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防災インタビューVol.51

災害リスク情報の共有化 ~防災科学技術研究所での地震防災の研究について~

放送月:2010年2月
公開月:2010年9月

藤原 広行 氏

防災技術科学研究所プロジェクトディレクター

地震動の予測

「地震動の予測」というのは、あまり耳慣れない言葉かと思いますが、地震の予測とほぼ同じ意味で、どのくらいの大きさの地震で、どれくらいの強さで地面が揺れるのかということを予測しようとしています。多くの人にとっては「地震がいつ起きるのか」ということが一番の関心事かもしれませんが、なかなかそれをきちんと予測する地震の予知の技術はまだ完成していません。
「地震が起きたら自分の住んでいる所がどれくらいの強さで揺れるから、どのくらいの備えをすればよいのか」、そういった知見をまずは広めて、地震ハザードマップを作ったり、それに基づいたリスク評価で対策をすることが大切です。私は、そのための基礎資料を作るための研究をやっています。地震動の予測のための技術開発というのは、この10年間ぐらいのものです。これは先週お話しした地震観測網の整備で得られた大量の地震動の記録を解析することによって進んできました。日本の中での地震動の予測率というのは、世界でも最先端の非常に優れたものが使えるようになってきているという状況です。
いつ地震が起こるかを予測することはなかなか難しいですが、海溝型の地震だと、東海地震、東南海地震、宮城県沖地震など、結構名前の付いた地震があります。そういう地震は大体100年とか30年とかいう周期で繰り返していて、このように繰り返す地震については、また次にも同じようなタイプの地震が起こる可能性が高いということです。これらの地震はいつ起こるか分からないにしても、どのくらいの揺れに見舞われるのか、どういった被害が起こるのかという見積もりについては、ある程度いろいろな情報を集め、新しい技術に基づいて精度の高い予測が今、できつつあるような状況です。
例えば関東ですと1923年、関東大震災を引き起こしたマグニチュード8クラスの大きな地震がありました。それと同じような大きな地震は、今の予測では、すぐには来ないのではないかと言われています。しかし、それより一回り小さなマグニチュード7クラスの地震ですと、もう本当に関東平野の真下のどこで起こってもおかしくないとも言われています。ですから、この辺りに住む人にとっては、このような地震が起こったときに、一体どういうことが起こるのか、それに対してどれくらいの備えをすればよいのかという情報がないと、具体的なアクションがなかなか起こしづらいと思います。そのためのいろいろな予測の研究を今やっているという状況です。

地震のエネルギー

過去を振り返ってみても、明治以降は今の関東地震以来はあまり大きな地震はありませんが、江戸時代まで含めると結構あります。やはり東京を含め、この南関東地域というのは過去、大きな地震に繰り返し見舞われていた所です。ですから将来も多分それは同じく繰り返す、そういう宿命に我々はあるのだと思います。
震度3や4ぐらいの小さい地震が神奈川や東京でもありますので「これを繰り返すことで、地震のエネルギーが放出されるのではないか」とよく言われますが、これは間違いです。地震のエネルギーというのは、マグニチュードが2増えると大体千倍になります。ところが地震の発生までのコースは、マグニチュードが2増えても、百倍ぐらいにしかなりません。ということは、小さな地震がいくら起こっても、大きな地震1回で開放されるエネルギーは残ってしまいます。ですから、今までの地震に対する研究の結果から、必然的に、大きな地震が起こり得る地域では、いずれ大きな地震が起こらないと、持っているエネルギーは全部開放されないということが分かっています。

地震動予測地図とは

地震動予測地図というのは、兵庫県南部地震の後に、国の地震の研究のスタイルが今までとは変わって、新調査研究推進本部が、いろいろな省庁の地震に対する取り組みをまとめる機関として出来上がりました。そこが一つの目標として掲げて「10年間かけて作り上げよう」ということで、作り上げたのがこの地図です。私もその予測地図作りには、ずっと初めからかかわりを持っていまして、そのプロジェクトの取りまとめを、我々の防災科学技術研究所でやってきています。
この地震動予測地図には幾つかのコンテンツがあります。1つには「確率論的な地震動予測地図」といって、地震の発生確率と揺れの予測を組み合わせて「今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確立が何パーセントなのか」という情報を出した地図。あるいは個々の活断層のすぐ近くで「もしその活断層で地震が起きたら、その近くがどのくらい揺れるか」という、シナリオ型の予測を個別の断層帯ごとに作った地図。そういったものが組み合わされて、今、我々の研究所のホームページから、J-SHISと呼ばれる「地震ハザードステーション」から全国の情報が、グーグルマップ上で拡大・縮小しながら自由にご覧になっていただける形での情報提供をしているところです。
これは背景の地図も非常に細かく、250メートルメッシュぐらいのサイズで、このハザードの評価結果に色を付けて重ねています。これを透過率を変えることによって、ハザードマップのほうの色を強調する場合もあれば、その下の地図を見ながら、どの辺の位置かを確認できます。そういうホームページのサービスも昨年の7月から始めています。
ハザードマップは、市町村のホームページなどにも載っているものもありますが、情報公開という部分については、たくさんの情報の中に埋もれてしまって、なかなか共有化が難しいということがあります。これは今後の課題になっているところです。しかし、この地震動予測地図や地震ハザードステーションは、キーワードで検索していただければホームページが見つかりますし、知りたい場所の郵便番号や住所を入れていただければ、簡単に見ることができます。
特に皆さんがお聞きになっている、この地域、この岩盤群の地域は、地震のハザードは非常に高い地域ですので、全国のほかの地域とぜひ比べていただいて「やはり自分たちは、備えをもっとしっかりしなければいけない」と感じていただければありがたいですし、これを自分自身の行動を起こすきっかけしていいただければと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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