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防災インタビューVol.64

生活再建のために ~震災からの復旧・復興~

放送月:2011年6月
公開月:2011年10月

桜井 誠一 氏

神戸市監査委員

震災の教訓を生かして

阪神淡路大震災の時に、いろいろなことを検証したり、評価した中で、幾つか教訓がありました。その中の一番基本的なものとして「日ごろやっていないことは緊急時にはできない。日ごろやっている中に仕組みをつくっていくんだ」という言葉がありました。今回もそういう視点で見てみますと、やはり日ごろやっていないことはできていませんでした。例えば、日ごろ避難訓練をしていなければ避難ができていない、ということです。

私たちが支援に入った自治体でも、今回は非常に広域ですので、いろいろな特徴があります。例えば、リアス式海岸で津波災害を非常に意識して防災訓練をしていた所と、津波はほとんど経験がない所があって、津波の経験がない所に今回、大きく被害が出ていました。このような地域では、防災訓練をしているにはしていても、津波はほとんど来ないだろうという前提の訓練になっているので、「逃げる」という意識が薄かったことが、話を聞いていた中で分かってきました。防災無線も電気が切れて通じなかったり、車の中にいて全然聞こえなかったということが、今回の東日本の中でも分かってきています。そういう意味では、やはり日ごろからどういう仕組みを日常の中に組み込めば緊急時に役に立つのか、こういうことをもう一度考え直す必要があると思います。

例えば、災害が起こって、避難所を開設して、仮設住宅を造って、というようなことは、日ごろ訓練をやれるわけではありませんが、地域防災計画ということではなく、事前復興計画というようなものを皆さんと議論して作れば、復興計画に至るプロセスも全部お互い共有化することができます。私たちが今回行った時にも、復興計画の作り方について随分質問されました。阪神淡路の時は震災から10日目ぐらいに復興本部をつくって、その中でいろいろな議論をしながら、市民の皆さんを巻き込んで復興のビジョンをつくり、それに基づいて具体的な計画を作って、国の予算取りをするというステップをお伝えしたのですが、そういうことも日ごろから地域防災計画だけではなく、事前復興計画を作る中で訓練がなされていけば、起これば即、復興ができるわけです。

復旧、復興を進めるために

阪神淡路大震災の教訓を踏まえて東日本大震災の支援に入りまして、一つ大きく思ったのは、その地方地方には、そこ独自の文化というものがあるということです。今回、東日本の皆さん方と接していますと、非常に我慢強くて「自分たちでやります」と言われて、なかなか「こうやってほしい」ということを言われません。ところが、このような大災害の時や緊急時には、自分一人ではなくて多くの方の知恵を使わないと、なかなか救援や救助、そして復旧、復興というのは進んでいかないのです。特に異業種の方と交流をして、それを受け入れ、一緒に復旧、復興をやっていくというが大切です。要はそこにある文化も大事にしながら、その文化を逆に違う地域にも伝えていくという、ある意味でのネットワークづくりというのが非常に大事であり、今後の災害対策に必要だということを強く感じています。

「正常化の偏見」を認識して

今回の震災でも、避難できずに亡くなった方が多くおられますが、お話を聞いてみると「防潮堤があるから大丈夫」「ここまでは津波は来ないんだ」といっておられた方がたくさんいます。これは心理学では「正常化の偏見」と言われますが、何の根拠もないことですが「私は大丈夫」と思ってしまうということで起こります。しかし、これを戒めとして、そうではないのだということを認識する必要があります。「私は大丈夫」と思ったとしても、心理的な正常化の偏見に陥っていると考えて、より安全な所に避難をしたり、安全に手を打っていくということが大事だろうと思っています。

科学者でもあり文学者でもある寺田寅彦先生は、「正しく恐れるということは非常に難しいんだ」と言っています。浅間山の噴火時に、噴火している山に登ろうとしている登山客と、降りてくる登山客が、「登っても大丈夫ですか」「いや、大丈夫ですよ」というような、ある意味無責任な会話が成り立っているのを聞いたときに、その状況を正しく伝えたり、正しく恐れたりするというのは、なかなか難しいものだと思ったというようなことを書いています。

なかなか相手に「危険ですよ」ということを伝えることは難しいのですが、私たちは常に危険と隣り合わせです。そのことが自分の生活にどう影響していくかということも、あらためて問い直して、自分が大丈夫だと言ったときに、もう一度、「正常化の偏見に陥っていないよね」ということを自問自答することで、防災や自分自身の危機管理を今後とも皆さん方でやっていただけたらと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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