1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. 災害情報とボランティア
  6. 災害支援の現場から見た防災
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.127

災害支援の現場から見た防災

放送月:2016年4月
公開月:2016年11月

阪本 真由美 氏

名古屋大学減災連携研究センター特任准教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

災害への備え ~備蓄と相互応援協定~

災害に備えて、市町村は非常用備蓄を用意しています。多いところでは、人口の1割程度の人が3日ぐらいは生きていけるような食糧を備蓄しています。ところが、こういう備蓄を普段から持っておくことは無駄と考えるところもあります。災害に備えてコンビニエンスストアやスーパーと相互応援協定という協定を締結して、いざ災害が起きてからスーパーやコンビニから食糧を提供してもらおうという取り組みが東日本大震災の前に進められていました。そういう状況で東日本大震災が起こりましたので、いざ自治体側がスーパーやコンビニに「食糧を提供してください」と言ったところ、流通網が全てストップしていたため、食糧のストックがなく、食糧を調達できないという状況に陥ってしまいました。大変事態は深刻でして、備蓄している食糧もない上に、年度末ということで自治体側には食糧を買う予算もないという課題もありました。そういう中で市役所の職員たちが、取りあえず市の名前で食糧を買い集めた所もありましたし、町長自らトラックを運転して食糧を調達に行った所もありました。また、岩手県沿岸部の釜石は、内陸の遠野市と災害時に支援をするという協定を結んでいましたので、遠野の市民の方々が自分たちでお米を出しておにぎりを作って被災地に届けるということもやっていました。

災害時に備えて食糧を確保するために協定を締結してはいても、ストックとしての食糧がなかったというのがとても大きな課題だったので、現在は自治体ではストックとしての食糧を持つようにしています。ただいざというときに自治体に任せてばかりいるのも問題です。東日本大震災の時に被害を受けた山元町では災害後、いち早く被害を免れた地域の住民が自宅にあるお米や野菜を提供し合って、炊き出しをやっていました。このように被害を受けていない地域の人と被害を受けた地域の人が連携して、自分たちで炊き出しをするとか、自分たちで対応するというのがやはり何よりも大切だと思います。

東日本大震災では、スーパーやコンビニから最初に水や保存できそうなパン、懐中電灯用の単一の電池などがなくなりました。このようなものは、いざ災害が起こってから買いに走っても無理なので、日ごろからご自身でストックしておくことが大切です。

非常用備蓄より、日常のストックを

災害後に行政から届けられる食糧というのは、実は栄養バランスというのは全く考えられていません。エネルギーを確保することに重点が置かれているので、ハイカロリ―で偏ったものばかりだったりします。アレルギーに対応している食糧もありませんので、栄養バランスを含めて自分で考える必要があります。

非常用備蓄食糧の特徴というのは、実は保存期間が他のものより長めということですので、日ごろから使っている保存食をそのまま使っていただいてもいいと思います。また、なぜか防災という名前が付くと、あまりおいしくなかったり、味気ないものが多いので、特別に防災用でなくても身近なものを備蓄していただければよいのではないかと思います。先日私も職場の仲間と一緒に「おいしい非常食ってなんだろう」というのを考えてみました。どうやって調べようかと話をした時に、一人のスタッフがクックパットという料理用のレシピが載っているサイトで「火を使わずに調理できるメニューを探せばいい」と言ったのですが、これは新しい発見でした。私たちだと、つい「防災」というキーワードで引いてしまいそうですが、そうではなくて非常食というのは、結局火を使わなくてできるものだったりするわけです。例えばパスタを作るときに、まず水で茹でると思いますが、そうではなくてトマトソースの中に入れて戻すだけで、トマト味のパスタになります。また、ツナ缶というのもよく非常食で出てくるのですが、これを保存がきくパンに挟んでサンドイッチを作るだけでツナサンドになったりします。お米だと水と火を使わないと炊けないものですが、それよりも火を使わなくて調理ができる非常食、さらにおいしい非常食、そういうのを自分たちで探して作っていくというのもとてもいいのではないかと思います。

災害時の非常食のイメージはご飯と豚汁というような炊き出しのイメージがありますが、非常食を用意するのではなく、日常買って食べているものを少しずつストックしながら回していくというのがいいかと思います。これならば誰でもできますし、逆に賞味期限が長いものを買ってしまうと、すぐに食べなくてもいいと思ってしまって、つい忘れがちになってしまいますが、レトルト食品というのは、栄養バランスもいいですし、野菜や肉も入っていますので、食べてしまったらまた買っておけばいいかと思います。

また、食糧のことだけでなく、トイレの問題も同時に考えていただきたいと思います。断水して一番困るのはトイレの問題です。地震が起こった後、2時間もすると高齢の方や小さなお子さんは、特にトイレが我慢できずに行きたがります。ところが断水しているので1回流してしまうとその後流せなくなってしまうという大きな問題があります。そういう時に備えて、自宅のトイレにビニール袋をかぶせて、そこに凝固剤を入れるという方法もありますので、ぜひ準備しておいていただきたいと思います。これもわざわざ調べて買わなくても、ドライブ時の非常用トイレを使ったり、小さなお子さんがいる家庭でおむつがあれば、吸水剤が入っているので、それをそのままビニール袋に入れてトイレに掛けるだけで十分代わりになります。このようにぜひ日ごろから考えて、準備をしておいていただきたいと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針