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防災インタビューVol.63

被災地域 復興への道のり

放送月:2011年5月
公開月:2011年9月

田中 保三 氏

神戸市御蔵通5,6丁目まちづくり協議会会長

まさかの坂

いつもよく言われるのですが、人生には上り坂や下り坂があって、まさかの坂もあるということです。まさかが起こる、どこで起こるか分からないけれど必ず起こるのです。僕自身は阪神淡路大震災で、銭目のものでは莫大な被害を受けましたが、人的被害はありませんでした。しかし最初にその現場に行ったときは「これは神も仏もないな」と思って、神や仏を呪いました。戦後の高度成長を引っ張ってきた明治の終わり、大正・昭和の1桁の人が、たくさん亡くなったわけです。これからゆっくりしようと思っていた矢先に、圧倒的多数の人が亡くなった。長田では数字で言えば、亡くなった68%ぐらいは60歳以上の人でした。年寄りがそれだけ住んでいるということもあるのですが、やはりあまりにもひどいことで、神も仏もないと思ったけれど、そうではなく、身の上に起こることは必然だと思うようになりました。

ないものを勘定しても仕方がありません。在庫商品9500万円が灰になってしまったからと言っても、元に戻るわけではありませんので「あるもので何ができるかを考えないといけない。人はいるのだからやろう」と思ってやって、たまたまうまいこといきました。これから、どこで何が起こるか分からないということを常に思いながら、人生を歩んでいかなければいけないと思います。被災地の人には厳しいかもしれませんが、被災地外の人も自分のこととして受け止めなければいけないと思います。被災者の痛みや悲しみや苦しみを自分のこととして受け止めて、その痛みを分かち合わなければいけないと思うのです。被災地の人の痛みを分かち合うことによって、その痛みが半分にも3分の1にもなるようにしないといけないと思います。

日本人は清い心、自然を愛する心を持っており、仏教で言えば慈悲の心を持っていると思います。慈悲というのは、与楽(よらく)と抜(ばく)ということで表現されますが、要するに楽しみを与え合えば楽しみは倍にも3倍にもなり、苦しみを抜けば苦しみは2分の1にも3分の1にもなるという考え方です。そういうものを大事にしないといけないと思います。さらに儒教の考え方を用いれば、「社会に対して義務を果たす」ということが大事なことですから、こういった時にこそ社会的義務を我々一般の人が果たさなくてはいけないと思います。それを日本の美しい国の精神として発揮するべきだと思います。僕自身は阪神大震災後、自分にできる機会と能力があるのだったら、どんどんやっていくべきだと思っていますし、機会と能力がありながらやらないというのは、悪につながるというふうに思っています。

地震に備えて

神戸の直下型の地震はわずか十数秒と言われていますが、体感としては2分ぐらいあったような気がします。その時、私は自宅で朝起きて柔軟体操をやっていましたら、いきなりゴォッーという音とともにドーンと30?ぐらい体が宙に浮きました。そしてストンと落とされて、一瞬で真っ暗になりました。その時は飛行機でも近くに落ちたかと思いました。仏間に寝ているので、ろうそくを取りに行こうと思った瞬間、横揺れが来て、その横揺れたるやすごいものでした。梁と柱がほぞ穴で結ばれているのですが、ギシギシギシギシうなっていました。それから横揺れのひどいのが来て、四つんばいで両手両膝で畳にふんばっていたのですが、このままでは木造の2階家の1階にいるので、2階が落ちてくると思って「真ん中にいたら危ない」と感じました。隅に行ったら、どこか空間ができるだろうと思ったのですが、四つんばいになって突っ張っているだけで精いっぱいで、1点でも支持を失うと、もんどりうってひっくり返りそうでした。それくらいきつい揺れでした。家が無事だったのが不思議なくらいです。

たまたまうちは新耐震基準で建てた家で、家具や仏壇も作り付けにしていました。はめ込みの仏壇は、その中では揺すられていたものの外には出てきませんでしたが、ピアノは足が足受けから外れて外に出ていましたし、はめ込みになっていた重たいテレビが2mぐらいこっちに吹っ飛んできていました。やはり耐震補強をして、家具の転倒防止をしておくことが大切だと感じました。特に高層マンションでは揺れがもっとひどいと思うので、家具の転倒防止は必ずやっておかなければいけないと思います。災害の鉄則として、最初の救助者になれるのは誰かと言えば、助かった人しかなれないわけです。助からなかったら話にならないわけなので、少なくともできることはやって、自分が助かるように工夫しなければいけないと思います。

我々はこうやってお呼びが掛かって語りに来ているわけですが、神戸の街の中では修学旅行生を年間2000名ぐらい受け入れて、語りをやったり映像を見せたりしています。語り継ぐことの意味というのは過去を記憶するというだけではなく、現在起こっている事に対して鋭い反応ができるように、感性を持ってもらうことにあります。そのために語っているのですが、子どもたちは非常に鋭敏に分かってくれていますが、大人はまだ地震は来ないと思っていて、耐震補強も耐震診断もしない、あるいは「うちは平屋だから大丈夫だ」と家具の転倒防止もせずにいます。でも、それはそんなに金も掛からないので、ぜひやるべきだと思います。今、行政側は耐震補強を奨励しているし、助成金も出してくれるので、やるべきだと思います。自分の命は自分で守らなければなりませんので、ぜひとも励行してもらえればありがたい、僕が来たかいがあると思いますので、よろしくお願いします。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。