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防災インタビューVol.127

災害支援の現場から見た防災

放送月:2016年4月
公開月:2016年11月

阪本 真由美 氏

名古屋大学減災連携研究センター特任准教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

口永良部島の噴火災害に学ぶ

2015年5月29日に口永良部島という火山が突然噴火しました。午前中に噴火して、「噴火警戒レベル5」という、噴火に対する警戒情報が2008年にできて初めて、一番厳しいレベルが発表されました。噴火後にこの「レベル5」が発表されたのですが、地域の方は噴火と同時に避難を開始し、小さな島なので、全島避難しなければいけない状況で避難をしましたが、大変迅速な災害対応で一人も犠牲になることはありませんでした。実際の被害はゼロではなかったのですが、亡くなる方も出ずに、なぜきちんと避難ができたのかというと、一人一人が災害を他人事ではなくて自分事と捉えて、情報を待つことなく噴火の後すぐに避難することができたからです。

口永良部島というのは、2014年8月3日にも大きな噴火をしました。この時も突然の噴火で事前の情報も全くない中で、地域の人は慌てて避難所に決められていた場所に行こうとしたのですが、そこでは火砕流が来てしまうかもしれないと思って、急きょ避難場所を高台の上に変えました。その後、地域ぐるみで避難体制を見直し、避難場所自体を変更して、避難場所に行く道も自分たちで整備しました。この島では毎年災害訓練をやっているのですが、行政主導の訓練ではなく、自分たちが主導して「突然火山が噴火して避難する」というシチュエーションを想定して、事前に情報もなく、いきなりみんな訓練に入って避難をしました。こういう取り組みが2015年の噴火避難に結びついていたと思います。

やはり、よく「災害、災害」と言いますが、どこかで災害が他人事になってしまっているというのが現実問題だと思います。東日本大震災で大きな被害を受けた東北沿岸地域は、明治の三陸津波でも被害を受けましたし、昭和の三陸津波でも被害を受けて、さらにチリ地震でも被害を受けていました。それにもかかわらず、実際には逃げなかった人がいるというのがやはり大きな問題だと思います。

ここ神奈川でもやはり関東大震災という大きな災害に直面しています。それにもかかわらず、今それぞれがきちんと準備できているのかというと、どこかで他人事だと考えている人がいるのではないでしょうか。そういう人たちが、災害が起こってからスーパーに物を慌てて買いに行こうとするので、買えなくなってしまったりするわけです。また余分に買おうとするために、スーパーから物が消えてしまったりします。何かが起こってから動くのではなく、日ごろからきちんと災害に備えておくこと、災害は他人事だと考えないということが何よりも大切です。災害は相次いでありますし、関東大震災が起こってもう百年近くたっているので、真剣に考えておく必要があるのですが、どこか他人事になっていると思います。

私は現在愛知県にいるのですが、ここも1944年に東南海地震、1945年には三河地震があったにもかかわらず、地域の人々は「災害は起こらない」と考えていたりします。地球規模の動きからみると百年なんて大した時間の流れではないはずですが、人間は自分の人生のスパンで物事を考えようとするので、自分の人生の中で直面していないとないものだと考えてしまう傾向がありますので、ぜひ常に備えていただきたいと思います。

災害による直接死と災害関連死

これまで災害が起きる前、そして起きた時の話をしてきました。地震や津波などの災害が起きた時に命が守れずに亡くなってしまう方のことを、「直接死」と言っています。それに対して災害後の避難生活の中で、避難生活のストレスなどによって亡くなられる方もいます。こういう方のことを「災害関連死」と言っています。阪神淡路大震災の時に、6443名の方が亡くなられたのですが、このうち85%は直接死でしたが、15%は災害関連死でした。また、東日本大震災では2万人近い方が地震、津波が起きた時に亡くなっていらっしゃいますが、その後の被災生活の中で3千人を超す方が現在までに亡くなられています。

災害による死を防ぐには、やはり起きる前、そして起きた後の両方の生活を考えて防災対策をやっていかなければいけません。ところが実際のところ見ていると、災害が起きるまでのことはすごく考えられているのですが、起きた後の関連死を防ぐ対策がとても弱いように思います。これはなぜかというと、災害が起きた後のイメージを多くの人が持っていないからではないかと思います。災害が起こるのは一瞬のことですが、災害が起きた後の生活というのは2年、5年、10年と続いていく、非常に長い生活になります。災害によって家族を失い、仕事を失い、あるいは住まいを失うなど、いろいろなものを失ってしまうと、その中で生活を立て直そうという気力すらなくなっていきます。そういう事態にならないためにも、やはり事前の備え、災害後を見据えた上での備えをやっていかなければなりません。しかしながら、きちんと備えていないので、災害が起こったときは避難所に行ったものの、避難所に行った後というのは、なかなか超えられずにいると思います。東日本大震災の時の被災後の生活がとても大変だった背景には、被災した後、地域をどうやって再建していくのかというところまで十分議論ができていなかったという課題がありました。復興に大変時間がかかっているのですが、なぜかというと、やはり被災した地域でどういうまちをつくっていくのかという住民間の合意をとるのが難しかったという問題があったと思います。住民の中で高台に行くのか、あるいは元居た所で再建していくのか、そういう話も日ごろからしていれば、もう少し早く再建が進んだのではないかと思います。

同じ話は先ほど言いました口永良部島の噴火でもありまして、「噴火したら、避難する」というところまで話はしており、その通りに避難したわけですが、いざ避難してみると避難先での生活がこれから先何年続くか分からないという状況に置かれてしまいました。今回は12月25日の時点で帰島できる人は帰島できました。ところがまだ帰島できずに避難生活を送っていらっしゃる方もいます。このように避難生活というのは長期化します。ですので、長期化するということを事前に考えておいて対策をしていくというのが大切です。

災害から自分自身の命を守るための「まちづくり」

災害が起きたときに命を守るのは自分自身です。自分で何とかしないと誰かが何とかしてくれるわけではありません。ただ、災害が起こった後の生活で命を守ったりまちを再建していったりするのは地域です。地域ぐるみで災害が起こる前から、起こったらどうするのかというのを考えていかなければなりません。ところが地域といっても誰が地域なのか分からないぐらい、現在都市の中には、特に地域づくりが進んでいない所もあります。災害後の生活を考える上でも、自分が地域の一員であるという、自分の主体性を大切にしていただいて、積極的に「まちづくり」にも参加していただき、事前復興にも取り組んでいただきたいと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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