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防災インタビューVol.95

災害知識の再考 ~災害対応時の人の動きを理解するために~

放送月:2013年10月
公開月:2014年3月

関谷 直也 氏

東洋大学 准教授

プロフィール

東洋大学社会学部メディアコミュニケーション学科で、広告論やPR論を教えていますが、もともとの専門は、災害時に人がどう動くか、そのためにどういう情報を流せばいいかを研究しています。ある意味PRや情報伝達というのは、災害時の情報とほぼ同じような方法論を使っており、人にどうやって情報を与えれば、どう人が行動してくれるのかというところが一緒です。現在、私は広告論やPR論を教えながら、一方で災害のことを研究しているということです。

もともとは環境問題に興味があって大学院に入ったのですが、私が大学院に入った最初の年に、福島原発の前に茨城県の東海村で、レベル4に達した大きな原子力に関連するJCOの臨界事故があり、それが初めて調査をした事故災害でした。それから興味を持って、災害のこと、環境問題、また原子力事故のことについてもずっと研究しています。東日本大震災の前に新潟県の中越沖地震があったのですが、その時にJCOの事故を教訓として、どういうふうに複合災害対策を取ればいいかということで、新潟県の委員会、検討会に入って研究をしたり、今回の福島原発の後は事故調査検証委員会がいろいろなところで立ち上がっており、私は政府の事故調査検証委員会の事務局、裏方として作業をしていました。もちろん津波の調査もやっているのですが、JCOの臨界事故以来、特に今回の福島原発の事故の後は、風評被害について研究しています。災害と人の心理に関わることなら、取りあえず何でも研究してみようということでずっときているという感じです。

福島原発問題のその後

現在は、福島原発問題の渦中にいるというよりも、そういった原発事故の教訓や事故災害の教訓をいつの間にか忘れて、再稼働とか、どうやって再開するかといったことに、どちらかというと焦点が移ってきてしまっています。しかし私が今思っているのは、当時の福島原発事故の避難の問題です。全世界に原子力発電所がこれだけたくさんあり、また事故が起こらないとも限らないので、今回の教訓をまずきちんと踏まえなければいけないと思います。今、福島では、安全な食品も買われないという風評被害の問題が起きています。そういったことにも、きちんと対処していくことが必要ではないかと思っています。

現在、福島の食品について、人体に影響があるのではないかと不安に思っている方も多いと思いますが、少なくとも今、市場で流通している食品は基準値以下というよりは、むしろ放射性物質が検出されない「ND」というものなので、完全に安全なわけです。事故直後は、放射性物質が出ているものが恐ろしがられて買われないという問題がありましたが、今はそうではなく、安全な物なのに買われないという問題になっており、その当時とはちょっと違ってきています。きちんとそのあたりを理解していくことが、まず大事なのではないかと思います。

風評被害について

風評被害というのは、今回の原発事故の前もいろいろな所で出てきた言葉だと思いますが、もともとは1954年の第5福竜丸被ばく事件といって、広島、長崎に次ぐ第3の被ばくと言われた事件がありました。これは焼津の漁船が太平洋のビキニ諸島で操業しているときに、水爆実験に遭ってしまって、帰ってきた後1人が亡くなり、あと何人も被ばく症状を起こすというような事件で、その後、魚から放射性物質が検出されて、魚が売れなくなったというものです。それ以降、いろいろな所で原子力に関連する事故が起こると、必ずこの手の問題が出てきています。

第5福竜丸被ばく事件のときは、実際には放射性物質が検出されたものは全て廃棄されており、安全な物が売れなかったというような話ですし、それ以降の原子力船むつの事故、敦賀原子力発電所の事故などでも、実際、放射性物質が外に出ていないけれども、皆が恐ろしがって買わないということがありました。そこで「安全なのに売れないというものもきちんと保証してくれ」ということで、風評被害というのが問題になってきました。公害だと、実際にどれくらい汚染されているか分からないので、例えば水俣病でも、有機水銀がどれくらい魚に入っているかを検出することはなかなか難しいです。放射性物質の場合は今、福島でやっているように、きちんと測って検査をすれば、そこに放射性物質がどれくらいあるかが、はっきりと分かります。安全な状態かどうかがきちんと分かっていて、安全なのに売れないという意味で、風評被害という言葉が使われるようになりました。福島の魚についても、現在、福島で水揚げされているものは遠洋のものが多いので、基本的には問題ないでしょうし、イノシシの肉とかキノコなど放射性物質が出やすいものははっきりしているので、今、少なくとも市場に出回っているものは、ほとんどは検出限界値以下というか、機械で測る能力を超えているぐらいの安全な物です。今は実体として「それくらいだ」ということを、きちんと理解することが大事だと思います。

実際、メディアや政府も安全性などをPRはしているのでしょうが、「安全だ、安全だ」と言われると、それは逆に何かあるのだろうと不安になって買わないということも出てきます。むしろ私たちは、そういった安全だという何となくのアピールよりも、実際に機械で検出されないぐらいに安全な物が出回っているのだということを理解していくことが大事です。それでも嫌だという人が買わないというのは、ある意味、消費の選択の自由なので仕方がないと思うのですが、少なくとも安全な食品が出回っているのを、避ける必要はないわけです。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。