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防災インタビューVol.115

防災を文化として定着させるために

放送月:2015年4月
公開月:2015年11月

坂口 浩規 氏

㈱電通 ビジネス統括局 国内関係会社部長

競争原理を取り入れた防災

私は日本人のもともと持っている文化をベースにしながら防災を定着させていきたいと考えていますが、日本人が好きな競争原理を防災に取り入れることで防災が話題になり、物や行動や思想が定着していくことの手助けになるのではないかと考えています。

日本人はとにかくランキングものが大好きです。これを「同調圧力」と言いますが、この同調圧力がそもそもコミュニティにあるからかもしれません。「みんなで同じことをしよう」「みんなで同じものを好きになろう」という同調圧力があると、悪い意味でもいい意味でも言われたりしますが、そのような傾向がもともとあるということです。日本人は、世の中でヒットしているものが好きです。「みんなに人気が高いものはいいはずだ」「多くの人が使用しているものに価値がある」という考えです。これはある意味、個性尊重という見方とは若干違うのですが、みんなのことが気になるということです。「みんなが何を食べているか」とか、「みんながどんな番組を見ているか」とかがとにかく割と気になって、人気があるものに関しては自分もちょっとチェックしておこうという心理が特にわれわれにはあると思います。それに乗っかっていろいろな番組や商品が実際にヒットしたりしています。そういう意味では、確かに流行に敏感な民族だというふうに言えるのではないでしょうか。

そこで、防災を地域間の競争にして、防災の対応に優れた自治体を、例えば上位トップ10とか、トップ20でもいいのですが、ランキング化して毎年発表するというようなことができないかなと思っています。全部ランキング化すると、ランキングが一番低い自治体はどうするかという問題もあるかもしれませんが、ランキング上位の所だけでも発表していけば自然に競争原理が生まれ、日本全体の防災力が上がっていくのではないかという切り口です。

防災力向上のためには、物の普及、構想の普及、思想の普及が不可欠ですが、そのための制度作り、人作り、自治体や民間の努力が欠かせないので、それを評価するということです。地域ごとに必要とされる防災対応力というのは当然違ってきます。海沿いの町と山の町、火山が近くにある町や台風がよく来る町では、それぞれ対応すべきことが違ってくるので、そのために地域に密着した防災対策をどう構築していくかを評価するわけです。その評価についても、客観性が担保されなければいけないので、それらをアカデミア、大学の研究機関や政府系の金融機関など、中立的な第三者機関によって、できるかぎり客観的に評価して、各地域の防災力についての見える化を図るということです。

観光と防災の融合 ~地域イメージの向上~

防災に対する地域の対応力についての見える化をして、ランキング付けたり、格付けしたりすることで、防災に努力した地域への観光客の誘致であるとか、企業進出の魅力度の向上につなげたいと考えています。これは、住民に関していうと、Uターン、Iターンにもつなげていこうということです。

防災力向上のために、自治体や地域企業、住民が共に努力することで、地域イメージの向上を図るということです。それによって、防災に強いまちという地域イメージ向上だけではなく、観光や企業進出、地域に戻ってくる住民の増加など、経済的メリットも期待できるような仕組みづくりを図れるのではないかと思っています。

もちろんこういったことは、今の段階ではまだ構想段階で、詳細についてはこれからの検討になるのですが、いい意味での地域間競争を生むことによって、国全体の底上げが図られるのではないかと思っています。それと同時に、見えにくい自治体や住民の防災の努力が、格付けやランキングによって見える化されること、評価されることは、モチベーションにもつながると思いますし、さまざまな効果が期待できるのではないかと考えています。

特にこれからは「観光と防災の融合」という点が地域の発展のために欠かせない要素になるのではないかと思っています。具体的に言うと、風光明媚な所は自然災害のリスクも高いです。2020年の東京オリンピック、パラリンピックの際にも、地震のない国から来た外国人の方々に安心して観光に来てもらえるような地域づくりがとても大切だと思います。

当然のことながら、地震を防ぐことは不可能ですが、対策を取っていくことは可能です。その対策を見える化することで、海外の方々にも日本に安心して来てもらえますし、何かあった時も対応してもらえるとなれば、その街を観光目的地に選択してもらうことができるわけです。そのように、観光と防災が融合することで、地域の持続的な発展につながるのではないかと思っています。

ランキングがいいのか格付けがいいのかは、これからの検討課題ですが、毎年それらを発表することで人々の話題になり、防災が文化として定着していくのではないかと思います。それをテレビや新聞やラジオ、インターネットを通して、毎年発表していくわけです。結果を発表するだけではなく、そのためにどう努力しているかということをドキュメントとして取り上げたり、一年を通じて、防災に関する人々の取り組み、地域の取り組みをコンテンツ化できるのではないか、ある意味エンターテイメントにできるのではないかと思います。それによって、いろいろなドラマが生まれると思いますし、1位を目指したい所や、あまりよくない評価だった所が上を目指すような姿など、いろいろな防災に関するドラマが各地にあると思うので、それをコンテンツ化していって、人々の話題につなげていくことで、少しでも文化として定着していけるのではないかと思っています。

これから東大の目黒教授のような、さまざまな専門家のご意見も伺いながら進めていきたいと思っています。専門家のリーダーシップの下に、電通として裏方役をさせていただいたり、コミュニケーション的な部分でお手伝いをさせていただく中で、こういった防災がわが国においてできるだけ定着していくお手伝いが、少しでもできればと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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