支援が必要な子どもたちを守るために
東日本大震災の時にも避難所に行きましたが、知的障害があるためにその場にいることが大変難しく、壊れかけた家に戻ったとか、車の中で生活をしてきたという方がいた半面、その学校が指定避難所にはなっていなかったけれども、校長先生の判断で急きょ避難所になって、障害のある子どもたちが学校で落ち着いて過ごすことができたという例もあります。全てが避難所に行けなかったわけではありませんし、また全てが避難所で窮屈な思いをしたということではないと思っています。ただ、避難所の問題は、私たち障害のある子どもの保護者や関係者の皆さんには、特に考えていただきたいことですので、最後にもう一つ、お伝えさせていただきます。
もし避難所の中に福祉的な避難ができるスペースがあれば、特別な二次的避難所としている福祉避難所に行かなくても、その場で過ごせる方も多くいます。そのためにも居住地で避難所に指定されている小中学校や公民館などに、災害時の要援護者のための福祉避難的なスペースを確保していただくことが、とても必要なことだと思います。
学校には学校避難所運営協議会が設置され、地域の代表者が集まり、避難した人が公平に避難生活が送れるような避難所のルールが作成されています。備蓄された物品の確認や資材の操作訓練なども行っています。ただ、この協議会の中で災害時要援護者の避難についても取り決められているかどうかは不明です。指定先の避難所の中に福祉避難的なスペースが確保されているかどうかを、私たち保護者は確認しておくことが必要だと思っています。東日本大震災の時にも、特別支援学校に福祉避難所として非常に大きな期待が寄せられ、指定避難所になっていなかった特別支援学校が、地域住民の要請を受けて自主的に避難所を開設し、災害時の要援護者や地域住民を支援されていたという報告もありました。特別支援学校には充実した施設と設備があり、先生方の障害理解や専門性、志の高さがありますので、災害時要援護者を支援する福祉避難所に適しているという見解があります。そのため市区町村との協定で福祉避難所の指定を受けている特別支援学校が多数あります。福祉避難所として指定された特別支援学校では、在籍している子どもたちへの対応のほかに、地域の災害時要援護者への受け入れと対応、必要な物資・機材の備蓄、専門的人材の確保、移送手段の確保など、時系列を追ったさまざまな対応を市区町村と事前に協議して、それらのマニュアル化と情報交換を図る必要があると思います。他にも特別支援学校の設置者である自治体と緊密な協議連携も求められます。異なる自治体間での協議には予算的な課題も生じると推察できますが、特別支援学校の子どもたち、保護者、教職員、地域の住民にとって、安全、安心な福祉避難所としての運営が可能になるよう、賢明な判断と支援を希望します。
子どもが通っている特別支援学校が福祉避難所の役割を担ったとしても、休日や夜間に自宅で被災した場合は、居住している地域内に福祉避難所に指定された特別支援学校があるとは限りませんので、居住地内の指定避難所に避難することになります。本来ならば、支援の必要な子ども、保護者にとっては通い慣れた学校での支援を受けたいところですが、災害時に距離がある移動は大変困難ですので、居住地内の指定避難所への避難をシミュレーションして、平常時に備えておくことがとても大事です。学校、PTA、親の会、自治会、町会、地域の支援者、地方自治体の福祉関係部局などが連携して、支援の必要な子どもたちの命と安全を守るための仕組みづくりが、どこの地域においても格差なく進めていかれることを心から願います。