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防災インタビューVol.64

生活再建のために ~震災からの復旧・復興~

放送月:2011年6月
公開月:2011年10月

桜井 誠一 氏

神戸市監査委員

ボランティアの新しい活動を通して

今回の東日本大震災でも、ボランティアの方々が随分活躍をされています。阪神淡路大震災の時に「ボランティア元年」と呼ばれ、ボランティアが非常に活躍しまして、1月17日は「ボランティアの日」とも言われているぐらいの位置付けがなされています。阪神淡路大震災の時は、延べ130万人から150万人ぐらいのボランティアが阪神に来られたのではないかと言われています。地震が起きたのが1月17日でしたから、3月の末まで学生が多くいましたので、応急復旧的なところまではたくさんのボランティアがいました。4月に入るとかなり数が減りましたが、阪神淡路大震災では、本当に多くのボランティアの方が活躍しました。

その後、この16年間ぐらいの間にボランティアもいろいろな形で組織化されて、災害NPO、災害ボランティア組織というのが随分しっかりしてきました。そういった中で今回を見てみますと、従来ですとボランティアというのは、いわゆる公共というか官と、なかなか連携をしないという性格がありましたが、今回は連携しようということで、国も「官民連携室」というものをつくって、ボランティアの活動がしやすいように考えてやっています。その事例として例えば今回は、岩手県遠野市にボランティアの基地と行政の基地、そして自衛隊の基地をつくって、そこに皆さん方が集まって、そこから被災地に応援に行くという新しい形ができています。同じようなことが山形県の米沢にもあります。これはボランティア山形というところが行っています。米沢に基地を置いて、そこに集まってきたボランティアの方を福島などの活動拠点に派遣して活動するというもので、このように従来にはなかった、どちらかというとプラットホーム型のボランティアの仕組みができてきているのが一つ特徴だと思います。

それからもう一つは、その被災地に行かなくても、それぞれの地方の自治体で行える活動として、支援する側の自治体に「ボランティアの支援デスク」というものができています。これは2つありまして、今回は福島の原発の問題で県外避難者が随分出ていますので、避難して来られた方の支援をするボランティアと連携する支援デスク、それと同時に被災地そのものに行くボランティアの支援を行います。被災地に行くボランティアの支援としては、当初、被災地に行くために高速を通るのに通行許可証が必要でした。これは警察に行かないともらえないのですが、行政が一緒になって手続きに行ってあげるとか、長期的な支援ができるように、ボランティアの方々の団体に交通費というようなものを援助したりという形で、災害ボランティアが動きやすいように、官民一体になってやっていくということが行われています。これは阪神淡路大震災からみると随分変わってきたと思っています。また一方、行政の組織の一環でありますが、社会福祉協議会がボランティアセンターを立ち上げて、地域のニーズとボランティアとのマッチングをしています。そういう意味では、また新たなボランティアの活動というものが見えてきたというような震災であると思います。

東日本大震災におけるボランティア活動

被災地におけるいろいろなニーズがあって初めて、いろいろなボランティアの形が生まれてきますが、今回の東日本大震災においては津波の被害が甚大でしたので、家屋の中に流木や汚泥が入り込んできてしまっている所がたくさんあります。家屋が全部破壊されてしまった所は無理ですが、少し障害物を除ければ生活ができるという所もありますので、そういう所についてはボランティアの方々が「泥かき」というような形で参加されています。これは一般的なニーズです。ところが今回、私もちょっと驚いたのは、アルバムや賞状、位牌など、さまざまな流失物、遺失物がある中で、それらを集めてきれいに拭いて、展示をして、該当者に持って帰っていただこうというボランティアがありました。これは阪神大震災の時にも中越にもなかったことです。特に写真は水に漬けてしまうと傷んでしまうので、少しぬらした雑巾できれいに拭いて、丁寧に洗濯挟みで乾かすように展示して、避難している方に渡すというボランティアが生まれていました。避難している方がそれを見ては「ああ、私の思い出のアルバムがあった」と言って持って帰られたりしていますが、本当に何もかもなくなった中でも思い出をちゃんと残していける、そういうことがニーズとして生まれて、それをボランティアがやっているのは、素晴らしいことだと思いました。

また、これは阪神淡路大震災の時に経験があったので、仮設住宅ができる時に大学生の方々に「お便利マップを作ったら?」ということを言いましたら、大学生が仮設住宅の周辺を全部歩き回って、どこにどのようなお店があるかを調べて、便利マップを作ってくれました。散髪屋さんはどこにあるか、買い物する所はどこがいいかというのが載っている手作りの地図を、仮設住宅に入る方々が鍵を取りに来られた時に渡して喜ばれました。阪神淡路大震災の経験で、もう一つ、「引っ越しボランティアというのをやったら」と言ったのですが、これは私も気が付かなかったのですが、「実は車がない」と言われました。引っ越しする時に、ないと言ってもいくらか荷物もあるだろうから、車で運んであげようということを提案したのですが、今回の津波で車も流れてしまっていましたし、ボランティアが持ち込んでやるだけの車がなくて、本当に難しいということでした。しかし、どこからか何台か車を調達して、荷物も少なかったのでしょうが、ちゃんとやっていただきました。このことを通して、私たちが過去に経験したことだけを元に考えるのではなく、その地域、地域にいろいろなニーズがあるということを実感しました。

また、今回の震災では福島の原発問題がありますので、バラバラにいろいろな所に避難されているケースが多く、情報が伝わりにくくなっています。そのため、今からもっと大事になってくるのが情報ボランティアです。この情報ボランティアをどのようにしたらいいかという問い合わせも私のほうに来ています。まだまだいろいろなボランティアのニーズが出てきますので、そのようなニーズを自分たちの肌で感じて見つけていただきたいと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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