1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. 防災通信分野の未来 ~災害の数値化から防災教育への活用まで~
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.88

防災通信分野の未来 ~災害の数値化から防災教育への活用まで~

放送月:2013年3月
公開月:2013年8月

廣井 慧 氏

慶応大学大学院

センサーネットワークとレーダー観測値

水害の時に自分たちの居る場所がどのような状況になっているのかを知るのは、とても大事なことですが、観測網の数値そのままでは、自分たちの居る場所の状況を適切に表してはいません。どうやってこの問題を解決するかということで、センサーネットワークや気象レーダーを組み合わせて使う、観測値を組み合わせて使うという答えを出しました。例えば雨量計が一つだけポンと置いてあると、その地点がどのくらい降っているかという情報しか分からないのですが、いろいろな所にたくさん雨量計が付いていると、一つでは分からなかったことが分かるようになります。気象現象は西から東に向かって起きることが多いので、西で発生した雨雲がだんだん流れて東の方で発生することがよくあります。雨量計を三つ、四つ付けて、そのデータをずっと見ていると、西の方の雨量計の雨量が大きくなって、だんだん東の方に設置してある雨量計の雨量が大きくなるというような、一つでは分からなかったことが幾つかのセンサー、雨量計を組み合わせると、新しい情報が分かるようになります。雨量計だけではなくて、さらに気象レーダーを見ると、気象レーダーは空の様子を観測していますので、雨量計が今設置されていない場所の空の様子も分かるようになります。雨量計のような気象センサーネットワークや気象レーダーを組み合わせると、今までに分からなかった新しい情報が分かるようになります。さらに河川についている水計の情報を組み合わせると、雨によって川がどのような状況になって、道路にどのような影響を及ぼすかという新しい情報が分かる可能性がどんどん出てきます。このようにいろいろなデータを組み合わせて、被災状況を数値化できる可能性があるのではないかということで、いろいろなデータを収集して、実際の水害が起きたときと比べて、ここは数値化できるかどうかという検証を行っています。ただ精度との見合いがあって、いろいろな方がなさっていますが、精度のいい情報、正しい情報を作ろうとすると、ものすごく計算時間がかかってしまいます。実際、ある場所で降る雨の量を予測すると、場合によっては3時間、半日という時間がかかりますので、ある程度の精度を保ちつつ、情報の即時性を保つという、微妙なバランスの所を見つけなくてはいけないという悩みもあります。

ゲリラ豪雨について

被災状況を数値化することについて、その1例としてゲリラ豪雨と言われるような短時間強雨の検出ができるのではないかという研究を行っています。毎年どこかしらで激しい短時間強雨が起きて、被害に遭っている方もたくさんいます。ただ、まだゲリラ豪雨というものがどういうメカニズムで発生するかは研究段階にあります。私は東京都環境科学研究所で非常勤研究員もしていて、そこで研究していることですが、ゲリラ豪雨がどうやって発生するかという仕組みを解明して、その仕組みの中からゲリラ豪雨を検出できる可能性はないかということを探しています。具体的に言うと、ゲリラ豪雨というのは、まず上昇気流によって起きるのではないかと言われていますが、都市の場合ですと高層ビルがたくさんありますので、海から入ってきた風が高層ビルの方に流れてくると、上の方にどんどん上がって上昇気流になります。そこで積乱雲が発生して、激しい雨を降らせるのではないかと言われています。それを逆に考えると、上昇気流が起きることをセンサーネットワークやその他の組み合わせを使って検知すれば、ゲリラ豪雨の発生や短時間強雨の発生も分かるのではないかと考えられます。それだけではなくて他にも起きる要因はいろいろあるのですが、その要因を一つ一つセンシングしていって組み合わせれば、発生を検知できる確率はだんだん増えていくのではないかと思います。ゲリラ豪雨を発生させるような雲である積乱雲を観測できる気象レーダーは既にあって、それが発生する何分前、何十分前には分かるのですが、それは雲ができてからの話です。雲ができる前に分かれば、今よりももっともっと早い時間に短時間強雨が起きることを検出できると思います。こうしていろいろな観測網を使って情報を組み合わせれば、ゲリラ豪雨の検知のように新しく分かることもあるというのが研究の一つです。

さらにそれを伝達するためにどうするかと考えることも必要です。私たちが今、災害情報を受けられる機器はたくさんあります。携帯電話、テレビ、防災行政無線などいろいろあります。いろいろあるからこそ、ありすぎて、オペレーションする側としては、これにもあれにも送らなければいけないとなると、とても大変になってきます。最近は急速に受信できる機器が増えたので、オペレーション側がまだ付いていかれないところもあるのではないかと思っています。それを共通的に扱えるようなものがあれば、オペレーション側にとっても、作られた情報をとても楽に送れるようになるので、正しい情報を作って伝えるという一連の流れができるのではないかと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針