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防災インタビューVol.119

災害シミュレーションによる災害への備え

放送月:2015年8月
公開月:2016年3月

木村 正清 氏

NTTラーニング

日ごろの準備 ~災害時の連絡手段~

もう一つ、実は見落としがちな点があるのですが、それは「災害が起こったときに、家族などの安否をどうやって確認するんだろう?」ということです。皆さんも経験があると思いますが、実際に災害が発生してしまうと、例えば「実家のお父さんお母さん大丈夫かな?」と思って電話をかけても、プップッという音がなるだけでつながりません。これは輻輳と言いますが、回線に交通渋滞が発生してしまうために、ある一定量しか通さないようにして規制がかかります。それでほとんど実際に通話ができなくなって、家族の安否が確認できないという状況に追い込まれます。

そこで、いざそういう状況になったときに備えて、家族で安否を確認するための手段を皆で話し合っておくということが大事です。その方法として、皆さんにぜひ使っていただきたいのが「災害用の伝言ダイヤル171」です。これはNTTが、災害が発生したときに回線を開放します。輻輳状態はほとんどないと考えていただいていいと思います。こういったものを使って、自ら「安全だよ」ということを情報提供、発信していただきたいと思います。かかってくるのを待っているのではなく、自らが「安全だよ」「大丈夫だよ」ということを積極的に発信するために開発されたのが、この「災害用伝言ダイヤル171」というサービスです。このサービスを使って、離れている家族に対して伝言を残せば、その録音を聞いた家族が安心することができますので、ぜひ使っていただければと思います。実は私も家族が被災したのですが、この時にはやはり10日以上全く連絡が取れなかったという状況がありました。そういった中でこういう災害用伝言ダイヤルといったものがあれば、これを利用して家族安否を確認することができるので、精神的な負担もかなり楽になります。家族の安否が確認できないとなかなか居ても立ってもいられないという状況に追い込まれますので、この「災害用伝言ダイヤル171」に加えて、インターネットを使った同じようなサービス「災害用伝言板、WEB171」というものや、携帯でいえば、手前味噌になってしまうのですが、ドコモの場合ですと「災害用キット」というものもありますので、こういったものを普段から理解して、頭の中に置いておいていただいて、家族で「いざというときにこれを使おう」という約束をしておいていただけるといいかと思います。

これら「災害用伝言ダイヤル171」「災害用伝言板WEB171」は、災害時には使えるのですが普段は基本的にはサービスはありません。ただ、いざというときに備えて、毎月1日と15日、正月の三が日、8月31日から9月1日、1月15日から21日に無料体験ができるシステムになっているので、ぜひこの期間を利用して体験しておいてほしいと思います。伝言ダイヤルは、10伝言までが録音可能になっています。これは、被災地にいる方々が、自分の身が安全ということを積極的に発信するためのツールで、離れたところから確認できるように積極的に情報を発信するために、録音時間が30秒になっています。無料体験の時には6時間だけなのですが、実際に災害が発生した時には、48時間まで利用可能になっています。「災害伝言板WEB171」もインターネットで比較的容易に使えますし、インターネット回線の断絶はまずないと考えられているので、ぜひホームページを見て、利用の仕方を確認して体験していただければと思います。災害時は、電話はまず使えなくなってしまいますが、伝言ダイヤルで発信したり、インターネット回線を使ったり、先ほどのドコモ災害用キットなどを利用したりして、家族の安否を確認する手段を事前に家族で話し合って決めておいて、いざというときには、こういうふうに連絡を取ろうということを共通認識として持っていて、役立てていただければと思います。

