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防災インタビューVol.118

災害時に安全に家に帰るために

放送月:2015年7月
公開月:2016年2月

川村 丹美 氏

ニュートン・コンサルティング

子どもが自信を持って行動するために

日ごろから子どもに教えておきたいことについて、少し具体的にお話ししたいと思います。例えば子どもだけで親の帰りを待っていて、お腹がすいたからカップ麺でも食べようかということがあるとします。こういう時に小さいお子さんだと3分計れないじゃないですか。こういう時には無理やり時計の見方を教えておくという手ももちろんありますけれど、3分かかる歌を子どもと決めておいていただきたいと思います。例えばアンパンマンの歌が1分30秒だったならば、これを2回歌ったら食べてもいいんだよと教えてあげてください。そうすれば時計が読めないような年齢のお子さんでも3分間待つことができます。これは多分いろいろなことに応用してもらえるのではないかと思うのです。

そういったことを言葉だけで教えるのではなくて、日ごろからごっこ遊びみたいなことで取り入れて、子どもに体験させてあげてください。例えば土曜日の夜とかに「停電ごっこ」をしてみてください。電気が使えない時ってどんなことが困るのかを子どもと話し合って、「じゃあ電気が使えなかったら代わりにどんな方法があるかな?」という話をしていただきたいです。そして「懐中電灯がうちのどこにしまってあるか知ってる? じゃあ持って来てくれる?」と言って電気を消して、懐中電灯を持ってきてもらうのです。そうしてその懐中電灯を頼りにいろいろなことをやってみてください。また「ロウソクがどうして危ないか分かる? これは火を使うからなんだよ」という話もしてもらいたいですし、ロウソクを使わずにこの懐中電灯を使うためには、時々懐中電灯がつくかどうか試してみようというふうに日ごろから訓練をしてもらいたいと思っています。

これは実は最初にお話しした「BCP」にもいえることで、会社のほうでも定期的に訓練をすることで社員の方たちにいざというときの行動に慣れてもらうということがあるのですが、お子さんたちにとっても日ごろからこういうお話を親御さんとして、実際にやってみるということが非常に大事です。子どもたちは「非日常」の体験が大好きですし、想像力が豊かですので、そういう遊びを取り入れながらいざと言った時に役立つ、こういう練習は大事です。

それと、もう一つお伝えしておきたいポイントがあるのですが、多分親のほうは非常に心配なので「地震が起きたら怖いんだよ。危ないんだよ」と言うと思いますが、あまりここを強調してしまうと、お子さんが怖がってしまって、一人になるのを非常に怖がったり、地震が起きたときにパニックになってしまうことが考えられます。ですので、必要以上に怖がらせないようにしていただきたいと思います。そして子どもに実際にやらせてみて、手を出したくなるけれどちょっと我慢していただいて、お子さんに自分でやらせてみて、できたら力いっぱい褒めてあげることで、お子さんに「自分は一人でもできるんだ」という自信をつけてあげてください。そうすれば地震が起きて親が帰ってこなくても、自分の力でお父さんお母さんが帰ってくるまで頑張って持ちこたえてくれると思います。

自分で考えて、行動して、自分の身を守る

子どもの災害への対応能力ということでは、子どもが自分で考える習慣をぜひつけてあげてもらいたいと思っています。「地震があったら机の下にもぐれ」と教えるのではなく、理由も添えて教えてくださいというお話をしましたが、さらにスマホや携帯やネットなど便利なものに依存しないということもお子さんとお話ししていただきたいと思います。

例えば人に伝えるための手段というのは、スマホや携帯だけではないはずです。昔だったらのろしがあったよという話もあるかもしれませんが、「人に何かを伝えるためには他にどんなものがあるかな」ということを日ごろから会話の中で、お子さんとやり取りして「情報って、じゃあどんなところに集まるんだろう? 区役所かな? 学校かな? 駅かな?」というような話をたくさんしておくことで、お子さんの中に適応力がついて「これを使おう」と思ったものが使えなくても、その時使えるものを自分で取捨選択して使うという行動がとれるようになるわけです。そういった力をお子さんにぜひつけてあげていただきたいと思います。

もう一つは「あきらめないこと、そして知恵を絞ること」をぜひお子さんに教えていただきたいと思います。助かるためにどうするか、一生懸命考えて持っている力を振り絞って、あきらめないでやるということを、できればゲーム感覚でいろんなことを体験していく中で覚えていってもらえるといいと思います。それからもう一つ、非常時に乗り越えてもいいものを教えてあげてもらいたいと思います。私が子どもに言っていたのは「家の中でガラスが割れてしまったら危険なので、その時は家の中で運動靴を履いていいんだよ」ということです。普段だったら絶対に許さないと思うので、子どもも恐らく親がいないときにそんな行動をとっていいのかと非常に迷うと思いますが「何か起きてガラスが割れてしまったときは、家の中で靴のままでいてもいいんだよ」と教えてあげてください。また、わが家では「人さらいに遭いそうになったら、ランドセルを捨てて逃げていいよ」と教えていました。ランドセルというのはすごく高価なものだし、一個しかないし、教科書もつまっている。だけどそういうものも命には変えられないんだということをお子さんに教えてあげてもらいたいのです。そうすると非常時に「何が優先順位が高いのか」ということがだんだんお子さんに分かってくると思います。このようなことを子どもたちと繰り返してやっているうちに、ある日気づいたら「うちの子、成長したな」と思える日がきっと来ると思います。

こういう経験を積み重ねていくと、災害が起こったときにも「自分は日ごろから子どもにたくさんそういうことを教えているから、今はたまたま連絡がつかないけれど、きっと子どもは大丈夫で家に安全にいるに違いない」と思えますし、たまたまうまく連絡がついてお子さんが家にいることが分かったら、「自分は2日間ぐらい帰れないかもしれないけれど、きっとうちの子どもだったら、今までいろんなことをやってきたんだから、自分たちの力でしっかり乗り越えてくれるに違いない。自分の帰りを安全に待っていてくれるに違いない」と信じることができます。そうすれば、ご自分も安全な所にとどまって、そして安全に帰れる状態になったら帰ることもできます。このように、誰もがけがをしないで、無理をしないで乗り越えていけるような力をつけてもらいたいと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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