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防災インタビューVol.76

地震被害想定から減災へ ~災害経験の伝承を行っていくために~

放送月:2012年6月
公開月:2012年8月

山本 正典 氏

応用地質(株)上席研究員

地域防災計画について

災害対策基本法という法律の中に「地域防災計画」を市町村で定めるように、と書かれていまして、全国どこの市町村でも大体作られています。これは市町村だけではなく東京23区など特別区も含まれます。その法律では、計画を作ったら年に1度程度、定期的に見直して、実効性をチェックするように書かれていますが、特に3.11の震災の後は課題や教訓が山積みになっている状態で、各自治体が一斉に地域防災計画の見直しを進めています。市区町村で地域防災計画を作り、その上位に都道府県でも同じようなものを作っておりますし、国でも防災基本計画を作っていますので、実際には三層構造になっています。この三つが整合性を持って作られるわけですが、3.11の震災後、独自の地域防災計画を作ろうとしている自治体が数多くあり、それのお手伝いを私のほうでも幾つかやらせていただいています。

地域防災計画というのは、地震や風水害、大規模な事故などについて、事前にどう対策するか、いざ何か起こったらどう動くか、応急対策の部分、そして起こった後、復旧復興をどうやっていくかということを、その計画の中に定めています。それに付随したいろいろな資料が、別編あるいは資料編という形で作られていまして、その本編、計画そのものが何百ページ、資料編も何百ページというような、大部な計画になっています。ここの中には、あまり具体的な事業そのものとか行動マニュアル的なものは入っておらず、それは別途作られるのですが、この地域防災計画は、自治体の防災対策の基本方針のようなものが全部整理されているようなものです。何百ページもあるので、なかなか公務員の方でも読み切れていませんし、あるにはあっても棚に飾ってあるだけということも多く、「役に立たない」というご指摘もありますが、きちんと読めば基本的なことは全部その中に盛り込まれているものです。地域防災計画は、このような基本方針だということを理解して読めば、それなりに心構えができるものになっていると思います。また、この地域防災計画は自治体、役場だけではなく、民間機関がどうするか、住民がどうするかについても、ある程度書かれていますので、本当は住民の方にもどんどんこの計画に関わっていただきたいです。特に計画を作る過程で関わっていただくと非常に良いのではないかと思います。ただ、膨大な計画なので、どこに何が書いてあるか、なかなか分からないということは確かにあるかもしれないので、もう少し見やすくなるように今後工夫していかなければなりませんし、デジタル的なものにして検索しやすくすることも必要ではないかと思っています。

この地域防災計画は基本は役所の各課においてありますし、図書館などにも置いてあります。防災の担当課に行けば見せてもらえると思います。

地域防災計画作成までの過程

実際に地域防災計画がどのように作られているのかを、少しお話ししたいと思います。当然、今ある地域防災計画を点検することから始め、今回の震災のように後から出てきたいろいろな課題を踏まえて、今の計画のどの部分をどう変えたほうがいいという意見をわれわれコンサルからも出しますし、役所の各部署からも意見が出てきます。そういう意見を踏まえて計画全体を修正して、たたき台を作ります。その段階で役所の全部課と、関係するライフラインなどの防災関係の機関や交通機関、医療関係の機関や民間の機関にも、この計画でいいかを伺い、出てきた修正意見などを踏まえて、まず素案という段階にたどり着きます。これを基に役所や関係するいろいろな機関の代表者や自衛隊や国交省の担当、都道府県の方も入って、市区町村の防災会議で最終的にこの計画を定めていきますが、この会議は30人から50人ぐらいのメンバーで行う、非常に大掛かりな会議です。その会議の場で、まず素案をオーソライズすることになります。その後、パブリックコメントにかけていくことも多く行われています。

パブリックコメントは、役所で立てた計画をオープンにして、住民の方にご意見を頂くという場です。大体各自治体ではホームページや、図書館、公民館などの主要施設で計画案を約1カ月ぐらいの間に住民に閲覧してもらい、修正意見を送っていただきます。ここが今、住民が関われる最大のポイントとなっています。しかしながらパブリックコメントの反応は、自治体によって全然違っています。ものすごい数のご意見を頂くこともありますし、非常に反応が薄い場合もありますし、さまざまです。特に昨年の大震災後には、このパブリックコメントはかなり増えてきています。特にペットに関連するものが多く、避難所にペットを連れてくることの可否などの意見も各地域で出されています。

このパブリックコメントを通過したら、頂いた意見を基に修正を行い、1回、庁内各部課や関係各所に確認を頂き、防災会議に最終案を提示して、そこで良いということになれば計画が決定します。以前は、この決定の前に都道府県との協議をやらなければいけなかったのですが、今は法律が変わって協議は必要なくなり、報告という形で、どちらかというと市区町村の自主性を重んじるような方向に変わってきています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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