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防災インタビューVol.95

災害知識の再考 ~災害対応時の人の動きを理解するために~

放送月:2013年10月
公開月:2014年3月

関谷 直也 氏

東洋大学 准教授

地震の時の緊急避難

私たちは地震の時にどう行動すればいいかというイメージを、なかなかはっきりとはつかんでいないと思います。新潟県中越沖地震の時に詳しく調査をしたのですが、地震の時にけがをするパターンは、ある程度決まっています。例えば居間や自分の部屋にいると、大抵寝転がったり横になっていることが多いので、その場合は何か物が飛んできて、上半身をけがするという場合が多いです。一方、台所や調理場にいる場合は物が飛んできて、けがをするというパターンが多いです。食事を用意するときなどには包丁や食器などが近くにあるけれど、それは耐震化ができないので、それが飛んできて、けがをするというパターンがとても多いです。調理場で特に気を付けてほしいのは、外食チェーンなどによくある、油がたくさん入ったフライヤーです。地震でフライヤーが揺れると、油が波のように揺れてやけどをすることがありますので、調理場というのは危険です。外にいる場合だと普通は立っているので、転倒によるけがが多いです。このように地震の際に、いる場所によって、どのようなけがをするかというのは、ある程度パターンが決まっています。

家にいるときには「まず頭を守りなさい」「机の下に入りなさい」と言われますが、その理由は物が飛んでくるからです。壁が落ちてくるということは、ほとんどありませんし、それくらい全壊になってしまったら机の下に入っても仕方がないので、基本的には飛んでくる物から身を守るために机の下に入るわけです。、例えば台所にいるときだったら、机の下というよりは、むしろ台所から離れたほうがいいわけです。外にいる場合は転倒が怖いので、まずはしゃがむということを事前にイメージしておくことが非常に大切だと思います。また、台所で火を使っていたりすると、止めに行こうとすることがよくありますが、かえって危険です。今はガスはほとんど自動で止まるものが多いので、基本的にはまずはそこから離れることが大事です。次に大事なのは、地震の際に家から外に出たときに、けがをするパターンが非常に多いので、寝ているときにはベッドの脇に靴やスリッパを用意しておいて、いざというときには靴を履いて逃げるようにすることです。慌てて逃げると、ガラスを踏んだり角に足をぶつけて、けがをすることが多いので、逃げる際には、まず足元に注意することが大事です。

このように地震の時に、まずは亡くならないように、身の安全を守るために耐震化して安全な家に住むことが大事ですが、自分自身がけがをしないというのもとても大事です。皆がけがをして病院に殺到すれば、重傷者を助ける余力がなくなってしまうので、まずはできるだけ自分がけがをしないということが町の、より多くの人を救うことにつながりますので大事だと思います。

大震災の時には、その場にとどまる

東日本大震災の時は、電車が止まって帰れない人が多くなって、帰宅困難者が増えたわけですが、東京都内で多くの方が亡くなったり、さまざまな大混乱が起こるような大地震の時は、どちらかというと帰宅困難の問題ではなくて、火災のほうが怖いです。いろいろな所で大規模な火災が起こると、少なくとも今の日本の現状の消防の力では止めることはできませんので、ある程度鎮火するまで安全な広域避難場所で待つのが一番正しい避難の仕方です。今回、電車が止まって、皆が歩いて家に帰ろうとしましたが、それが怖いということになります。どこで火が回っているかよく分からないうちに、いろいろな所を歩いて帰って行こうとすると、周りが火に取り囲まれたら逃げる場所はないわけです。特に帰宅困難者で家に帰ろうとする人は、東京都心部に働いている方が多いですが、東京の都心部というのは木造住宅が少ないので、火災が起こる可能性が少ないです。そういう安全な所にいるのでしたら、そこにとどまっておくことが大事です。

帰宅困難者に対して「歩いて帰ると大変だから、そこにとどまってください」とよく言われるのですが、本来はそうではなくて「火災に巻き込まれるのが危険だから動かないでください」と言うべきです。火災が起こる可能性がありそうな場所にいたら、まず広域避難場所に逃げないと駄目ですし、帰れる、帰れないという問題ではないということを、地震の時はきちんと覚えておくことが大事です。

何か用事があるから外に出ているので、地震が起こると「取りあえず帰ろう」と思ってしまいがちですし、ビルの中にいたら揺れますので「怖いから外に出たい」と思ってしまいます。ビルから外に出るのは仕方がないと思いますが、移動しようとするのが地震時にはリスクになります。特に大きな地震の時は情報が入ってこないし、停電になったり携帯が輻輳したりして、すごく不安になりがちですが、きちんとした安全な帰り道が確保されるまでは、できるだけ動かない、もしくは広域避難場所という安全な場所にとどまることが一番、自分の身を守るやり方です。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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