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防災インタビューVol.88

防災通信分野の未来 ~災害の数値化から防災教育への活用まで~

放送月:2013年3月
公開月:2013年8月

廣井 慧 氏

慶応大学大学院

災害とインターネット

NTT東日本で働いていた時に災害時のオペレーションをどうするか、被災地内通信をどうやって守るかという二つの壁にぶつかり、悩みました。どうにかしなければいけないけれども具体的に思いつかず、「どうしよう」という漠然とした気持ちを、ずっと持ち続けていました。その答えとして考えたのが「防災情報システム」を体系的に考えてみようということでした。その時は電話網だけだったのですが、電話網だけではなくインターネット網や衛星通信網など、いろいろな通信網が世の中にはあるので、その通信網を複合的に捉えて、被災地内の情報のやりとりに力を尽くしたいというところにたどりつきました。そのシステムや情報通信網を使って正しい情報を出して、その情報を受け取った皆が正しく認識できるような社会をつくりたいという気持ちというかモチベーションにたどりつきました。それはNTT東日本に入って5年目ぐらいの頃ですが、もっと体系的に考える必要があると思ったので、いったん退職をして、今在籍している慶應義塾大学のメディアデザイン研究科に、修士の学生として入学をしました。まず防災情報システムはどうあるべきかを考える機会を頂き、いろいろな場所で使われている防災情報システムを調べて、こういうものがあれば皆判断がしやすいのではないか、情報を共有しやすいのではないかということを考える研究を、まず初めにやらせていただきました。

NTT東日本にいた時には電話だけだったのですが、電話はやはり声が聞きたいという方にとっては優先度が高いので、その時々によるのではないかという気持ちはあるのですが、その時その時で皆が使わない、割と混み合わないネットワークがあると思います。それがインターネットだったり、もしかしたら他の放送網かもしれませんが、いろいろなネットワークを使って情報のやりとりをしたらどうかと思っています。その時は電話だけだったのですが、電話で通していた情報をインターネットで通したらどうなるか、放送網や衛星通信を使ってみたらどうかということを考えたいと思っています。

災害を数値化する

今、私は博士課程に在籍しておりまして、そこで行っているのが、被災状況をどうやって数値化して伝達するかという研究になります。災害が起きたときには自分がどのような状況に置かれているかということと、それを知るための被災状況を知ることが重要になってきます。ここでポイントが三つありまして、一つ目が対象、二つ目が空間、三つ目が時間です。今やっているのは水害に関してなので雨と川の話になりますが、気象の観測網には今は気象衛星、雨量計、気象レーダーなど、いろいろな観測網があります。それらの観測網の情報は、天気予報や携帯電話のサービスを通して利用している人もいますが、いろいろな手段で入手することができます。ただ、観測対象の違いが出てきまして、雨量計は地上についていますので、地上に実際に降った雨を観測値として出しますが、気象レーダーは空の雲を見ていますので、地上ではなくて空の様子を出しているデータです。それで、実際に私たちが地上で感じる雨と気象レーダーとでは、やはり空と地上ですので差が出ます。山間部ですと、そこまではないと言われているのですが、特に都市域になると、実際に地上で私たちが感じる雨と非常に差が出てきます。都市には高層ビルなどがあるので、地形がとても複雑な構造になっていて、風などの影響で雨が流されたり、時間にずれが出ます。その観測対象の違いが被災状況の数値化に、とても影響してきます。正しい情報を正しく作って伝えたいと申し上げましたが、その一つ一つの観測値は正しいのですが、私たちの居る場所の情報とマッチしているかというと、そうでもない場合が出てきます。空では起きているけれども地上では違うとか、雨量計が付いていても、そこから10キロほど離れた都市域の場合は全然違う気象現象になるので、自分たちが居る場所の情報としては正しくなくなってしまいます。時間のずれも影響してきて、もしも情報が30分おきに出ていたら、30分前の情報はその時点の20分後の情報とはまた違ってしまいますので、30分前は正しかったけれど20分後は正しくないということになってしまいます。もう一つ、雨が示すものというのがあります。雨が降って私たちが実際に困ることというのは、雨が降ったから困るというよりは、道路にどのくらい水がたまっているかとか、床下浸水、床上浸水するかということで、直接雨による影響で困るというより、雨が起こす二次的な影響で困ることのほうが多いと思います。ただ情報としては「このくらい雨が降っている」という情報が来るので、その情報から自分たちの地面の様子がどうなっているかという情報を出すのがちょっと難しいというような問題があります。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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