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防災インタビューVol.76

地震被害想定から減災へ ~災害経験の伝承を行っていくために~

放送月:2012年6月
公開月:2012年8月

山本 正典 氏

応用地質(株)上席研究員

震災被災地での取り組みについて

震災の被災地の中には、震災の前から仕事で幾つか関わった地域もありますし、震災以降も、直接仕事ではないのですが何度か現地の状況を見させていただきました。

震災の前に釜石市では津波の避難のワークショップをお手伝いしたり、気仙沼市で既に取り組んでいた「津波に強いまちづくり計画」を参考にしながら、宮城県全体で使えるような手引きを作るお手伝いをしていました。釜石で津波のワークショップをやった時に、住民の皆さんとお話ししました。私が担当したテーブルに、かなり年配のご婦人がいらして「昔、津波を経験しているので、津波のことは非常に怖い。若い人たちにそういう話をするけれど、なかなか取り合ってもらえない」ということをしきりにおっしゃっていました。確かにそのテーブルの話では、今回の釜石市での津波の浸水の様子と比べても、全然程度が違う状況での避難のお話に終始していたように思います。そういう意味では、やはり昔の経験を伝承するのは、いかに難しいかということと、経験は風化していってしまうことを今回あらためて思いました。

一方で今回、非常に大きな被害を受けた気仙沼市の鹿折地区と、もう一つの地域では、震災以前から津波に強いまちづくり計画を自分たち住民で作ろうという取り組みを随分されていました。そこでは住民の方々のワークショップなどを踏まえて、最終的に計画として「将来は高台移転という方向を目指しましょう」ということも明記してありましたので、そういうものをわれわれも参考にして、それらの地域でどういう具合にその計画を作っていったかというステップを整理して、全県的に使えるような「津波に強いまちづくり計画策定の手引き」を作ろうとしていました。ちょうどその取りまとめをして、最終報告をしようとしていた時期に震災が起こってしまいました。実際、まちづくり計画を作った2地区も大きな被害を受けて、その地域の計画も使えないものになってしまいました。ただ、自分たちのまちをつくっていくための手引きとして、準備段階、知識を付ける段階、地域の現状を把握する段階、それから皆で話し合う、最終的にまとめるという、それぞれのステップで何をやったらいいかを整理したものを作って、宮城県にお納めしています。これは実際どういうふうに使われるか、こういう状況ですから分かりませんが、こういう地域の経験自体は今後も生きていくのではないかと思っています。

想定以上に備えるために

私が震災後に一番最初に入ったのは陸前高田でしたが、本当に突然ある部分の家々が全部なくなるという光景を目にして、すごい衝撃を受けました。2回目に陸前高田に行った時に、幸いなことに市長さんのお話も伺うことができました。市の体育館で多くの方が亡くなったということでしたので、なぜそんなに亡くなってしまったのかを伺ったところ、市のそれまでの津波のハザードマップで、浸水の想定がかなり低いレベルになっており、体育館は安全だということで皆さん避難していたが、結果的にはああいう大きな津波が来て亡くなってしまったということです。やはりどういう津波、地震を想定して備えるかということは非常に重要だし、その想定以上の事が起こり得るということも考えなければいけないことだと思います。

大災害を越えて

4月に陸前高田から八戸の方まで行きまして、三陸鉄道の方にいろいろ案内していただきました。そこで聞いたところでは、観光客が例年の2、3割しかいないということです。私も宮古市の非常に美しい海岸である浄土ヶ浜も見てみましたが、天気も非常に良くて観光日和でしたが、観光客は非常に少数しかいませんでした。確かに観光施設なども壊れたままになっている部分もありますが、観光するのに支障があるほどではありませんし、飲食店なども開いていますので、ぜひ皆さん観光に行って、そういう面で支援していただくのも非常に重要なことではないかと思います。確かに陸前高田のように非常に大きな被害を受けた所はまだ更地のままだったりもしますが、地域によっては以前の状態と同じぐらいに観光できる所もありますので、ぜひいらしていただくと、そういう気軽な支援ができるのではないかと思っています。

この震災を経験して、災害経験の伝承というのは非常に難しいと思っております。今回の震災でも、今はいいですが、今後10年、20年、どういうふうに語り継ぐかということを肝に銘じなければいけないと思います。過去の大きな地震の経験も風化しているところが非常に多いので、今回はぜひとも、いろいろな形で伝えていきたいと思います。

その意味でも、いろいろな地震の情報とか、過去に行った調査のエッセンスみたいなものが、応用地質株式会社のホームページにアップされています。これは行政だけでなく住民の皆さんにも役立つ情報も載っていますので、ぜひ見ていただければと思います。応用地質株式会社で検索していただければすぐ出てまいりますので、ぜひそちらをご覧いただくと私どももうれしく思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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