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防災インタビューVol.76

地震被害想定から減災へ ~災害経験の伝承を行っていくために~

放送月:2012年6月
公開月:2012年8月

山本 正典 氏

応用地質(株)上席研究員

地震被害想定

最近、地震の被害想定というのが非常に話題になっていますが、うちの会社でも国、特に内閣府が行う巨大地震の被害想定などの計算作業などのお手伝いをしています。また国だけではなくて、各都道府県の被害想定もお手伝いしておりますし、例えば最近、4月の半ばに発表になった東京都の被害想定の地震動などについては、私どもで計算をさせていただいています。この作業は非常に予測的には難しいのですが、地震の震源域を決めたり、地震のいろいろなパラメータ、要素を決めるだけでも大変なので、有識者の方からご意見を頂いて、最終的に委員会などで合意を得て「こういうことでいきましょう」というのを決めていきます。その決まったものを基に、計算機をいっぱい回して結果を出していくわけです。その結果を、なるべく見やすいようなカラーの絵にして国民に提供する、県民に提供するというようなことをやっています。

今回、東日本大震災を受けて、どの機関がやっている想定作業も、いずれも過去の想定より被害量が相当上積みになっています。皆さんは、その結果、その数字だけにとらわれるのではなく、自分の住んでいる地域はこれから見るとどうなのか、というのをよく見て、自分は何ができるのかを考えることが重要だと思います。

例えば、ここ横浜市では、昔から建物の耐震補強に力を入れていますが、それは阪神淡路大震災の経験からいっても一番重要なことだと思いますので、皆さんぜひ備えていただきたいと思います。それから家の中にある家具についても、万が一倒れてくると人命の損傷、あるいは人命にまでは至らなくてもけがに結び付きますので、ぜひ固定を進めていただきたいと思います。また今回、津波の見直しも進んでいます。神奈川県でも見直しをしていて、以前より高い津波高になっています。津波はなかなか被害を防ぐのは難しいので、堤防などを造ってみても、それを越えて来るのは今回の三陸を見ても分かることなので、「とにかく逃げる」ことが必要かと思います。自分が海岸にいて、もし何かあったらどうしたらいいのか、ということを考える習慣をつけることも必要ではないかと思います。

地震被害想定から減災へ

地震被害想定によって、どれくらいの被害が出るのかが数値化されて出てきますので、その数字を減らす対策を考える必要があります。最近は、地震防災戦略を都道府県レベルで作っていこうという傾向が出てきています。例えば、人的被害を半分にしますとか、経済被害を半分にしますという目標を掲げている自治体が数多くあります。ただ目標で半減するといっても、何をやったら半減になるのか、なかなか分からないのですが、被害想定の場合は、建物の耐震化がこれくらいだと被害がどうなるという数字は予測できるので、あくまでも想定上の話になりますが、いろいろな対策を行って、現状がいい方向に変わっていったときに、その状況の下ではどれくらいの被害が予想されるかというのを計算して、対策効果を検証するということをやっています。一つの対策で目標が全て達成されるわけではないので、幾つかの対策を組み合わせて、結果的に半減だとか4割減だとかという目標が達成されるかどうかを検証しています。それを期間を区切って、例えば10年とか5年とかでやりましょう、という目標を掲げて地震防災戦略というものを決めています。このように期限を切って、目標を掲げて戦略を考えていくことは、行政としてのモチベーションを維持していくためにも、また対策を進める上でも有効なことではないかと思っています。

ただ、いろいろ課題もありますし、あくまで予測なので、本当にこの対策をやったらそういう災害が減ることが現実として起こるかどうかは分からないところもあります。あくまでも想定の範囲のものなので限界はありますし、例えば神奈川県内というような広いエリアで目標を決めた場合、実際には非常に効果が出やすい地域と効果が出にくい地域が出てきます。この場合、効果が出やすい地域だけ対策を立てれば、効果が出にくい地域は何もしなくても目標が達成されたように見えてしまうという問題があります。しかし実は、効果が出にくい地域のほうが危ないわけです。そういう地域差の問題を今後は考えていかなければならないのではないかと思います。

しかしながら、今までの地域防災計画から地震防災戦略に発展していく段階で、こういう目標設定が行われるようになったのは、非常に政策上の進歩と受け取っていいのではないかと思います。実際の長期総合計画においては、網羅的なばら色の世界を描いていますが、この地震防災戦略も目標がはっきりしていないという反省の上に立って移り変わってきているので、今後の減災に生かしていければと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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