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防災インタビューVol.92

企業の災害対策 ~被災前後の対応とBCPの取り組み~

放送月:2013年7月
公開月:2013年12月

掘 格 氏

NEC

自立した勤務者を育成するために

もともと社員が災害のことを考えるということは、多分めったにないと思っています。普段、人間は「嫌なことは考えたがらない」という性格を持っていますから、「地震は怖い、でも自分はラッキーだから起こることはない」と考える人が多いので、日頃そう考えている方が地震に遭遇すると、ぼうぜん自失になったり思考が停止したり、指示待ちになったりしてしまいます。我々からすると、災害時にこそ自ら進んで復旧に携わってほしいのですが、それをやってくれなくなり、完全に止まってしまうという状態になりますので、そうならないためのいろいろな仕掛けづくりをやっているということです。私自身は人事総務部門ですので、そういう方々に対して訓練をやったり、WEBで研修をやったり、家族も含めて帰宅支援地図を打ち出したり、あるいは防災フェアをやったりと、折に触れて防災を考え、自分の頭で「こういう時はどうしよう」と考えてくれるような仕掛けづくりを行ってきているという状況です。実際に大地震が起こると、意識してない人はなかなか動けないものですが、5人に1人ぐらい動ける人がいれば、その人たちが「こういう時はこうしたらいいよ」と声を掛けてくれると思います。

そのために我々ではWEB研修というものを行っています。ドラクエなどのゲームと同じで、Aという事象が起こりました、あなたはどうしますか、逃げますか戦いますか、というようなものを選んで、うまく選べれば先に進め、会社にたどり着けるとか家に帰り着きます。うまいこといかないと、その場で倒れてしまうというようなWEB研修を一人一人がやっているおかげで、いろいろなシチュエーションを仮想体験できるということです。それを約11万人のうちの社員、関係会社の社員が楽しんでやっています。普通だと研修というのは、いろいろなことを覚えていかなくてはいけないし、最後に合格、不合格というのが出てくるのですが、このWEB研修だと最後、家までたどり着いたという達成感が得られます。何度も何度も途中にお助けマンが「あなた、それじゃ危ないですよ」と出てきて、なぜ危ないかというのが出てくる仕組みになっていて、それでもたどり着くと次には、家に居る場合はどうしたらいいの、遊びに行っているときに地震が起こったらどうしたらいいの、あるいはビル街に行っているときに地震が起こったらどうすればいいの、といろいろなパターンを考えてもらうということで結構受けはいいようです。

東京都で「帰宅難民になったときに入手したい情報は何ですか」というアンケートを出していますが、会社の情報を入手したいという人は7%強です。仕事のことが心配だと答えた人も7.6%しかいませんでした。しかしながら、NECの中で昨年とったアンケートでは「会社の情報を入手したい」という人が21%ぐらいまで高まっているので、だいぶ会社のことを考えてくれるようになったと思っています。かつ会社の被害状況を知りたいというのは50%を超えましたから、2人に1人は考えてくれるようになったという点で、自分の頭で考える、行動できるようになってきたのではないかと思っています。

自分の家を守る

今年のWEB研修では「あなたの家はどういう家ですか」というのをテーマにしました。一軒家ですか、それともマンションですか、それはいつ頃造られたものですか、軟弱地盤ですか、それとも硬い地盤ですか、そういうのを聞いた上で「じゃあ、あなたの家はこんな家ですね。震度6強が来ました。揺らしてみましょう」ということで、実際にCGで揺らします。すると、それぞれ揺れ方が違ってきます。ちゃんと地震対策をしている家だと揺れませんし、地震対策をしていれば中の家具は倒れません。しかし、何もしていなかったら家具は倒れるし、下手をすれば家にひびが入るという形のものを見てもらって、「さあ、あなた方はどうしたらよかったんでしょう」ということを想像してもらいます。一通り想像してもらった上で、勤務者として通勤路をチェックしてもらいます。危険箇所はどこにあるか、家族とどう連絡を取るか、地震に強い家づくりはどういうふうにしたらいいかなどを考えてもらいます。普段から注意していれば、屋根の上や塀の上に植木鉢があるような道を通らないと思うので、そういうことを皆に知らせていくということをやっています。実際にやってみると、自宅周辺について調べるようになったという声も聞きますし、先ほどのWEB研修を一緒に子どもが受けて、家の周りを見に行って、危ないブロック塀がある場所などを家の周りの地図に書き込んで、学校に持って行って発表したという話も聞こえてきます。

今年のWEB研修の最後には、家具の転倒防止用の支柱の使い方やガラスの飛散防止フィルムの貼り方、またそれぞれを売っている場所などの情報も載せました。あるいは、お風呂の水はこういうふうに使ってみましょう、食料とか水はこういうふうに買いましょう、買う場合はこちらで買えますよ、ということを知らせるようなページも作りましたので、結構買っていただいていると聞いています。中には非常はしごを用意したり、車の中に非常用の装備を入れておいた人もいたり、我々が考えた以上にやってくれる方々もいて、非常にありがたいし、やってきて良かったと思っています。

まずは自分の家、自分の家族を大切にしてほしいと思います。それができて初めて地域のこともやる、会社のこともやるという形で、どんどん輪を広げていっていただきたいと思います。そういう形になっていくのが多分、理想なのではないかと思いますので、そのために微力でも、今後もこういう仕事を続けていきたいと考えています。防災というと非常に堅苦しく考えてしまうのですが、そうではなく、防災というのは生きるための知恵、想像力だということで、気軽に気長に考えていただくのがいいのではないかと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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