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防災インタビューVol.105

地域コミュニティーづくりと人が死なない防災計画づくり

放送月:2014年6月
公開月:2015年1月

安部 俊一 氏

よこすか海辺ニュータウン連合自治会長

災害時在宅避難生活継続計画の作成

2013年の5月に内閣府が出した見解の中では、南海トラフ巨大地震、あるいは首都直下地震のような大規模な災害が発生した際に、学校などに開設される既設の震災避難所は、住む家をなくした人たち、いわゆる地震で倒壊したり、火災で焼け落ちてしまったり、あるいは津波で流されてしまって住む家をなくした人たちが優先的に入れる場所というふうに考えています。従ってマンションのような頑丈な建物の居住者は避難所に来ないで、マンションの中で在宅避難生活を継続してほしいということです。逆に、巨大地震が発生したときには頑丈なマンションは、近隣の戸建て住宅地区の住民の駆け込みシェルターになるということも考えておく必要があるわけです。そういう意味からすると、住む家をなくした人たちは避難所に行って、そこで給水、あるいは給食、いろいろな生活支援を受けられますが、マンションに住む人たちがマンションに踏みとどまって在宅避難を継続しようとすると、そこで1週間以上、在宅避難生活を継続できるような仕組みをつくっておかなければいけないということです。それを可能にする防災計画というのがMLCP、これはマンションライフコンティニュイティプランと言って、企業が作っているBCP、ビジネスコンティニュイティプランのマンション版です。そのMLCPの普及を促進している団体が一般社団法人マンションライフ継続支援協会で、略称「マルカ」です。私もここの理事を務めていますが、このマルカではマンションの管理組合や自治会などの代表者、あるいは防災責任者を対象としたMLCPプランナー養成講座を各地で開催しています。MLCPプランナー養成講座には初級と中級、上級のコースがあり、上級コースの修了者には、マンション独自の防災計画を作って防災訓練を指揮し、災害発生時には災害現場で陣頭指揮を執ることを想定して実践的な研修を行っています。ですからこの研修を皆さん受けていただいて、本当に災害対応能力を高めると同時に、災害現場の陣頭指揮を執れる人材を育成、確保していくことが、これからの災害対策では重要なことだと考えています。

中高生による「ジュニアレスキュー隊」

私が住んでいる横須賀のマンションでは、平成25年度に「ジュニアレスキュー隊」という、中学生、高校生からなる災害時生活援助隊を結成しました。これは結構各方面から注目されていて、新聞とか雑誌とかテレビでも取材されて放映されています。

3.11の東日本大震災が発生した直後、私のマンションでも周辺に広域停電が起こり、エレベーターが停止し、高層難民が発生しました。上下水道は使えず、トイレも使えなかったので、高齢者を中心に生活困窮者が多数発生したわけです。これらの生活困窮者、いわゆる災害時要援護者に対しては支援体制を組んでおりましたが、自主防災会の役員の多く、現役の役員は7、8割帰宅困難者になってしまい、マンション内にいた防災役員は定年退職した男性や専業主婦、あるいは高齢の女性でした。その中でも足腰が達者な人たちが陣頭指揮を執って、高層階に住む要援護者の家庭に20リットル入りのポリタンクで給水支援を行いました。ところがエレベーターが使えないので、非常階段を使って十数階まで20リットルのポリタンクを持って上がるのは大変なことです。大人がこの非常階段1往復で音を上げていた中で、高校生が応援に駆け付けてくれて何回も往復してくれ、高齢者の家庭に水を届けたり食料を届けたりしてくれました。それにヒントを得て「ジュニアレスキュー隊」という生活援助隊の結成を呼び掛け、現在34名の隊員が登録しています。中学生や高校生の多くは、歩いて1時間以内ぐらいでマンションまで帰宅できるので、消火活動や救助活動など危険を伴うような作業には従事させられませんが、非常階段を使った食料や飲料水の配給、あるいは買い物支援などに期待を寄せています。

首都直下地震クラスの地震が発生すると、大勢の帰宅困難者が出てしまいます。お父さんとお母さんが帰宅困難者になり、園児や児童が幼稚園、小学校に取り残されている場合、うちのマンションでは、防災会の役員、あるいは自治会の役員が親に代わって、園児・児童の引き取りを行うことを取り決めていますが、引き取ってきた子どもを自宅に戻しても、お父さんやお母さんがいないところでは不安になってしまいます。こういう子どもたちや高齢者をゲストルームやパーティールームに集めて、避難所として集合させて、そこで生活のお世話をし、何日間もそこで煮炊きをして、仮設トイレを作って生活を維持させていく予定にしています。その中でも中高生のジュニアレスキュー隊員、特に女の子の隊員が、不安になった園児や児童のお世話係をしてくれるように養成しております。

小さな力を大きな力に

マンションの居住者一人一人が「自分にできることは何なのか」をきちんと考えて、自分一人の力は小さな力ですが、その小さな力を自発的に持ち寄って、少しずつ役割を分担できるようになれば、強力な防災力が発揮できるようになると思います。そのことに住民が共感して一緒に動こうとすることで、近所付き合いが希薄になりつつある世の中で、こういう取り組みを行うことは、とても大切です。ぜひ皆さんにもやっていただきたいと思っています。

私のところのマンションは、そういう意味では比較的新しい高層マンション、大規模マンションですが、実際の運用は現代長屋の運営をしています。私の家にもしょっちゅう内孫代わりの小さな子どもたちや大人たちも集まってきて、第2自治会館みたいな感じになっている状況です。皆さんにも、ぜひ常日頃から、災害から身を守るためにも、このような付き合いを続けていってほしいと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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