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防災インタビューVol.109

市民の危機管理と住民の責務 ~地域コミュニティーを通じ、平時から備える~

放送月:2014年10月
公開月:2015年5月

中澤 幸介 氏

新建新聞社取締役 リスク管理ドットコム編集長

市民の危機管理

「危機管理」という言葉を聞いたときに皆さんどのようなものをイメージされるでしょうか? 東日本大震災では何度も危機管理という言葉が飛び交いました。「事前にリスクを把握できないような想定外のことが起きたときにこそ危機管理が問われる」とよく言われるのですが、それ以前に、もっと身近な危機管理こそが必要だと思っています。

皆さん冗談で夫婦げんかをしたときなどに「家庭の危機管理ができていない」と言ったり、会社からかなり怒られたときに「危機管理ができていなかった」というような言葉を使って表現したり、いろいろな場面で「危機管理」という言葉の使い方をされていると思います。アメリカでは「危機管理」という言葉を「クライシスマネジメント」と言いますが、実際には被害の規模に応じて、ちょっとした小さな出来事ならば「インシデントマネジメント」、大きな災害に関しては「エマージェンシーマネジメント」、それから国の存続そのものを脅かすような本当に大きな危機に関しては「クライシスマネジメント」という言い方をして、それぞれ使い分けをしています。しかし、日本語だと全部「危機管理」です。僕はその文化をもっと生かして、身近な危機管理を進めていくべきだと思っています。

危機管理というのは事前の備えと、起きた後どうするのかという事後の対応、この二つを組み合わせて考えることが非常に大切ではないかと思います。例えば「新しい家を建てて耐震化したので、もう地震は大丈夫だ」と思っている方がいるかもしれませんが、実際には自分が家の外にいて、地下鉄の中やエレベーターの中で地震に遭遇するなど、いろいろなケースが想定されます。その時には、家を建てたこととは関係なくなってしまいますので、やはり危機管理の基本は、なるべく想定していない事態を少なくしていくことが大切で「もし自分がどこどこで被災をしたら」と考えることから始め、「じゃあ、こんな状態になったら困るから、こういうことをしよう」「こんな対策をしておこう」と考えることで、事前対策のレベルを少しずつ上げていっていただければと思っています。

外で被災したときに備えて、普段いろいろな物を持ち歩いている方がいるかもしれませんが、それを入れたバッグを常に持ち歩いているわけではありませんし、会社に着いてバッグを置いてトイレに行ったときに被災することもあるわけです。それならばポケットの中にこういうものを入れておいたほうがいいというイメージが、どんどん膨らんでいくと思います。気付いたときに一つ一つ対策をしていけば、どんどん危機が起きたときに困るレベルを小さくしていくことができるのではないかと考えているわけです。

平時からの備え

災害に備えて平時から持ち歩くものは、人それぞれ自分の持病などによっても変わるとは思いますが、私の場合、普段持ち歩く防災グッズを一つ袋の中に入れてまとめています。その中で必ず入れているのが防災トイレで、外出時やエレベーターなどでトイレがないときに用を足せるようなものを用意しています。東日本大震災の時に都内で、女性がエレベーターに6時間閉じ込められてしまったという話を聞いたときに、私もおなかの状況がよくないので人ごとではなく考えさせられることがあって、すぐ用意しました。防災トイレと共にティッシュも必需品ですので用意しています。それと、一番僕が重要だと思っているのがポータブルサイズのラジオです。1500円ぐらいで買える安いものですが、週に1回はこのラジオをつけて散歩するようにしています。そうすることによって電池がなくなってきていることに気付くきっかけになるので、電池が終わっていれば早めに交換します。防災用品は必要なときに使えないと仕方がないので、平時からどうやって使うのかを確認しておくことが大切です。その他にも、防災オタクとか言われるほど、いろいろ持っています。けがしたときに縛れるようなガーゼ、震災時帰宅支援マップ、保温性が高くて薄いポケットに入るような簡易寝袋、常備薬の風邪薬、携帯電話とかスマートフォンの災害時用バッテリーなどです。震災時帰宅支援マップは今はアプリなどもありますが、電気が使えなくなることを想定して首都圏の紙の地図を持っています。災害時用バッテリーは、携帯電話やスマートフォンが使えなくなると非常に不便なので、電池のものと蓄電できるタイプのものと2種類持って歩いています。しかしながら会社に着くとバッグを下ろしてしまうので、バッグを持ち歩いていないときに被災した場合に備えて、必ず身に着けている財布の中に2枚の黒いビニール袋を入れています。これは折り畳んでも1ミリにもならないぐらいの厚さで、いざというときにはトイレにもなります。その他、会社では防災手帳、安否確認連絡先など災害時に何をやらなければいけないかを書いたカードを入れており、妻の勤め先、子どもの通学先などの連絡先も全部書いてあります。笑い話ではないですが、一度居酒屋で財布を落としたら、私の安否確認カードに書いてあった妻の名前を見て電話がかかってきたことがありますので、皆さんもそのような工夫をしていただければと思っています。また停電になったときに、キーホルダーにつけて鍵と一緒に普段持ち運べて便利だと思うのは、100円ショップなどで売っているLEDのライトです。あとは笛です。これは、もし自分が閉じ込められてしまって大きな声を出せないときに非常にいいと思います。それから変わったところではコンタクトレンズです。私は目が悪いので、眼鏡が壊れてしまった場合に備えて、財布の中に使い捨てのコンタクトレンズを入れています。これらは誰から教わったわけでもなく、「どこかで被災したらどうしよう」ということを考えながら対策をとっているという状況です。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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