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防災インタビューVol.88

防災通信分野の未来 ~災害の数値化から防災教育への活用まで~

放送月:2013年3月
公開月:2013年8月

廣井 慧 氏

慶応大学大学院

防災教育分野の活用

私の研究の目標として、災害時の正しい情報を作って提供すると同時に、受け取った側にも正しく認識をしてもらう社会をつくりたいというのがあります。正しく情報を作って提供するというお話は既にしましたが、今度はその情報を正しく認識してもらうためにはどうすればいいかというお話になります。

昨年から東京都立高校で少しずつ、高校生に向けての防災教育を考え始めています。私がやりたい防災教育のポイントは二つあり、「自分で考える力を付けてもらいたい」ということが一つ目、二つ目が「災害を身近な現象の延長として捉えてもらいたい」ということです。

一つ目の「自分で考える力を」ということについては、以前こちらでお話をされた東京大学地震研究所の大木先生にアドバイスを頂いたものですが、震度6とか震度5弱とかの地震については「どのくらいの地震か」と高校生たちに聞くと、割と正しく、それほど大きな間違いもなく答えらます。ただ、雨の場合は、なかなか降水量と実際に起きる現象を結び付けるのが難しいようで、「30ミリの雨ってどのくらい?」といろいろな写真を見せて答えてもらうと大抵間違えます。それはなぜかをずっと考えていたのですが、地震の場合は、地震が起きてグラグラっと揺れたら「今、震度幾つだった?」とテレビをつけて確かめます。場所によっても若干違いはありますが、それによって「このくらいの揺れだったらこの震度だ」というイメージが自分の中につきます。それだからこそ、震度5弱とか震度6とか、緊急地震速報が出ると「ああ、大きい地震だ」というイメージがつくような体になっていると思います。ただ雨の場合は、実際に雨量と現象が結び付いている人がなかなかいませんので、「30ミリの雨が降るよ」「40ミリの雨が降るよ」と言っても、それがどのくらいの被害を出すものなのかがあまり理解されていないと思います。それで、このくらいの雨量のときはこのくらいの危険度になるというのを、何度も何度も繰り返し考えてもらって、だんだん分かるようにしてほしいという思いがあります。実際に30ミリの雨と高校生に言うと「3センチじゃん、あまり大したことないじゃん」と思うみたいなのですが、それが1時間降ったらどうなるか、雨は高い所から低い所に流れるので、それが10分の1ぐらいの狭いスペースにたまってしまうと10倍になります。10倍になったら、歩けるかどうかという深さになってしまいますので、このくらいの雨が降ったらどのような影響になるかということも併せて、雨量のような数字と実際の現象のマッチングを考えてもらうというようなことを行いつつあります。

次に防災教育の二つ目のポイントの「身近な現象の延長としてとらえてもらいたい」ということについてですが、皆さん、特に高校生の方たちは若いので、「災害」というと何だか難しそうだし怖そうだし、とっつきにくいと思われてしまいます。ただ、気象というのは、いつも起きるような現象、例えばいつも降っている雨がたまたま激しく降るように、いろいろな条件がくっついて災害が起きるので、高校生にも、いつもの雨が降っている現象の延長線上に、それがひどくなって災害になることがあるというように捉えてもらいたいと思っています。

高校生にとって災害と言うと抵抗を感じるかもしれませんが、気象と言うと結構興味を持ってくれる方が多くいます。日常に起きている気象現象がどう起きるか、どういう条件が重なると災害になるかというところから水害を、高校生に考えてもらいたいと思っています。例えばそれはゲリラ豪雨のような短時間強雨のメカニズムを解明するところからでもいいですし、自分たちで興味を持つきっかけとして身近な現象を知り、それがひどくなったものが災害だと捉えてほしいと思っています。

これからの防災のために

私はまだ博士課程の学生なので、研究もまだまだこれから、駆け出しですが、これまで自分が何をやっていけばいいか具体的に分からなかったときにも、人にいろいろ恵まれて、いろいろなことを教えてもらう機会を頂くことができました。例えば、自分で「これをやりたいけれど言葉にできない」というようなときもありましたが、そのような時にも言葉を言い換えてくれたり、「こんなふうに言ってみたら」と、いろいろな指導を下さる方がいつも周りにいましたし、今もたくさんの人にいろいろなことを教えていただています。中には「自分はお父さん代わりだから」と言ってくれる方もいて、父もそうだったのですが、私もすごく周りの方々に恵まれて、貴重ないい機会を頂いていると常々思っています。

このように貴重な機会を頂いているので、その機会を生かして、自分のやりたかったことである「正しい情報を作って提供する」ということを、これからも頑張って研究していきたいと思います。また、その受け取る側の高校生のための防災教育に関連することもやっていきたいと思っていますので、高校生の方たちにも自分で考える力を付けてほしいし、気象に興味があったら災害のことも考えてもらいたいし、災害に興味のある人には気象のことから考えて基礎的な力を付けてほしいと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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