まず、命を守るための行動を

私は宮城県女川町の出身で、実は私の両親も被災をしました。その経験が自主防災組織のリーダーを養成するための、今の私のエネルギーの原動力になっています。ここで皆さんにお伝えしたいことが一つあるのですが、それは、実は津波で両親2人とも亡くしています。両親はずっと安否が分からず行方不明の状態でしたが、普段から父は私に「いざ津波があったら必ず逃げる」というふうに言っていたので、私もあの東日本大震災、東北地方太平洋沖地震が起きた時には、実は新橋のビルにいたのですが、父ならば必ず避難してくれているだろうと思っていたのです。ところが10日後にしか実家に戻れなかったのですが、10日後に戻って、もろもろ近隣の方々や住民の方々に聞いたら、父はどうやら最後は家に母を助けに戻ったようだということを最後に聞きました。その時に思ったことが二つあって、一つは、これは父と約束していたことと違うじゃないか、父は本当は避難すると言っていたのに守ってくれなかったという一縷の口惜しさと、もう一つは、やはり最後は自分の身の安全も顧みずに、母を助けに行ってくれたということです。

皆さんに、もう一度お願いしたいのは、やはりいざというときには避難をするということを徹底してほしいということです。昨今2つ、3つ、被害がありました。例えば広島の土砂災害もそうですが、やはり前兆状況があって、避難指示や勧告など、事前に情報が出たら空振りでもいいから逃げる、避難するということです。自分の命は自ら守る、これを普段から徹底をしておくことが非常に重要なのではないかと思います。私の父の話は少し残念な話ではありますが、普段から避難をするということをもっと徹底して、訓練していれば、あの時逃げていてくれていたのかなというふうに実は思ったりしています。

災害心理学用語で「正常性のバイアス」という言葉があるのですが、人は避難指示とか勧告が出たときにどれぐらいの方々が避難されると思いますか? これはNHKの特集でもやっていたのですが、最大で約50%と言われています。つまり人は本当に目の前に「あっ、これはまずい」というふうな危険が迫らない限り、なかなか逃げようとしないということがあるのです。

東日本大震災は相当な大きい地震で、普段とは違うという状況であったにもかかわらず、やはりなかなか避難できない方も実際にはたくさんいました。その反対に「釜石の奇跡」のように、事前に避難して命を守ったという事例もあります。やはりこういう事例に習って、普段から徹底して訓練をすることが大切で、大地震が起きたら津波が来るということを念頭に入れて、「まずは避難する」ということを徹底しておくことが、防災教育において事前防災の重要性を学ぶためにも重要ではないかと思います。こういうことがあって、私が今防災に携わらせていただいているのも、ある意味運命なのかなと思ってもいます。ですので、自主防災組織のリーダーの方々に話をする際にも、何としても、一人でも多くの命を救いたいという思いから、この話を必ずしています。

「防災ビジネス市場の体系化に関する研究会」の活動を通して

私が参加している「防災ビジネス市場の体系化に関する研究会」というものがありますが、この研究会の活動を通して、防災や減災に対する意識を皆さんに持っていただいたり、地方を創生するための一つの手掛かりといったものを少しでも提供することができたらと思っています。

この「防災ビジネス市場の体系化に関する研究会」は、東京大学の目黒先生が主宰されているもので、私は実はその研究会で昨年度、「東日本大震災プロジェクト」というプロジェクトのリーダーをさせていただき、3月末に報告書を出させていただきました。この報告書の中で申し上げたかったことが3点ほどあります。1つは東日本大震災から得られた500~1000あると言われている教訓を体系化させていただいています。さまざまな教訓もやはり分類して整理して体系化しないと、なかなか提示できないだろうということで、われわれのプロジェクトのほうで体系化して、これを公にさせていただきました。

体系化された中から1つだけ挙げるとすると、すでにもう4年半たっているのですが、実は復興のプロセスを見た時に「少し問題はなかったのかな?」と思ったことからスタートしました。被災された方々にとって非常に重要な罹災証明、被災証明の手続きに、かなりの時間がかかっています。その上、地区ごとに、判断の根拠に統一性が見られないというような問題が報告書の中から垣間見られました。そこからわれわれのほうで「では、こういった復興のプロセスの問題点を解決するためにどうしたらいいんだろうか?」と考えまして、一つ結論に至ったのが「何から何まで行政ということではやはりなかなか難しい場面があるだろう」ということです。例えば私の出身地は女川ですが、女川町の役場は水没していたため、機能がある程度一定期間マヒしていました。こういった時にでも使える、あるいは動ける民間の力を活用して、被災証明あるいは罹災証明という手続きをなるべく迅速に進めていくことが重要で、そこからスタートしないとなかなか被災者の生活の復興というのは成り立たっていきません。こういったところに民間の力を使っていくということを1つ提言させていただきました。

