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防災インタビューVol.34

緊急地震速報を最大限に活かすには?

放送月:2008年9月
公開月:2009年4月

大原 美保 氏

東京大学大学院准教授

岩手・宮城内陸地震の際の緊急地震速報

2007年10月1日から緊急地震速報の一般提供が開始され、2008年の6月14日午前8時43分45秒に岩手宮城内陸地震が発生した際にも、緊急地震速報が出されました。これは10月から数えて3回目に出されました緊急地震速報の一般利用になります。

報道などでは緊急地震速報が間に合っていなかったのではないかという議論も出ていましたが、実際に、まず最初の地震計で地震が検知されたのは8時43分51秒です。一般提供の情報が出されたのが8時43分55秒。間に合っていないと言われていますが、揺れを検知してから4秒後にはもう速報が出ています。しかしながら、やはり今回の地震は直下型の地震であったということで、被害が報告された宮城県や岩手県の地方では、揺れとほぼ同時にこの情報が出されまして、余裕時間が0秒、0.5秒ぐらいだった所もあり、間に合っていないという報道もかなりなされました。しかしながら、もう少し離れた宮城県の地域や山形県、岩手県でも北部の方などでは、情報が出されてから揺れが到達するまでの余裕時間が15秒や20秒ぐらいあった所もありました。そのような場所では、テレビなどでそれを聞いたので身構えたとか、安全な所に避難したというような行動も確認されています。

直下型の地震の場合には、この緊急地震速報の余裕時間がほとんど取れないことは、技術的に初めから分かっていたことです。マスコミの話を聞いていると、今回初めてそういった状況が確認されて、新たに指摘された課題だというようにたたかれているのですが、技術者側としては直下型地震の際に余裕時間がないことはあらかじめ分かっている上で、やはりそういった余裕時間が稼げる所では人的被害や物的被害を軽減できる効果が高いということで、活用しようという方向で出している情報なわけです。従って、ちょっとマスコミの論調については私自身が納得いかない気持ちもあります。

緊急地震速報をスタートした時に、気象庁や技術者が認識していたこのような直下型地震の場合の課題を、もう少し市民の皆さんにきちんと伝えていかなければいけなかったのですが、やはりなかなかこのような技術的な課題が皆さんに伝わっていなかったということはあります。皆さんに伝えていくことは難しいことですが「まだまだこのような技術的課題があるけど、別の面でみたメリットを期待したいので緊急地震速報を発令します」ということが周知されて理解されなければいけないと思っています。

気象庁が発表した岩手・宮城内陸地震の分布図

緊急地震速報について知っておいていただきたいこと

緊急地震速報について、幾つか皆さんに知っておいていただきたいことがあります。まず緊急地震速報というのは、地震発生直後に震源に近い地震計でとらえた情報から震度や規模などを推定して、揺れが来る前に知らせるという情報ですが、1個の地震計で検知された後に、2個目、3個目、4個目と、どんどん多くの場所で地震が観測されて、そのたびに情報を繰り返し計算するという仕組みです。ということで、最初の情報よりも経過とともに、どんどん緊急地震速報の精度というのは高まっていくものなのです。

岩手宮城内陸地震の場合も、1分間に10回ぐらい緊急地震速報が計算されて、新たな値が出されています。ということで、そのように一度出された緊急地震速報の値は変わる可能性があるというのも知っておいていただきたいと思います。その理由としては、大きな地震ほど断層が破壊されるのに時間がかかるということです。岩手・宮城内陸地震は直下型地震だったので、断層の破壊現象による揺れが発生しているのですが、その断層の破壊現象が終了するまでには10秒から15秒ぐらいの時間がかかっています。揺れが検知されてから4秒後には一般提供が行われましたが、その間も、もっと断層が割れていっています。そうすると、割れ始めには震度が小さかったとしても、10秒、15秒かけて地下の深い所で断層が破壊される間に、揺れというのは大きくなっていきます。

このようなことで緊急地震速報の値、特に推定震度というのはどんどん変わっていくかもしれません。そういう理由から、緊急地震速報の一般提供では、推定震度というのが言われません。しかしながら家庭用端末などによる高度利用では、震度なども知ることができます。また家庭用端末機で自分のところの震度が出るかもしれませんが、その家が局所的に地盤が軟らかい、揺れやすい所に立っていた場合は、推定震度もその通りではないかもしれません。特にご注意いただきたいのは、ご自宅がマンションの場合は、その推定震度の揺れではない可能性があります。震度4で高層マンションの上の方では震度5ぐらいになってしまう場合もありますので、自分の状況を考えて「自分の所はもっと揺れやすいんだ」というようなことを深く理解していただけたらと思っています。

緊急地震速報が出る前に

緊急地震速報に全部頼っていれば防災は大丈夫ということではありません。地震が来ることが分かったとしても、その数秒から数十秒後に大きな地震が来るということですので、そもそも家の耐震性が低かったり、家の家具が全然転倒防止対策されていなければ、いくら数秒前に揺れが来るのが分かっていても、どうしようもないわけです。

実際の身の回りの被害を減らすためには、まず最初に、家自体の対策、室内の対策、そういうものがなされた上で、緊急地震速報を聞いた後に上手な対応をすれば、もっともっと被害が減る可能性があるということです。緊急地震速報はそういった情報であり「緊急地震速報さえ出ればもう防災は大丈夫」というわけではないので、ご注意いただきたいと思います。

実際の身の回りの被害を減らすためには、被害を最小限に留める努力を怠らないこと

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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