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防災インタビューVol.118

災害時に安全に家に帰るために

放送月:2015年7月
公開月:2016年2月

川村 丹美 氏

ニュートン・コンサルティング

プロフィール

私は、ニュートン・コンサルティング株式会社で「BCP」のコンサルティングをしています。「BCP」とは何かといいますと、「事業継続計画」、「ビジネスコンティニュイティプラン」という言葉の略です。地震などの大災害が起きて、企業がうまく事業を続けられなくなったときにどうやってカバーして、どうしても続けなければならないものをどうやって続けるか、または止まってしまったものをできるだけ早く復旧するにはどうしたらいいかということを一緒に考えるお仕事をしています。

もともとは、リスクマネジメントのコンサルティングをしていまして、個人情報の漏えいをしないようにとか、情報システムがうまく使えるようにルールを考えることをやっていましたが、やはり大きな地震が心配されるようになってきましたので、大地震や大きな災害が起きて、企業が事業を続けられなくなるような事態が起こったときには、「BCP」というものがとても大事になるのではないかと考えました。その前は、出版社の宣伝マンをしており、そこからコンサルティングに転向しました。

「BCP」を実践するために大切なこと

私は、企業向けのBCPをずっとやりながら「これはちょっと変だな」とずっと疑問に思っていたことがあります。企業のBCPというのは、まず「人が大切だ」ということがなかなか認識されない部分がまだあります。事業を継続するときに「止まってしまったら困るな」とまず考えるものは、電気やインターネットや電話が多いと思いますが、それと同じぐらい動かしてくれる人がいないと業務は継続できないということがまず大きなポイントとしてあります。それがだんだん分かってくるようにはなってきたのですが、実際にどのように人を充てていくのかという話になると、ものをあてがうように人を持ってくるという話になってしまいがちです。

企業を実際に動かしていく人についてよく考えてみると、人の後ろには家族が必ずいるわけです。やはり自分の家が被災したかもしれないと思うと心配で家に帰りたいし、ご家族が安全なのかどうか分からないうちは仕事に戻ることはなかなかできないと思います。しかし、そういうところがなかなかまだ考慮してもらえないというか、計画の中に入っていない部分があります。私自身も子どもを持つ母親なので、そういうところが気になっています。誰もが安心してとまでは言えないですが、腹をくくって仕事ができるような状況ができなければ、企業のBCPもうまくいかないのではないかと思っていまして、そこにもっとBCPを作っている企業側が目を向けて、どうやったら社員がそういう気持ちで働いていくことができるように持っていけるかということをもっと考えてほしいと思っています。

災害時の社員の帰宅の条件

大災害が起こったときには、まず社員の方が帰宅できる条件と帰宅できない条件というのがあると思います。これは、実は社員の方から見た視点と企業の側から見た視点ではちょっとニュアンスが違ってくるのですが、まず企業の方から考えると、帰宅させていい条件と帰宅させていけない条件という言い方をします。それはどんなことかと言いますと、帰宅させていい条件というのは、まず社員の安全が大事ですから、社員が安全に帰宅できること。もう一つが社員を帰してしまっても業務の継続に支障がないかどうか。こんなような目で企業が見ています。これが確保できなかったら帰宅させてはいけないというふうになるわけです。

では、社員の方の目線で言いますと、帰宅しなくてはならない条件と帰宅しなくてもいい条件というふうな言い方にちょっと変わってくるのですが、帰宅しなくてはいけない時は例えば家族の安否が分からなくて、どうしても確かめずにはいられないといった時。それから家族の安否は分かったけれど、どうも困っているようで、自分が行かなければいけないという状況になった時です。どんな時に家族が困るかと言いますと、例えばご自宅に介護を必要とするお父さんやお母さんがいて、一人ではどうにも動けないとか、小さなお子さんを保育園などに預けていて、そのお子さんを迎えに行かなくてはならないなど、とにかく自分がその場に戻らなくてはどうにもならない、家族が困っていて帰りたいという状況です。その逆に、帰らなくてもいい状態はどういう状態かというと、家族が無事で安全な場所にいることが分かっていて安否確認ができている状態。もう一つは自分が帰宅しなくても家族の安全が保障されているという状態。この状態がうまくつくり出せれば、東日本大震災の時のように、無理して深夜までみんなが歩いて遠い道のりを帰るようなことをしなくても済むと私は考えています。

東日本大震災の時には、私の会社にもやはりたくさん社員が残っていまして、「どうしても帰らなくてはならないんだ」という方がたくさんいました。自宅と連絡がとれて、お子さんも奥様もご無事でいると分かっているのに、「僕はこれから帰るんだ」と言って会社を出ようとする人もいましたが、そういった考え方を変えてもらわなくてはいけないと思っています。大きな地震が起こった後には、たいてい大きな余震が来ます。身一つで歩いていて、途中で余震にあって上から物が落ちてきたりすることもありますし、まだまだ危険がいっぱいな状態です。なので、少し落ち着いて、地震が収まってから歩き出してもらうとか、できれば交通機関が復旧してから帰ってもらうということを考えてもらう必要があるわけです。そういったところの教育も企業はBCPと合わせて社員の方にしていかなくてはいけないと思っています。

どちらかというと企業は業務を継続することに一生懸命で、社員の家族がどうか、社員の気持ちがどうかというところまではなかなか考えが回っていないのが実情だと思っています。そこを変えていく必要があると思います。

東日本大震災の際には、かなり街が混乱したこともあって、安全が確保できれば社内にとどまろうという考え方も結構増えたかもしれません。私は、東京都の一時滞在施設の開設アドバイザーもやっていまして、あの時の教訓を踏まえて、東京都ではむやみに人を歩いて帰らせないようにしよう、安全が確認されるまで企業の中にとどまろうというように方針を変えていますが、そういったところもまだまだ企業の中では認識されていない部分でもあります。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。