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防災インタビューVol.102

高校生による耐震診断 ~減災対策を世界へ~

放送月:2007年1月
公開月:2014年10月

菊池 貞介 氏

千葉県立市川工業高校 建築科主事

八島信良先生との出会い

私たちの学校は平成15年から文部科学省の研究開発指定を受けて「目指せ、スペシャリスト」、後にスーパー専門高校となり、開発プログラムの指定を受けます。それ以前に、日本大学理工学部の海洋建築学科の八島信良先生からお手紙で「木造住宅の耐震診断をやってみないか」とご提案いただきました。先生は木造住宅の補強をやりたいということで大学の研究機関を探したけれど、どこもやっていなくて、工業高校の建築科では木造をやっているらしいということで、私たちに声が掛かりました。八島先生には平成15年4月からうちの学校に講師として来ていただきましたが、学校は貧乏で交通費も出せないような状況でしたので、ボランティア講師として週2回、生徒たちの指導に当たっていただきました。八島先生は、もともとは造船会社のエキスパートエンジニア、要するに他の方がまだ誰もやっていない研究をやるエンジニアということで、大変なお仕事、研究をされている方ですが、木造の研究、木造耐震補強の研究は新しい分野であるということで「一緒に勉強しましょう」という姿勢で取り組んでくださいました。そのおかげで、大学の研究施設を見せていただいたり、知り合いの研究機関のお手伝いを受けたり、非常に活動の幅が広がりました。何よりも木造住宅の耐震診断というものがあることを、先生を通してまず知ったわけです。ビルの耐震技術については、日本では昔からかなりの技術を持っているのですが、木造住宅の耐震については、恐らくここ最近だと思います。一部宮城県の方では危機的な状況が出ているので、建築士会が主導権、リーダーシップをとって、地元の工業高校と勉強していることは聞いておりますが、このような耐震診断というのは、恐らく初めてだと思います。一般住宅としては、マンションやプレハブメーカーも耐震診断を行っていますが、在来の住宅、いわゆる大工さんが建てた家が、どういうふうに揺れて、どういう危険性があるかを勉強するのは初めてで、これも八島先生のおかげだと思っています。私も、もともとの専門は都市計画でしたので、生徒と一緒に机を並べて勉強を始めました。

実験から入る耐震診断

地震の勉強は振動理論から入るのですが、これは大学後期のレベルで非常に難しくて、生徒も眠ってしまいそうになりますが、先生は工夫をして実験から入りました。生徒たちは目の前で起きている現象のデータを取って整理し、それを公式に当てはめたら理解が進みました。通常の授業であれば概論から入って、先人たちが見つけた理論、公式などを学び、それを実験で追体験していくわけですが、生徒たちは難しい公式にはなじめませんでした。そこで先生と相談して、小さいけれども実験をまずやってみて、どのように揺れて、どこでデータを取ると応答倍率が見つかってくるかということもやってみました。そうしましたら、生徒は夢中で見てくれました。生徒たちの目の前で展開されるダイナミックな実験に目が輝きまして、後々Excelを使った難しい分析にも付いてくることができたのは驚きでした。難しい、いろいろな現象も、簡単な実験に取り組ませて、そこから理論的な裏付けをしていく、こういう勉強方法の大切さをあらためて知りました。生徒たちにとっても、今勉強している内容が大学でやっているのと同じだということで、とても励みになりました。何人かの学生は大学に入っても耐震を勉強したいということで、難関だったのですが八島先生がいる日本大学理工学部に入り、現在もビルの耐震設計の研究室に入って勉強している学生もいます。

このように実験を通して学んでいる耐震診断ですが、実際に診断をする前に予行演習をやらなくてはいけません。八島先生に自宅を開放していただき、奥さまの協力も得て、床下収納庫を開けて床下を点検させてもらったり、天井裏に上がって実際に梁を伝って歩かせてもらうことを実践させていただいたおかげで度胸がついて、実際の家の調査もスムーズにいきました。

最近では耐震診断だけでなく、家具が転倒して下敷きになって亡くなるという残念な結果をもたらさないように、家具の固定化についても新しい取り組みをしようという話も出ています。私もそばにいて先生の話を聞いていると、取り組みの姿勢が本当に新鮮で、将来年を取ったら先生のようになりたいと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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