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防災インタビューVol.51

災害リスク情報の共有化 ~防災科学技術研究所での地震防災の研究について~

放送月:2010年2月
公開月:2010年9月

藤原 広行 氏

防災技術科学研究所プロジェクトディレクター

揺れの予測と地下構造

揺れの予測の話をしてきましたが、実際、揺れは一体、何によって決まるのでしょうか。もちろん大きな地震のときには強く揺れますし、小さい地震だとあまり揺れないというのは当たり前です。しかし、それ以外に地盤の良しあしで全然揺れの性質が違ってくるということを、まずはよく知ってほしいと思います。軟らかいブヨブヨの埋め立て地の地盤や造成地であまり締まっていない地盤、そういった所と、硬い岩盤地域だと、同じ大きさの地震が起きても揺れの大きさは全然違います。ですから地震の対策の一番肝心なところは「揺れにくい所に住む」、これがまず肝心です。それができれば本当に大きな地震がある地域でも、割と安心して住める所が出てくるということです。
地盤は関東平野全体について言えることですが、あまりよくありません。その中でも本当に悪い所と良い所、そういったものもあります。まず関東平野は日本でも一番大きな平野です。そして、とても深くまで堆積層という堆積物が降り積もっています。東京の真下ですと3千メートルぐらい、千葉県と東京都の一番深い所だと4千メートルを超えるくらいの厚さの堆積層に覆われていて、これが地震の揺れを大きくするという悪さをします。
地球の岩盤は、もともと地球の内部の非常に硬い花こう岩でできています。この花こう岩は、よくお墓の石などに使われますが、基本的には岩質がものすごくしっかりしたものです。この花こう岩が山で風化して崩れて、川に流されて海に行きます。それが堆積して平野を造る、それを堆積盤と呼んでいます。これはもともとの花こう岩と比べると非常に軟らかい岩、あるいは泥でできていて、そのために揺れが非常に大きくなってしまいます。ですから自分たちが住んでいる所の地盤が、浅い所から深い所まで含めて、一体どういう性質を持っているのかということを理解すると、その危険度がより分かりやすくなってきます。本当に自分たちは地震に備えなければいけない地域に住んでいるのかどうかを知ることは、単に地震がどこで起こるか、ということだけでなくて、住んでいる地盤についても少し考えてみる機会があればいいと思います。我々のところでは、そのための情報をモデルとして提供する準備を進めているところです。
地震動予測地図のホームページをご覧になっていただきますと、表層の地盤の増幅率ということで、揺れやすさを250メートルメッシュで区分した地図が出ています。また、そのほか関東平野3千メートルぐらいの堆積層のモデルも併せて見ることができるようになっています。これは全国的なモデルですが、まだまだ改善の余地のあるラフなものです。そういいモデルも併せて見られるようになっていますので、地下の構造に対して興味を持っていただける方には面白いコンテンツが含まれています。ぜひご覧になっていただきたいと思います。

地下構造データベース

地下の構造というのは理屈で分かるものではありませんし、どういうふうになっているのかは、地下の地図が必要です。これまで日本で行われてきたさまざまな地下に関する調査、そのデータをきちんとデータベース化して、可視化、モデル化し、これにより普通にも分かるようにするための作業を今、始めています。地下の構造調査としては、建物を建てるときに地盤の調査を行ったり、道路を造るときに穴を掘ってボーリングをして、その地下の状況を調べるということを行っています。日本にはいろいろな所にいろいろな目的で取られたデータがあります。その目的外ではありますが、これらのデータは地震の防災対策、地面の揺れやすさ、こういったものを評価するときに非常に貴重なデータとして使えますので、我々の研究所ではここ10年間ぐらい、そういったデータを自治体や関係機関の方の協力を得て集めています。ボーリングデータですと日本全国で四十数万本ぐらい集まってきており、関東平野の中でも、もう13万本ぐらいのデータが今、研究所に集まっています。それに基づいて、この地域の揺れやすさとか、それを評価する研究を進めているところです。
同じ関東エリアといっても、本当に100メートル離れると、急に地盤の状況が違う所があります。阪神淡路大震災のときも、道を隔てて崩れ方が違ったりしました。昔の旧河川などには、非常に軟らかい堆積物が地中に埋もれている所があり、ここは特に揺れやすい所です。そういうような情報があれば、本当に何百メートルかの違いでも、より安心して住める地盤と、そうではない地盤を区別することができます。しかし、この情報は、実はこの世の中のどこかに埋まっているかもしれません。
地震の自然の力に逆らうのではなくて、それをうまくかわす住み方を、やはり我々はしなければいけません。そのためには「どこが危険なのか」という事前の情報をうまく使った都市づくり、また事前の情報の整備、こういったものが、とても重要だと我々は考えています。地盤の軟らかさ・硬さによって揺れは違います。これはちょっと専門的なことですが、地震波が伝わる速度が遅い地盤ほど揺れが大きくなってしまいます。ですから、それがどこにあるのかということを調べるためのデータ整備が、とても重要です。そういった情報が誰でもが見られる形で公開されれば、それに基づいて、新しい家をどこかに建てようという人にとっては、とても参考になる情報かもしれません。ただし、もう既に建物が建っている所について、あるいは、いろいろな土地を所有している人たちにとっては、そういう情報が本当に公開されることに対して、抵抗があるかもしれません。そのあたりの問題を今後も皆でどう考えていくのかを、考える必要があります。それを乗り越えて地盤の情報を共有できることは、日本人の皆の共有の財産だと感じています。そのための情報整備をして、誰でもが使える情報公開の仕組みに向けた取り組みを、これからも続けていきたいと考えています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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