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防災インタビューVol.62

地震被害を減らす取り組み ~住宅の耐震化を広めるために~

放送月:2011年4月
公開月:2011年8月

川端 寛文 氏

愛知県住宅計画課主幹

防災まちづくりマネジメントシステムの運用について

防災まちづくりマネジメントシステムを他の地域でも使っていただくためには、ある地域で実践してもらって、いろいろ問題点やノウハウをためていく必要があるということで、平成17年度に予算を取って取り組みました。これは2地区で実施しました。一つ目の地区は半田市の岩滑(やなべ)地区です。愛知県には自治区がたくさんありますが、この地区は2千戸、6千人ぐらいの小学校が一つある、そういう小学校区です。もう一つは田原市の加治区という地区で、ここは450世帯ぐらいの小さな所ですが、いずれもコミュニティーの非常にしっかりした地区で、お願いしてやっていただきました。

まず岩滑区では、自主防災会の役員会に説明に行きました。なかなか乗りがよくて、最初にキックオフというのをやりましたが、非常に興味を持ってもらえましたし、また企業で環境マネジメントシステムをやった人もおられて、ほとんど全員の賛成で「やってみよう」ということになりました。岩滑区は大きな地区でもありますので、住民に呼び掛けて100人ぐらい集まっていただいて、ワークショップを2日間にわたってやりました。そこで40のアイデアが出てきまして、それを役員会で絞って、11のアイデアを実際にやってみようということになりました。その中で最も面白いというか素晴らしいと思ったのは、災害時の要援護者の支援体制をつくっていくことを最も重視しているところです。現状では要援護者と役員が話をしたこともないので、まずは何とかコミュニケーションを取りたいという思いで、要援護者の家の家具の固定を一緒にやって、それを話題にコミュニケーションを進めようという取り組みを企画されました。これがなかなかいい企画でした。最初に建築士に家具の固定の勉強会をやって、次に町内の大工さんが来て、それを練習する、というような取り組みで、高齢の要支援者150世帯のうちの半分以上の家庭の家具を留めることができました。

この取り組みを通じて「要援護者の支援体制をつくろう」ということで、その後もずっと取り組まれてきましたが、要援護者の支援体制づくりというのはなかなか難しく、それから数年かかって、ようやく助ける人と助けられる人の組ができて動きだしたということです。さらにここが素晴らしいのは、その後発展して日常的に、このような高齢者を地域で支えていくために、いろいろ取り組まれることになったことです。かれこれ7年ぐらい取り組みを行ってきていますが、そのような取り組みが評価されて今年、防災まちづくり大賞を受賞しました。

もう一つの田原市の加治区は比較的小さな自治区で、始めた時に、もうやりたい事が決まっていました。ワークショップをやるという展開ではなく、役員の方たちが「何とか全員参加の防災を高めていきたい」と言われて、そのためにいろいろな工夫をしました。このころは、ちょうど防災リーダーが半分ほど代わったところだったということもあって、その防災リーダーと全員参加を目指した取り組みをいろいろ企画しました。ここは450世帯ぐらいの小さな所ですが、今までは皆で集まって避難訓練をやっていましたが、今回は加治区をさらに9地区に分けて、地区ごとに避難訓練をしました。すると参加者が8割以上になって、その後、避難訓練だけではなく、いろいろな防災上の危険な所を見て歩いたりもしました。またある人が、以前に神戸の語り部の話を聴いて非常に感動したということで、これをぜひ全員に聞かせたいという思いから、この語り部に来てもらってお話を聴く地区別懇談会を4回行いました。この懇談会も非常に参加率が高く、5割を超える世帯数の方が聴かれました。

このように防災に対する意識が地区全体で高まったところで、「何とか地区を具体的につなごう」ということで、役員が各地区ごとの名簿を持ち寄って、耐震診断を勧めるワークショップを開くことになりました。次の年には「ローラー作戦」というものにも取り組みまして、多分、他の地区ではなかなかここまではいかないと思いますが、この地区では耐震診断率が対象住宅の5割を超えました。愛知県全体でも耐震診断率は現在17%ぐらいなので、すごい確率で耐震化に結び付いているということです。この両方の地区とも、このような取り組みが進んでくると、次には耐震改修にも具体的に取り組まれるようになり、防災まちづくりマネジメントシステムが実際、将来に結び付く、耐震改修に結び付くような展開も出てきました。

木造住宅の耐震化

愛知県では、木造住宅の耐震診断の件数は9万件を超えていまして、日本一です。また耐震改修の件数も、これは静岡のほうが多いのですが6千件ちょっとで、これも全国2位です。ところがストックで見ますと、耐震診断率は大体全体の対象の17%ぐらいで、耐震改修率に至っては1%ぐらいです。被害を減らすためには、まだまだ取り組みが必要なのですが、これから具体的にはどうしていくかが問題です。

耐震診断や耐震改修の制度ができた時には、非常にたくさんの方が申し込んできましたが、数年すると、ほとんど自分から自発的に申し込む方はなくなってきます。何らかの働き掛けをうまくやらないと、耐震の診断も改修もなかなか進まないということで、私たちも、どのように働き掛けるとうまくいくかを、いろいろ工夫して取り組んでいる状況です。やはりその地域の建築士や福祉の方などいろいろな方と連携して、耐震改修を進めていくことが重要であろうと考えています。

例えば、愛知県ですと最近、耐震診断を勧めるに当たって、町内の役員と建築士と行政の職員がセットになって、組をつくって対象住宅を回るというような「耐震診断ローラー作戦」を提唱して取り組んでいます。これはかなり大きな成果が出てきているようで、やはり一人一人に働き掛けていかないと、なかなか進まないということです。愛知県の場合、耐震診断料は無料なのですが、無料だとしても、こういう働き掛けをして初めて耐震診断を受けていただけるということです。そして耐震改修になると、やはり専門家が加わらないと、なかなかうまくいきません。そういう意味からすると、地域で専門家がある程度集まって、耐震改修を勧めようとすると頼みやすくなるし、耐震改修も進むのではないかということで、その地域の専門家組織をつくっていく取り組みもしています。これは先進事例として、焼津の木造住宅耐震補強推進協議会や平塚暮らしと耐震協議会というものがありますが、愛知県でも何とかこういうものが広くできないだろうか、ということで取り組みました。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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