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防災インタビューVol.115

防災を文化として定着させるために

放送月:2015年4月
公開月:2015年11月

坂口 浩規 氏

㈱電通 ビジネス統括局 国内関係会社部長

防災と心理

いくら話題になっても「防災」というのは、ブームにならないと言われていますが、その理由もいろいろ分析されています。よく言われているのが「正常化バイアス」というキーワードで説明されていますが、人間は不安なことを毎日考えると、それこそ病気になりかねないということです。「自分は大丈夫」「考えてもしょうがないことは考えない」「防災を真剣に自分のこととして考えたくない」という無意識な心理が働くというものです。要するに暗い話、考えてもしょうがない話は、一時的に耳は傾けても、皆こぞって話題にするようなブームにはなかなかならないという考え方です。

ブームというのは「物」「行動」「思想」の3つが流行するということで定義されています。これを防災にあてはめてみると、「物」であれば防災グッズが飛ぶように売れるというブームです。「行動」であれば避難訓練の参加に列ができるようなこと。「思想」であれば防災に関する本がどんどん売れるとか、人々が防災に関することを毎日話題にするようなことで、こういう「物」「行動」「思想」が防災に関して、「正常化バイアス」が働いている人々の間でブームになるような状況が起きるかということです。つまり、そういう生活者の心理を無視して、防災の定着を図ってもなかなか結果につながることは困難であると考えるべきだと思います。

防災を文化に

防災をわが国の文化として定着させていくことを願っていますが、文化というためには、一度ブームになることが大事です。ブームという言葉に対してあまりいい印象を受けられない方も多いかと思いますが、韓流ブームというのもありましたが、今は定着して、ある意味一つの文化になっていたりしますし、漫画やアニメについても、最初はそれがわが国の文化になるとは思っていない向きもありましたが、今は完全に、漫画は「クールジャパン」というように、日本を代表する文化になっています。最初はブームとなって社会にワァーと広がっていって、それが定着していくことで文化として根付く。まあ定着しないブームもありますが、その流れが防災にも必要とされています。

例えば「健康ブーム」というのはあっても、病気はブームにならないと言われています。健康は明るい話題で、皆さん誰しも健康になりたいと思っています。そこで、健康茶や、健康法などのブームが広がります。一方病気というのは暗い話題で、病院の待合室で互いの病気自慢はよく見かける光景だと思いますが、あくまでも個人的な話題の範囲にとどまってしまって、それがブームになることはありません。

これを「防災」と「災害」ということで考えますと、逆転現象が起きているのが非常に面白いと思います。つまり暗い話題であるはずの災害というのが、実はよく話題になります。富士山の大噴火、首都圏の直下地震やいろいろな地域の火山噴火などの災害についてはよく話題になりますが、それを解決する明るい話題のはずの「防災」というのは逆に話題になりにくいという状況があります。つまり先ほどの話でいくと、病気を克服するために健康になるにはという話は話題になるけれど、災害に関しては、防災という解決するほうの話が話題になりにくいということになります。

わが国は世界有数の自然災害大国です。過去災害に関するいろいろなブームもありました。例えば「日本沈没」は、ある年齢以上の方はよくご存じだと思うのですが、日本にいろいろな自然災害が起こって、やがて沈没してしまうというショッキングなストーリーだったのですが、当時本は飛ぶように売れましたし、一種のブームを巻き起こしました。こういったことはあったのですが、だからと言って防災ブームは起きなかったわけです。大災害に備えて防災をしよう、制度を整えようというブームはなかなか起きなかったわけです。そのように過去、自然災害をテーマにしたような話題は真剣に語られて、その災害を避けるために移住までした方々もいらっしゃったと聞いています。

このように、災害はブームになるけれど、防災はなかなかブームにならないということは、先ほどの「人間は暗い話は避けたい」という「正常化バイアス」の心理もあるわけですが、なぜ課題解決のための防災が話題になりにくいかは、われわれとしても勉強しなければいけないことだと思っています。

防災をブームにしていくための手段は、「とにかく話題にされやすくすること」だと思います。韓流ドラマの例が分かりやすいと思いますが、例えば「冬のソナタ」という番組がなかったら、あそこまでブームになったんだろうかと疑問に思います。何か一つのきっかけがやはり必要です。防災については、何をきっかけにするのかを考えていくことが重要です。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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