もう一つは、この民間の力を活用するにあたっては、ファンドという形が面白いのではないかということです。われわれのほうでもいろいろ考えましたが、自治体に全部が全部当てはめて民間に委託できるかどうかというのはちょっと難しい場面がありますので、もろもろ分類していった時に、一つ考えられるのは教育分野や福祉分野でした。こういった分野に民間の力を使って、なおかつ、少額でもいいからファンドで民間から資金を集める。そのお金をバウチャーという形を使ってチケット制にして、住民の方々に使っていただけるように配布して、住民の方々に積極的にそれを使っていただくことで、地域のスピーディーな復興につながっていくことが可能になると考えまして、この報告書の中で2つほど提言させていただいきました。

地元に帰ると、NPO法人の方々と教育委員会が一緒になって協力しながらいろいろやっていて、非常によく頑張っておられると思う一方で、あまりスピードが上がっていないのかなと思う面もあります。そういった民間の力を使いつつ、やはり政府の、国の力も使って、ダイナミックに推し進めていくということもまた一方では必要なのではないかと思っています。この報告書の中で、3番目の提言として挙げていることが、恐らくこれが今後テーマになってくるかなと思うのですが、地域の復興、あるいは創生を進めていく上で、防災をきっかけにして、それをトリガーという言い方でもいいのかもしれませんが、非常に積極的に防災に取り組んで効果が上がっているような地域を、例えば防災の格付けというようなことを使って評価していくということです。そうするとそこにインセンティブが働いて、どんどん防災に積極的に取り組もうと思う気持ちも生まれますし、防災に取り組んだことによって、地域の安全が確立されて、より住みよい地域、レジリエントな社会を築くことができると思います。そういったことにシフトしていけば、そこにまた新たなビジネスが創発してきて、なおかつ住みやすくて安心で安全なコミュニティだと評価されれば、当然そこに住民が集まってきます。そういうインセンティブを働かせて、われらの地域、われらのまちで住みやすいまち、安全なまち、防災に非常に優れたまち、こういったものをきっかけにして地方創生につなげていくことはできないかなと思っています。

特に被災されている地域の方々にとっては、今は非常に辛い時期にあるのかなと思います。防災にも積極的に取り組まなければいけない、一方で失ったものが非常に多い、そういった中で、資源も非常に限られています。だとしたら、そこに積極的にインセンティブを利かせ、なおかつ例えばダイナミックに国の予算を重点的に配分していくことが重要です。非常にいい防災計画、防災都市、防災コミュニティ、あるいはレジリエントのコミュニティになるために非常にいい企画があるところには、積極的に財政のほうを投資していただくことで、その地方がよみがえってきます。それは今まで通りのコミュニティではないかもしれませんし、むしろ新たに生まれ変わるというようなイメージです。こんなイメージを皆さんに持っていただいて、取り組んでいただけると、まさによみがえりというか、新たなコミュニティができていくと思います。そこで暮らす生き生きとした住民の姿を、私はぜひ見たいなと思っています。被災地では、集団で住宅を移転するという施策も行われていますが、まだまだ住宅の問題も進捗率が60~70%という状況ですので、安心して住めるような住まいを手当していただいて、その上で、持続的に継続的にそこで暮らせるようなまちづくりを考えていくことが大事だと思います。

国全体で防災をトリガーにして、本当にいい、よりよい住みやすいレジリエントなコミュニティをひとつでも多くつくりながら、いずれは全てがそうなっていただければ本当にいいと思います。ぜひそういうまちづくりを目指していただきたいと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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