1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. まちづくりと建築土木
  6. 災害リスク情報の共有化 ~防災科学技術研究所での地震防災の研究について~
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.51

災害リスク情報の共有化 ~防災科学技術研究所での地震防災の研究について~

放送月:2010年2月
公開月:2010年9月

藤原 広行 氏

防災技術科学研究所プロジェクトディレクター

リアルタイム地震情報

将来のことを含めて、さらに進んだ地震情報ということで、今、注目されているものとしては、地震のリアルタイムの情報があります。今、起きている地震についての情報を活用した災害軽減の対策ができないかという研究が今、進んでいます。その1つの代表例は、もう既に運用が始まっていますが、気象庁が出している「緊急地震速報」という、揺れる前に出すという、とても先進的な情報があります。それだけでなく地震の直後、例えば夜中に地震が起きた場合に「どのくらいの被害が、どこで生じているのか」「どのくらいの揺れが生じたのか」というのが、すぐに分からない場合がありますが、そういったものもできるだけリアルタイムで把握して、その直後の災害対策に使えるような情報システムを今後、構築するための取り組みを始めているところです。
これは日本中にたくさん置かれている地震観測網から、データや信号がほぼリアルタイムで入ってきていて、それを解析することによって、その地震で今、一体何が起こっているのかというのが、ある程度つかめるようになってきています。これまでお話しした地盤の情報やそのモデル、そして観測網から得られた地震の揺れなどを総合的に合わせて、今後その町がどういうふうに揺れたのかということを、ある程度、即時に推定できるようになるかもしれません。さらに、その上にある建物群の、どこにどういう人が住んでいるのかという情報があれば、どこで被害が起こっている可能性が高いのかというような推定が、より詳細にできるようになるかもしれません。その情報をwebや今のインターネット技術を使って、地図情報と合わせて、誰でもどこからでも見られるような仕組みが、いずれできるのではないかということで、その処方の研究を進めているところです。
今でも日本の地震情報はとても早いです。震度の情報は気象庁から1分、2分で出ます。それでかなりのものは分かりますが、自分たちの町のどこで被害が起きているのかどうか、どれくらいの被害なのか、こういったものの予測精度というのは、まだまだ研究途上の部分があります。揺れは直接、地震観測点で測っていますが、被害の情報はいろいろなルートから個別に集まってきている状況です。それを共有化していくということが、やはり今後、その対策を効率的に進めるための課題になってくると思います。
このリアルタイムの地震情報は、技術的には可能性のある技術がどんどん進んでいます。インターネット上での情報共有、それを地図上に可視化する技術、お金を掛けずに誰でもがそういったものを利用する技術、今のグーグルマップや、無料で利用できるサービスも世の中にあります。そういったところも含めて、いろいろな技術が今後、利用可能になって、どこか特定の所ではなくて、一般の人たちがすぐにそのリスク情報に接することができるような世の中になるかもしれません。そういう情報を今後うまく使って、少しでも災害軽減につながる研究、使い方を広めていく、これが今後やりたい研究の一つです。

災害リスク情報の共有化

最後は、災害リスク情報の共有化という形で、今後の展望についてお話しさせていただきたいと思います。今、我々の研究所でプロジェクトを組んで取り組んでいるのが「災害リスク情報プラットホームの構築」です。地震もそうですが、いろいろな災害の情報を誰でもが共有できる、そういった場をつくって、それを有効に活用して、個人から自治体、国、いろいろな立場の人たちが適切な災害対策ができるように、そのような仕組みをつくれないかという研究を始めています。その中で、これまで話してきた、いろいろなコンテンツを単に提供するだけでなく、それを有効に活用したいということです。最近は地図上で、どこで何が起きているのか、という情報を可視化する技術が進んできていて、パソコンが家にあればそこで見られますし「そこに災害情報を載せていけないか」という研究をしています。そういう研究を含めて、これまで専門家だけが閲覧できる地震の災害情報などが、少しでも一般の人に広められて、もっともっと分かりやすい言葉になればいいと思います。そして、それを使って何か1歩アクションを起こして、地震対策をやらなければいけないと考えるようになる、そのお手伝いをまずはしたいと思っています。「防災科学技術研究所」のホームページには、今お話ししたもの以外にも、日本のいろいろな災害に関する情報がありますので、ぜひとも1度見ていただき、それをきっかけに何か考えていただければ、ありがたいと思っています。

我が家の防災対策

このような防災に関する情報は手に入れたとしても、なかなか「我が家の防災」については実際的には考えていない人も多いと思います。私もそうです。こういった番組などに出させていただいて、お話をするのを一つの機会にして「我が家の防災」というのを考えようと思っています。人に偉そうに「防災対策をせねばならん」という話をするのであれば、まずは自らが何かをしなければいけないと思います。何かをきっかけに、自分自身の今の生活を振り返ってみる、これは大事です。今日は私の話を聞いて「偉そうなことを言っている人がいるな」と思うかもしれませんが、これが何かのきっかけになったらありがたいと思います。
以前、私も引っ越しでまだバタバタしている時に、あまり家具の固定もしていなかったのですが、テレビの取材があると言われて「人々に何かお話をしなきゃいけないのに、自分の所は何もしていないのはまずい」と思って、その前の日に全部固定をしました。また、この夏、研究室がすごく散らかっていて、地震が起きると物が崩れそうだったのですが、取材の方が撮影に来ることになり、その前に部屋を掃除したりしました。このように何かのきっかけがあれば、そこから1歩ずつでも対策が進むと思います。皆さんも、今日がきっかけだと思って、まずは身の回りの家具の固定からでも、やっていただければと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針