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防災インタビューVol.108

防災と金融

放送月:2014年9月
公開月:2015年4月

蛭間 芳樹 氏

日本政策投資銀行 BCM格付け主幹

プロフィール

高校時代に水文学というものに触れました。ちょうどリオサミットがブラジルで開催され、石油戦争の時代から、今度は水の取り合いの水戦争の時代になるというのを東大の先生に教えてもらいました。水文学は天文学と似たような感じで、水の循環に関する学問で、それを勉強する社会基盤、昔でいう土木工学を学ぶために東京大学に入りました。在学中の2004年10月に新潟県中越地震が起こり、そこからが私が防災研究に進む大きな転機、転換期となりました。地震の翌日被災地入りをして約1カ月間、十日町や川口町などでボランティア活動をしました。これが私の防災研究、防災の実践活動の原点になっています。

土木工学、社会基盤学はものすごく守備範囲が広い学問です。大学では構造計算をしながら安全度を計算して、これで建物が壊れない、地盤は大丈夫だということを学び、単位を取っていたわけですが、現実はそうではないと実感し「これは一体何なんだ」という強烈な問題意識から防災研究をしようと思いました。すなわち都市をつくったり町をつくったりする側もいいのですが、それを守る側に興味・関心が大きく向きました。今は株式会社日本政策投資銀行で、BCM格付融資という商品の担当をしています。この商品に関しては、また後ほどご紹介したいと思います。

防災を目指して金融機関へ

前述のように私は現在、日本政策投資銀行で働いていますが「何で防災の研究者、しかも理科系のエンジニアが銀行員なんだ?」とよく言われます。防災の研究を大学院までやっていく中で、ふに落ちないものが私の中にありました。具体的には神戸の地震もそうですし、新潟の地震、あとは足元で言うと東日本大震災もそうなのです。「これが課題だ」「これが教訓だ」と毎回毎回指摘をされているのですが「じゃあ、いつそれを解決するのか?」に、とても関心がありました。防災研究はいろいろされていて、ハードのみならずソフト面でもさまざまなことをやっている方がいらっしゃるのですが、それを見て単純に「金が付いていっていない」と思いました。まさに、この分野です。やはりお金が付かない限りこの分野の解決はないだろうということで、いわゆる防災村というところから一歩飛び出してみようという思いが大学院時代に芽生え、そのような経緯で今、銀行で働いています。以前は、防災という世界の中に金融や経済の人が飛び込んでくるのではないかと思っていたのですが、多分来ないだろうということで、逆に私がそっちに行ってみようと思いました。かつ、彼らのいろいろな考え方、ロジックをいかに危機管理、防災と整合を取っていくか、シナジーを持っていくか、そういうところを仕事にしたいと思っています。

危機を管理するということ

最近、「危機管理」「リスク」という言葉がいろいろな分野で使われていますが、意思決定者や政治家もそうですが、それを正しく理解している方はあまり多くないというのが実情だと思います。

少し解説をさせていただくと、危機を管理するときに専門家は大きく二つの時間軸で考えます。一つは何か大きな危機、災害が起こる前のフェーズ、これを英語で「リスクマネジメント」と言いますが、そういうフェーズと、あとは何か事が起こった後の対応、これを「クライシスマネジメント」と言います。まずこの二つの整理です。防災とはどちらかというと事前防災と最近言われますが、これは前者「リスクマネジメント」に係る分野ですし、神戸のあと言われている減災に関しては、どちらかというと「クライシスマネジメント」のフェーズになります。

まず危機管理にはマネジメントのサイクルがあると思っていただければと思います。先ほど「リスクマネジメント」と「クライシスマネジメント」のフェーズがあると言いましたが、その中には七つか八つぐらいの危機管理の戦術をわれわれは持っています。具体的に言うと、まずやらなければいけないのは、①どういうリスクにさらされているのか、その評価をする「リスク評価」です。「リスクアセスメント」と言います。次は②「被害の抑止力を設定する」ことです。これは英語で「プリペアドネス」と言います。例えば①と②の関係で言いますと、津波のリスクを評価してみたら、50メートルだと千年に1回来るくらいかも分かりません。そうなったときに、抑止力として何メートルの堤防を造るのかということが出てきます。60メートルの堤防を造れば津波にならないわけですが、この抑止力を決めるのは国民です。③その抑止力を越えて来た部分に関しては三つ目の戦術、「被害の軽減力」になります。英語で言うと「ミティゲーション」になります。先ほどの津波で例えますと、堤防を越えて来た津波に関して、いかに早めに避難をして人的被害、建物被害を軽減していくのかというフェーズです。そこにはトレーニング、教育、情報が非常に重要になってきます。この次の戦術として、④「災害の予知」「早期警報」「アーリーウォーニング」というキーワードで示される情報の精度が重要です。例えば緊急地震速報や台風関係の気象予測、津波などの情報が正しくて精度が高ければ被害の軽減に貢献できますし、住民の早期の避難を促しやすいです。以上がリスクマネジメントのフェーズでの四つの整理になります。

次に、今度は事が起こった後、クライシスマネジメントのフェーズでまずやらなければいけないことは、⑤どこがどれだけやられているかという「被害を評価する」ことです。英語で言うと「ディザスター、ダメージのアセスメント」になります。この意味は有事に限られた資源をどこに優先的に投入するかという話になります。それを経て、⑥「災害対応ディザスターのレスポンス」になり、主としてここでは消防、警察などのファーストレスポンダーの方や重要インフラの方々が頑張るようなフェーズ、次いで⑦「復旧」「リカバリー」です。もう少し時間軸が長くなりますが⑧番目は「復興」「リコンストラクション」というフェーズになります。こういうふうに、すごく長い時間軸で災害を管理していくことが危機管理と言われるものです。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。