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防災インタビューVol.109

市民の危機管理と住民の責務 ~地域コミュニティーを通じ、平時から備える~

放送月:2014年10月
公開月:2015年5月

中澤 幸介 氏

新建新聞社取締役 リスク管理ドットコム編集長

防災における住人の責務

「防災における住民の責務」という言葉は非常に重い言葉だと思いますし、「責任なんてそもそもあるのか?」と思われる方もいるかもしれません。しかしながら日本の災害対策の一番の法律である「災害対策基本法」の中では「住民の責務」という言葉を使っており、「自らの災害への備え」「自発的な防災活動への参画」をすることが住民の責務であることが盛り込まれています。住民が被災してしまったら、それを助けようとすれば、助けに来た人も危険な目に遭ってしまいます。もっと身近な事例で言うと、防災備蓄ということで「自分たちで食料を3日分備蓄しましょう」とか、多い場所では「1週間分備蓄しましょう」と呼び掛けをしていますが、もし備蓄がなければ被災したときに食べる物に困ることになり、誰かから食べる物をもらわなければならなくなってしまいます。これは強いて言えば誰かが食べる分を自分たちで食べてしまうことになってしまい、災害においては被害者ではなく加害者という立場になっているかもしれないことに少し気付いていただければと思います。

この「責務」ということで記憶に新しいのが、8月20日に広島県を襲った土砂災害の際に各メディアが、行政の避難勧告の発令が遅れたのではないかということを非常に多く取り上げていました。そのこと自体は全くその通りで、私も何で避難勧告を出せなかったのかと思っていますが、恐らく行政のほうは「住民の責務」とは言いづらいと思うので、私も1メディアの編集長として、あえて代弁させていただきますと、やはり行政だけでは被害は免れることはできないので、住民も平時から協力をしていなくてはいけないということです。具体的に災害時に行政や市民が何をしなければならないかを書いた地域防災計画書が広島市にもあり、これを読み返してみると「行政が避難勧告を出すタイミングがこうであるべき」と書いてあるのですが、同時に住民の方々には「自発的に災害情報を集めて、安全な場所への避難を身の安全を確保しながら進めなければいけない」とも書かれています。特に今回は土砂災害危険地域にも指定されていない所で被害が起きたということなので、確かに行政の体制の不備を指摘するべきですが、その危険性があるかないかも含めて住民自らが見極める、そして何かあったときにどうするかを常に考えることは、住民としての責任であり「自分たちの住んでいる町を守る、自分の生活を守ることが責務だ」と考えていかないと、これからの防災には限界があると考えています。

復興のための平時の準備

2008年5月に10万人の命が奪われた四川大地震の後、2010年の時点で「中国は完全復興を遂げた」と発表した中国の防災の専門家に、どのようにして2年という短期間で完全復興できたのかに興味を持ってインタビューしました。それによると、崩れそうになった建物を固めて、被災した市街地をそのまま震災博物館という形にして、全く新しい町を違う場所に開発したそうです。国の主導で一つの市が一つの被災地を支援する体制が取られ、マスターアーキテクトという優秀な建築家を1人選び出して町全体の設計をすることで、見た目も非常にきれいな、景観の整った地域が誕生しました。その専門家からは、住民からもそれほど大きな苦情はなく、比較的スムーズに復興ができたという話を聞きました。その新しい町は非常に大きな都市の近くにつくられたことで新しい工場にも通いやすく、雇用の面も考えられていたということです。ただ、これが日本に当てはめられるかと言ったときに、私は疑問に思います。日本では一人一人が自由、生活を守る権利があり、会社としてどういうビジネスをやりたいという思いもあります。東日本大震災の被災地についても、いろいろな自由が重なって今の日本という社会をつくっているとすれば、国の一声で、もう東北は捨てて、新しい場所に町をつくるからそちらに移れと言うことはできないと思います。では、復興に何年も何十年も時間をかけていいのかというと、そうではなく、なるべく早く復興したほうがいいわけです。それには、やはり普段から自分たちが被災した後、どういう町にするのか、どういう会社にするのか、家庭はどうするのかということを考えておくしかないというのが結論です。こういうことを通じてまちづくり、家庭の在り方などを考えていくと、防災を通じて地域そのものが活性化していく、そういう取り組みが地域コミュニティーを強くして、魅力のあるまちづくりを進めていくことにつながるのではないかと期待しています。

地域コミュニティーを生かして

普段から地域のことに関心を持って、どういう方々が隣近所に住んでいるかに興味を持ち、防災を切り口に、今まで話したこともない隣近所の方と話せるのは非常に美しいことですし、他の目的であるより話しやすく、話すきっかけにもなると思います。その中で、自分たちの町をどうしていこうかということを一緒になって考えられるコミュニティー活動を各地で展開させていけば「あそこの町はこんなまちづくりをやっているぞ、うちもこういうことをやらないか?」というような、いい意味の競争が各地で起こってくると思います。それによって「うちはこんなに良くなった」ということが生まれ、これは今、安倍政権の掲げている地域創生にもつながってくるのではないかと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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