提案ですが、防災というのを限定的に考えずに広くとらえてほしいと思っています。これまで防災と防犯の類似性というお話をしました。それに加えて、もし他国から武力攻撃されたら、これは人にとっては最大の災いですね。ですから戦災と言います。それを災いだと考えれば、防災も国の防衛に通じる概念なんです。ですから防災と防犯と防衛。この3つの防の共通項、これが何かと言いますと、いずれもこの世で最も価値ある人の命を守っていこうということなんです。

ですから災害という概念を限定的に考えずに、もっと広くとらえることで、災害が私の担当している危機というものと同一の概念になります。ここで大切なことは、すべて個人を中心に考えていただくことです。自分の命をどうやって自分で守るのか、ということからすべてを発想すべきです。そうしないと防災が国や行政からの単なる押し付けに終わってしまいます。人に言われてやるだけだったら、なかなか自分のものにはなりません。自分で苦労して体験することでしか防災はあり得ない、こういうことだと思います。

危機管理体制を整えるということ

私にとって横浜市の危機管理体制を整えることは、第1目標です。危機管理には「人、物、情報、場所、計画、訓練、広報」という7つの構成要素があると思っていまして、これらの構成要素がうまく組み合わさって理想の危機管理ができるのです。ですからその7つの要素をうまく組み合わせながら、それぞれを活性化していくところに危機管理の本質であるリーダーシップがあるのだろうと思っています。まず最初の「人」ですが、何をやるにも人が一番重要です。「人は石垣、人は城」というのは武田信玄の言葉ですが、しかるべき人がきちんとそろっているのか、しっかりとした意識を持っているのか、ちゃんと人同士の連携が取れているのか、ということを絶えずチェックしていく必要があります。3年前、私が横浜市に来る1年前ですが、千葉県に北西部地震というのがありました。この時、横浜市は震度5弱でした。ほとんど被害はなかったのですが、千葉県や東京で鉄道が少し止まったり、一部は停電したりしました。このとき横浜市防災計画では、震度5弱ならば全職員が役所に参集するようになっているのですが、2万8千人の職員の中で集まったのは1/4の7千人にしかすぎなかった。こういう事実がありまして、やはり人がしっかりした危機意識を持っているかどうかというのが一番のポイントだろうと思っています。

それからもう1つ、今やっていること、やろうとしていることですが、一昨年8月に私が横浜に来まして、その10月に緊急参集チームというのを横浜市役所内につくりました。このチームは36所属134人で構成されていまして、20種類の危機によって担当がそれぞれ決まって、20グループに分けられています。全員が公用の携帯とポケベルを持っていますので、危機管理室からの参集連絡があったときには、60分以内に市役所に集合して、被害の情報収集と、取りあえずの緊急対策の立案に当たることになっています。特にこのチームは大変厳しくて、横浜市内で震度3になった場合は、21人いる地震チームがすぐ召集されてしまいます。昨年も1年間で10回も集まりました。何度も招集されることで、だんだん心構えができてくるんです。まずしかるべき人がしっかりした意識を持つこと。これによって人同士の連携を作っていくことから始めているわけです。それから各区役所は昨年4月から1人ずつ危機管理担当係長というのを置き始めています。もう12区に置かれましたが、今ようやくこういった、人を通じて人に影響を与えようというこの戦略が、徐々に功を奏していると思っています。

危機管理センター

次に場所の話をします。今、市役所の5階に危機管理センターというのを平成19年度と20年度の2カ年の予算でつくっているところです。これはいざ危機が発生したときに、危機管理室員が35人いますが、それから先ほどの緊急参集チーム134人、これらがさっと集まって初期の対応ができるように、現場の被災状況が18区役所、土木事務所、保健所、消防署、関係機関等々から入ってくる情報システムをここに整備しています。今後は災害対策本部室、当直室、関係機関執務室、備蓄庫、部外対応室などが出来上がる予定です。危機対応には、まず情報が入ることが大切です。危機管理センターはその場所、つまりコントロールセンターになるということですから、併せて対策を指示するオペレーションルームにもなるわけです。このような場所が360万政令都市の横浜市に今までなかったのが不思議なぐらいですが、来年3月末にようやくその場所が整って、情報が集約されることになるだろうと思います。

現在緊急参集チームは134人いますが、 一昨年の10月20日に指名して、昨年4月に半分が異動して、今年の4月にまた半分が異動しました。しかし、震度3で集まることになっているので、年に3、4回は呼ばれることになります。いつ呼ばれるのかも分からないので、「明日にも異動させてください」と皆言っています。しかし、このように集まってくることこそが、訓練になるということです。

横浜危機管理センター

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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