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防災インタビューVol.69

水害を防ぐために ~先人の教えに目を向けて~

放送月:2011年11月
公開月:2012年1月

土屋 信行 氏

元江戸川区土木部長

世界の洪水と日本の洪水

洪水ということで世界を見てみると、ライン川などの非常に長い河川で起こる場合、上流からだんだんに洪水になってきます。今回、タイのチャオプラヤ川が大変な洪水になっていますが、バンコクに押し寄せるまでに何日間かかかって、準備をある程度できるというのが外国の洪水の特徴です。しかし日本の川はおおむね、上流域で降った雨が海に注ぎ込むまでに3日から4日ぐらいしかかかりません。ここで洪水になると、いわゆる滝のような洪水がどこでも起こることになります。いっときに強い雨が降ると、大変な破壊力を持って、すべてを流し去ってしまうというのが日本の洪水の特徴です。外国の洪水はじわじわと水位が上がってくる洪水なので、同じ洪水、フラッドウオーターと言っても、全く性格の違う洪水だと考えなければなりません。

私たちが今やるべき事

自分の命を守るためには、自らやれることに今、取り組んでほしいと思います。そのためには自分の住んでいる場所がどういう洪水に見舞われるのかを、まず知ってほしいと思います。全ての場所が同じ洪水に見舞われるわけではありません。例えば、東京だと武蔵野台地では、いわゆる雨が降って川に流れていっても、いっときに水位が上がって、その水位はすぐに下がってしまいます。いわゆる都市型水害と言われますが、ゲリラ豪雨によって一気に水位が上がるというものです。神戸の都賀川で5人ぐらいの方々が命を失われましたが、1時間ぐらいで一気に水が上がって一気に去ってしまう、そういう瞬発的に起こる洪水です。一方、ゼロメーター地帯などは水がいつまでも引きません。そういう所では、たまった水に対してどうすべきか、上流から来る洪水に対してどうするか、海岸線に住んでいる方は、台風とともにやってくる高潮、海の水に対してどうするのか、ということを知ってほしいと思います。またゼロメーター地帯の一番低い所では、地震で堤防が壊れたらどうするかを考えてほしいと思います。自分のいる所によって対策は全く変わります。自分の今いる所がどんな危険、リスクがあるかを過去の歴史を見て、まず知っていただくことが必要です。今回の地震で日本各地に液状化現象が起こりましたが、この液状化現象についても過去の土地の履歴を調べれば、どんな危険性がはらんでいたかは、ある程度予測がついていました。

リスクを知り、リスクに備える

リスクを知ることは非常に大切ですが、もう一つ大切なことは、それに対して、どう備えるかということです。耐震対策をしていて丈夫な家ならば、逃げる時間が稼げます。洪水対策も、ここまで水が上がるかもしれないといって備えておけば、そこで命を失うことはありません。財産よりも命のほうが大切ですから、必ず個人個人が対応すれば、必ず命をつなぐ事前対策ができるので、それを考えていただきたいと思っています。

今回も台風12号のときに、100万人に避難勧告が出されました。それでも、ごくごく少数の方しか逃げませんでした。以前、東京でも世田谷区で1500人の方に避難勧告を出しましたが、実際に逃げた方はわずか9人しかいませんでした。これでは自ら命を捨てているようなものです。まず、危険だと思ったら逃げて行って、それで大きな被害がなかったら「ああよかった」と思っていただければと思います。おおかみ少年になることを恐れて、行政がなかなか避難指示や避難勧告を出さなくなってしまっていますが、危ないと思ったら必ず逃げて、それで助かったのであれば「よかった」と考えるのが理想だと思います。

今回の津波のときにも、残念ながら多くの方が命を失いました。東北地方に伝わる「津波てんでんこ」という言葉があるのですが、通常は皆で協力して、お祭りをやったり集団で助け合って生きている地域ですが、津波があったときだけは「てんでんバラバラにとにかく高い所にすぐ逃げろ」というのが言い伝えでした。やはり先人たちの教えは守ってほしいと思います。

東京の洪水についても、江戸時代にさかのぼって何回も何回も洪水に遭っています。先人の教えをもう一度思い出して、自らの命をつないでほしいと思います。「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」と言いますので、まず、ぜひ備えることだけは続けていただきたいですし、マンネリであっても忘れてしまわないでいただきたいと思います。ぜひよろしくお願いいたします。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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