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防災インタビューVol.107

日常生活から防災を考える~内閣府で得た防災意識~

放送月:2014年8月
公開月:2015年3月

渥美 洋行 氏

農水省 バイオマス循環資源課係長

非常時のための備えについて

防災対策の一つである備蓄については、基本的に内閣府や政府からは「3日分以上の備蓄をしてください」と言われていますが、首都直下型地震だと1週間分ぐらいが必要だと言われています。まずは生きていくために必要なものとして、基本的には水などは備えておいたほうがいいとは思いますが、かなりの量を用意しないといけません。全てそろえるのもなかなか難しいですし、実際に全部持ち出せるわけではないので、正直に言うと、ある程度割り切るしかないと思います。しかし、ただ全く無いよりは有ったほうがいいと思いますので、普段から水などは用意してあればいいと思います。防災用品として長持ちする食料や水も売ってはいますが、一般的に値段が高いので、私は運動をしている関係もあってゼリー飲料を普段から用意していますが、普通の水を用意すればいいと思います。もちろん防災専用のものをそろえられるのであればいいのですが、災害が起こらず備蓄していても無駄にしてしまうこともあります。そういう意味では専用のものではなく、長持ちするレトルト食品のようなものを少し多めに買って、必要なときに食べて、食べたら補充するというように、できるだけ普段のものを生かしていくのが非常にいいと思っています。

同じように「日常品を生かす」ということで言うと、このような話もあります。東日本大震災の時には懐中電灯が電気屋さんで売り切れていることが多かったのですが、うちの母親が懐中電灯を買いに出掛け、とても面白いところから調達してきました。「どこで買ってきたのかな?」と思って聞いたら、自転車屋さんで買ってきたそうです。マウンテンバイクなどは標準でライトが付いていないので、外付けでハンドルに付けたりするものが置いてあり、それを買ってきたのですが、なかなかすごい発想だと思いました。もともとマウンテンバイクを持っている人は、懐中電灯は持っているということになります。普段から当然自転車に乗っていればそのライトは使いますし、普段から使っていると電池も切れてしまうこともあるので、準備しておいて基本的にすぐ交換することになります。自転車に乗っている方は、そういうライトを買っておくと普段からも使えて、かつ非常時には懐中電灯としても役に立つので、なかなか便利なのではないかと思います。

また、避難行動を取る際には、どういう形で逃げて行くのかにもよりますが、手が使えるようなものに荷物を入れていくのがいいと思いますので、基本的にはリュックがお勧めです。その他には、たくさんポケットがある釣りのときのベストなどが便利で、こういうベストを玄関などにぶら下げておくと、災害が起きたときにぱっと取って逃げられるので非常にいいと思います。特にベストがいいと思っているのですが、これはちょっと残念な話ですが、袋を持って避難した場合ですと、ひったくりに遭う可能性もあり得ます。東日本大震災の時、比較的皆さん節度を持って避難されたこともあって、そういうことは少なかったのですが、混乱期なのでどのくらいあったかは定かではありませんが、残念ながらそういうこともあったという話は聞いています。東日本大震災の際は東北で津波の被害が大きかったのですが、あくまで被災が多かったのは東北の方であって、首都直下地震が仮に起きた場合には、津波よりは火災や建物の倒壊による被害が多くなり、帰宅困難についても、東日本大震災のように比較的建物がきれいな状態では済まない状況になります。非常に混乱する可能性は高く、できるだけ自由に行動できるような形にしておいたほうがいいので、リュックとかベストを用意しておくことをお勧めしたいと思っています。

災害への備えとしていろいろ話しましたが、皆さんが考える際に気を付けてほしいのは「あまり完璧を目指さなくてもいい」ということです。完璧を目指すと疲れてしまいますし、災害に、ある意味「完璧」というのはあり得ません。災害というのは一つ一つ性格が違います。人間も一人一人性格が違うように、同じものがないという意味では、それを100%予知することはできません。ただ似ているものはありますので、自分が思いつく範囲で「できることは何か」を考えていけば、それで十分だと思います。

「津波防災の日」について

内閣府では「防災の日」以外にも幾つか防災に関係する日があり、最近ですと「津波防災の日」が11月5日に法律で制定されました。これは平成23年の東日本大震災の後にできたので、まだ知名度的には知らない方も多いと思います。「何で11月5日なのか?」という質問をよく受けるのですが、江戸時代に「安政東海南海地震」という非常に大きな地震がありました。2012年に内閣府から南海トラフの地震で非常に大きいのが起きるという発表をしたと思うのですが、これと非常に似た同じタイプの地震が江戸時代に起きています。その際に和歌山県に濱口梧陵という、現在のヤマサの社長の先祖になる方で庄屋をしていた非常にお金持ちの方がいまして、地震が起きた後、「これは津波が来るぞ」と判断して、山に置いてあった自分の稲むらに火をつけて、住民に避難の合図をしました。住民は山の稲むらに火が付いたので「何だ?」と思って皆で山に見に行ったら津波が襲ってきたので、皆助かったというエピソードがあります。その「安政東海南海地震」が起きたのが旧暦の11月5日だったので、この日を「津波防災の日」と定めました。以前からある「防災の日」は特に災害の対象は定めていないのですが、11月5日は津波に関する意識を啓発しようということで、日を定めて内閣府としても取り組んでいます。全国でもいろいろな取り組みがなされており、特に2014年には全国の7地域で内閣府が主導して訓練を開催するとともに、防災ポスターコンクールなども開催して、ポスターを使ってこういう日を啓発していく取り組みもしています。

空振りでもいい、まず逃げよう

津波に関して言うと基本的には逃げるしかありませんので、その意味では訓練というのは非常に大事だと思います。この訓練についても、最近ですと非常に面白い取り組みをやっているところもありまして、東北地方で「駆けあがれニッポン」というイベントをやっています。津波が起きたときには当然山の方に逃げて行く必要があるのですが、その訓練をもっと面白くやっていこうということで、駆けっこのような形を取り入れて、子どもたちが楽しく参加できるような形で津波の訓練をやっているという話も聞いています。

それと同時に、地震があったら海の近くでは、まず逃げるというのを徹底してほしいと思います。東日本大震災の時にも2日前に大きな地震がありまして、その時に逃げたけれど津波は来なかったので、3月11日の時にも大丈夫だろうと逃げないでいて亡くなった方も非常に多かったと聞いています。その後、古屋防災担当大臣が「空振りになってもいい、無駄になってもいいから逃げる。そういった心が大事だ」と言っていますが、私は大臣の言葉としては非常にいいと思っています。なかなか逃げるのは面倒くさいという気持ちは分かるのですが、1回逃げなかったことによって命を失うということもあります。本当に1回のミスが命取りになることがありますので、ちょっと面倒かもしれませんが、まずは避難をしていただけるといいと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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