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防災インタビューVol.36

地震災害に学ぶ-地域の絆と防災-

放送月:2008年11月
公開月:2009年6月

荏本 孝久 氏

神奈川大学工学部建築学科教授

情報の公開と共有化

防災には情報の公開と共有化が重要です。国や我々が住んでいる場所の行政が、いろいろな研究成果や情報を公開はしているのですが、それがなかなか地域の住民の方たちに理解できていなかったり、広がっていかないという状況があります。そうしますと地域の防災活動がなかなかできないということが起こり得ます。

私たちは「防災塾・だるま」の活動などを通して、なるべくその地域に密着した災害に関連する情報をホームページで公開したり、あるいは会に来ていただいた方たちに公開して、お話ししていくことを進めようとしています。

やはり地域の人たちは、ご自分たちの住んでいる所の地盤の状況がどうなのかということを、非常に細かく知りたいということがあります。それなので、その地盤の情報をなるべく細かい地域として認識できるような地図を、コンピューターを使ってデジタル化をしています。また、それに基づいて地面の揺れやすさや、どういう地形の所にあって、どういう状況の所に住んでいるのかということも分かるような地図を作って、それを公開するということをしています。これは「防災塾・だるま」のホームページにアップしまして、どなたでも見られるようにしています。もし必要があれば声を掛けていただければ、来ていただいて説明をしたり、あるいは我々が行って説明をしたりとか、双方向の情報共有化をしたいと考えています。

この地図は、神奈川県全体を市や町などの単位で区分して見られるようになっています。
それに基づいていろいろな議論を地域でやっていただいて、先ほどお話ししましたような認識を、どういう所に住んでいるのかという認識、あるいは興味を持っていただきたいと思っています。

阪神・淡路大震災、その後

阪神淡路大震災は、やはりあれだけ多くの犠牲者を出して、建物の被害、構造物の被害も出した大きな災害であったわけで、言ってみればこの地震を境に、日本の防災対策、防災の仕組みが非常に変わったという災害でもあったわけです。神戸の方たち、被災された方たちにとっては今13年たっていますが、心の中ではまだまだ災害が続いているという状況も非常に多いと思います。

ちょうど震災後10年たった2005年1月17日に「防災塾・だるま」の方たちと一緒に、追悼の会に出ました。私自身、何回も何回も神戸には20回、30回近く行っていますが、この会にはまだ一度も出たことがありませんでした。やはり出てみますと、神戸の叫びというものをひしひしと感じました。特に10年という節目もあって、盛大にやられたこともあるのかもしれませんが、5時46分という未明に多くの人々が集まって、ろうそくの火の中で、亡くなられた方の追悼の会をされたということで、非常に印象に残りました。神戸の祈りといいますか、神戸の記憶はそういう形で伝承していくのだろうと思いますが、ただやはり時間とともに神戸の震災の記憶もだんだん薄れているというようなことも言われていますし、翻ってみると関東地方で、我々が住んでいる横浜、東京の方ではほとんど忘れられているというのも実情かと思います。そういう意味では、何回もお話ししているように、そういう災害の記憶というのは伝承していかなければいけないのではないかと思います。

実際、「防災塾・だるま」でも防災に非常に興味を持たれている方たちが集まって、いろいろ話をするのですが、やはり正確に神戸で、本当にどういうことが起こったかということをきちっと認識されている方はそう多くはないです。やはり神戸のいろいろな記録、ビデオなどが身近で見られるところがありますので、そういうものを手にして、あるいは目で見ていただければと思います。

震災10年を迎えた「1.17神戸の集い」(2005年1月17日石塚道義氏撮影・提供)

情報交換とネットワークの重要性

防災については、やはりまず、その地域の実情、状況をよく認識して理解することに興味を持っていただきたいと思います。それができれば、災害の時にどういうことになるのかというイメージがわいてくると思うのです。そうすると自然に防災に関心ができて、防災対策を進めていけるようになるのだろうと思っています。

前にも申し上げましたように、行政は行政で防災対策をしっかり進めているわけですけれども、そのやろうとしていることの細かい情報が、地域の住民の方たちとうまく共有化されていない。そこが一番大きな問題だと思うのです。なので、私たちがやっている「防災塾・だるま」も、そこのところを何とか解決するように情報交換とネットワークをつくりながら、行政とその地域を結び付けるような接着剤的な活動をやっていこうとしています。

具体的にどういうことを進めていけばいいのかということになると、これもまた非常に広い範囲ですから難しいのですが、行政サイドもやはり住民の方たちの活動と情報を共有化することによって、新たな展開といいますか、目が開けてくるし、住民の側も行政が何をやろうとしているかということが理解できれば、自分たちが自分たちのことを守らなければいけないという、今言われている自助、共助という部分の活動がどんどん、どんどん広がってくると思います。自分たちのところで災害を起こさないようにするということは、しいて言えば地域の災害を減らしますし、災害全体を減らすことにつながるのだという認識を持っていただきたいです。

「何もやらない、行政がやってくれるのを待っているんだ」というのは、もう今の時代では良くないと言いますか、かえって災害を助長してしまうような形になります。積極的に行動するのは、なかなか難しいかもしれませんが、ポジティブに防災に対する認識、関心を持っていただければいいのではないかなと思います。それを常日ごろ、日常でそういうことに関心を持っていただき、頭のどこか片隅に、災害が起きる可能性の高い地域に住んでいるのだということを認識していただければいいのではないかと思います。

「1.17神戸の集い」“神戸の祈り”(2005年1月17日石塚道義氏撮影・提供)

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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