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防災インタビューVol.108

防災と金融

放送月:2014年9月
公開月:2015年4月

蛭間 芳樹 氏

日本政策投資銀行 BCM格付け主幹

防災と金融

現在、私は日本政策投資銀行の中でBCM格付融資という商品を担当しているのですが、この商品に関して少し背景から紹介したいと思います。皆さん金融というと、どのようなイメージを持たれていますか?例えば足元ですと「半沢直樹」で連想されるものであったり、住宅ローンがうんぬんとか、また「あいつらはATMでしかない」というようなことも言われるのですが、確かにご指摘の通りです。一方で金融機関も社会的なさまざまな責任を果たそうと一生懸命取り組んでいるということも事実です。

その一つの事例が今回紹介させていただくBCM格付融資というものです。通常、金融機関は企業さまにお金をお貸しするときに何を見ているかというと「どれだけもうける力があるのか」「どれだけ担保があるのか」という経済的な評価が中心になっています。これは金融のみならず普通の事業者間のビジネス上の取引でも経済性が重要であり、最近はそこに環境性能なども加わってくると思います。われわれのBCM格付融資においては、着眼点としては企業の有事における防災、事業継続でありこれはBCM、ビジネスコンティニュイティマネジメントと言いますが、その能力を評価させていただく商品です。その評価に応じて融資の金利条件を変え、評価がよければ割安にするというものです。ですから企業のほうが防災対策、事業継続に努力をすればするほど経済的なインセンティブが付いてくるような、まさに自助努力を応援させていただく世界初の金融商品となっており、国内、海外でも非常に評価されています。

仮にA社とB社が同じような売り上げで同じような商品を扱っていて、A社は防災の投資をしないので株主への配当はたくさん出ており、一方でB社は防災の投資をたくさんしているので配当は少しであった場合、市場やお客さんはA社がいい会社だと判断することになります。しかしながら、それは有事にとって弱い会社を社会的に選択していることになり、これは難しい言葉ですが「逆選択」と言います。このように、有事に弱い会社にお金が投資されるようなマーケットに、実はなっているわけです。BCM格付には、そのような情報を補完するような機能もあります。そうやって防災を頑張っている企業を応援し、その企業が社会のさまざまな関係者、ステークホルダーからの応援も受けられるようにすることを金融でつくっていくという商品です。

材料の調達の安全性もそうですし、防災対策などにも気配りをしている会社の商品は高くなるのは当たり前です。安ければいいという価値観でいきますと、災害に弱い、環境にあまり配慮しない企業をわれわれ国民自身、消費者自身がどんどんつくっていることに気付いてほしいと思います。そして、こういう会社の企業価値が高いと評価し、このような社会システムを後押ししてきたのは金融機関でもあるわけで、このことはわれわれ自身の反省でもあります。

自然災害リスク都市ランキング ワースト1位の東京・横浜

2014年3月に、世界で有名な再保険会社スイス・リーが世界の600の都市を対象に、自然災害リスクランキングの都市ランキングを出したのですが、日本は何と600都市の中のワースト10のうち第1位東京、横浜、第4位に大阪、神戸、第6位に名古屋となってしまいました。トップ5を見るとフィリピンのマニラ、中国の沿岸地域、インドネシアのジャカルタという地域が並んでいます。これについては評価の手法が専門的な観点から問題はあるのですが、スイス・リーが世界の投資家に対してこういう情報を出していて、端的に言うと「危ないぞ」と評価されているということです。こういう情報に対して、われわれのBCM格付が一石を投じるものにならないかということで一生懸命頑張っています。東京、横浜、大阪、名古屋が、都市としては非常に弱いと言われているかもしれないけれど、一企業としては頑張っている企業があり、それの足し算でこの評価の逆転を狙っているところです。防災や危機管理、レジリエンスという話をさせていただきましたが、もっとグローバルでの競争という視点の中で、このテーマを認識する必要があるのではないかと思います。

企業における日本の強み

もう一つ面白い数字、421万という数字を紹介したいと思います。これは何だと思いますか?これは大企業から中小企業を含めて、日本にある企業の数です。このうち大企業は12000ぐらいしかありませんので全体の0.3%ぐらいで、ほかはほとんど中小企業だということです。世界中の企業を見てみると、いわゆる老舗、超老舗と言われ、創業200年以上続いている企業の数は全世界で5500社あります。そのうち実に3000社が日本にあります。第2位のドイツは800社です。オランダが200社、フランスも200社という感じなのですが日本には3000社あり、ちなみに世界最古の企業は「金剛組」で創業1400年、1500年と言われています。

このことで何を申し上げたいかというと、危機管理、レジリエンスという話をしましたが、日本は民間企業がこれだけ長続きをして商売ができるような社会のシステム、環境を持っているということです。ずっと昔から日本というのは自然災害がありながらも、それだけの強さがあることを、もっとわれわれ日本人が把握しなければいけないと思います。世界最古の国も日本ですし、世界で一番長続きしている王朝も天皇家です。このように長続きする仕組みを日本は持っているということなのです。

彼らの投資の基準、目線として、基本的に短期でどれだけ収益を上げたかという物差しで測ると、あのような評価になってしまうのですが、違う評価軸をわれわれがつくっていかなければいけないのではないかと思います。その意味でもBCM格付は日本の社会や企業が持っている、財務の数字では出てこない非財務の力強さ、ある意味陰徳といいますか、そういう力強さを探求するような商品でもあります。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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