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防災インタビューVol.99

防災スマートグリッド ~イカ釣り船の電気を陸へ送る~

放送月:2014年2月
公開月:2014年7月

刑部 真弘 氏

東京海洋大学教授

マンションにおける「電力の見える化」について

現在、横浜のマンション1棟の電力をWebで見られるようになっています。Webで電力の使用状況を見ることで、住民の方が電気をどのように使って、どのように節電しているかが分かり、それを意識することで、住民の方々の間での連帯感が生まれると思っています。今は1棟ですが、今後300軒ぐらいある大きなマンションでも、このようなシステムをとり入れて「電力の見える化」を進めていこうとしています。

この「電力の見える化」のためのスマートメーターを取り付けると、1軒1軒ではなく、そのマンション全体でどれくらいの電力を消費しているのかも分かります。東日本大震災の時には、計画停電を行って15%の電力を削減することが行われましたが、例えばマンション全体で、このスマートメーターをもとに各家庭で節電をすることで15%の電力の削減ができたとしたら、計画停電は必要なくなります。その意味でも今後、「電力の見える化」をするためのスマートメーターを、マンションごととか町ごとに少しずつ増やしていきます。

緊急時の電力の供給について

東日本大震災の時に電気がなくて、病院の電子カルテが見られなかったという話をしましたが、このような事態に備えて、我々の「スマート構想」の中には「緊急時には船から電気を給電しよう」という構想があります。

港に近い所にならば船から直接電気を送ってもいいのですが、我々が考えているのは、船の電気をEVといわれる電気自動車に急速充電して、その電気自動車を電気を必要としている所まで走らせて、電気を供給するものです。このことにより、電気自動車は人だけでなく電気も運ぶことができるわけです。現在、横浜や久慈市でそういった構想を進めようと考えています。

私が住んでいる豊洲では、昭和大学の新豊洲病院を建設中で、2014年3月にできるのですが、そこは停電になっても72時間、非常用発電機が動きます。その後、燃料がなくなった場合には、船から電気を送る仕組みをつくりました。船の燃料タンクは非常に大きいので、それで電気を起こせば、かなりの電力が供給できます。例えば、我々の持っている大学の練習船でも、電気を1カ月ぐらい給電できる力があります。船からの電気が供給できる仕組みを新しい病院につくることで、震災などで電源が喪失しても、きちんと患者さんの面倒が見られるような体制を少しずつ構築しているところです。

また、東日本大震災の時には高層マンションでも停電が起こり、特に年配の方々が、エレベーターが動いていないので自宅に帰れなかったという、いわゆる高層帰宅難民が発生しました。これも、停電時でもうまく電気を給電するような仕組みがつくれれば、そういうことはなくなります。しかも高層マンションは非常に丈夫なので、そこが避難所になり得るわけです。実際には、マンションに住んでいる方は避難所に行くのではなく、なるべくマンションにとどまってほしいとされていますが、もし電気が来なければ、そこはただの箱になってしまいますので、何とかうまく電気を供給できるような仕組みを構築するために、都内でも検討しています。

このように、今の文明はいろいろなものが電化されて非常に便利になっているのですが、ひとたび電気がなくなると大変なことになることが、東日本大震災を通してよく分かりました。もしもの災害のときの電気の供給源については、きちんと準備していく必要があると思い、研究を続けているわけです。

船からの給電システムの構築

大型客船クイーンメリー号というのをご存じだと思いますが、この船は横浜にも何度か寄港しているのですが、非常に大きくて、ベイブリッジをくぐれないくらいの世界最大級の客船です。今の客船というのは船の中で発電してモーターを回して進んでおり、ホテル機能も兼ね備えているので、膨大な発電する能力を持っています。大型客船クイーンメリー号も、一般家庭20万軒ぐらいに電気を供給する能力があります。そのような船が、例えば横浜の沿岸域に電気を供給したら、横浜はものすごく安全な町になると思います。

我々の練習船というのは非常に小さいのですが、それでも燃料タンクが大きいので、1カ月ぐらい病院などに電気を供給する能力があるというお話をしましたが、このように船というのは巨大な電力を生み出し、そしてかなり長期間、電気を供給できる能力があります。海洋国日本の周りには船がいっぱいいますので、船をうまく使うことができれば、防災に非常に役に立つものになると思っております。

東日本大震災の時に、福島第一原発は残念な結果になったのですが、実は津波が来る直前に港内にいた船が沖に出て、津波を避けてスタンバイしていました。そこにはかなり電気があったので、もしその電気がうまく発電所に供給されていたら、もしかしたら今のような事態は避けることができた可能性が高いと思います。現在は、船は船の中で電気を使い、陸は陸で電気を使っていますが、うまく船から陸に電気を送るような仕組みをつくれば、ある程度の危険は回避できる、防災上、非常に大事な概念になると思っています。

実は2013年に、横浜で「スマートイルミネーション」というのを行いました。この時は実際に我々の技術を使って、電気を船から供給しました。船にも電気があって、その電気を利用することができることを皆さんに分かっていただきたくて、一部、船から電気を供給して、イルミネーションをやりました。また横浜の八景島にも、たくさんの方が訪れていますが、あそこにも実は船から電気を送る仕組みをつくってあります。いざというときは、電気がきちっと供給できるようになっています。そういったものが少しずつ、この10年間に増えてきています。

日本の国土の広さ自体は世界で60位ですが、日本の持っている海の広さは世界6位です。日本は海をたくさん持っている国ですので、周りにはたくさんの船もあります。そういった海とか船をうまく防災に役立てることができれば、日本は地震が多い国ですので、海からレスキューされるというか助けてもらうことができるようになるといいと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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