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防災インタビューVol.130

大地震への備え ~熊本地震からの考察~

放送月:2016年7月
公開月:2017年7月

国崎 信江 氏

危機管理教育研究所代表

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

避難所とペットの問題について

環境省では、災害時におけるペットの対応についてガイドラインを取りまとめており、災害直後、避難するときには最初からペットを連れてくる、いわゆる同行避難を推奨しています。その理由は、人だけ先に避難して、後からペットを迎えに行こうとして二次災害に遭ってしまうことがあるからです。しかしながら、「避難するときには一緒に」ということを推奨してはいるものの、同行避難してきたペットの対応については、益城町では避難所ごとに対応が異なっていました。ある避難所では、ペットを避難所の施設内に入れてオーケーという完全同居のスタイル。ある避難所は、ペットは外に置いたゲージに入れて、飼い主とは別居のスタイル。他の避難所では敷地内にボランティア組織が設置したテントにペットと飼い主が一緒に入る同居のスタイルと、本当に多様な対応をされていました。

ペット好きな人と苦手な人が同居している避難所はお互いにつらいですし、臭いや鳴き声やアレルギー、衛生面の問題もあります。最初は同居が許されていた避難所でも、日がたつにつれて余震も落ち着いた頃から、掃除をして、土足から室内履きに履き替えて、土足厳禁になりました。このころから、衛生面上、ペットが気になる人たちも増えてきて、ゲージに入れて別居というスタイルにしてほしいという要望も高まって、別居せざるを得なかった所もありました。今まで一緒にペットと過ごしていたのに、突然別居を強いられて、それを嫌がる飼い主はペットといることを優先して、避難所から出て行ってしまったということもありました。

首都圏でも多くの方がペットを飼っているので、自治体は対応を事前に明確にして、まずは地域防災計画にペットの対応をどうするのかということを示しておくことが大事です。その上で各町会とか避難所運営組織に説明をして対応を協議すべきです。さらにそのことを住民にも周知をして、訓練の中にその対応を盛り込んでやってみることが大事かと思います。準備としては、別居のスタイルであった場合、ペットの数に対するゲージは足りるのか、ペットの夜間時の見守りはどうするのか、別居の時の飼い主やペットのストレスをどう緩和していくのかというようなことまでも考え合わせて、必要な物の備えを進めていく必要があります。また実際の対応として、ペットの支援団体との協定も必要になってきますので、益城町を含めて、今被災地でどんなことが起きているのかに留意して、情報を集めて話し合っておくことが望ましいと思います。

また、飼い主としても、トイレ、食事、けがに対応する備えの他に、ゲージに入るような習慣づけや、人を噛まないというようなしつけも必要になります。あとは犬ですと、狂犬病の予防注射をして備えたり、行方不明になったときの写真の用意をしたり、日ごろから鑑札をしっかり付けておくといった備えも大事ですし、いざというときにペットホテルや実家など、預け先なども考えておくと安心だと思います。

災害時の断水に備えて

今回の熊本地震では、水が出ないことで、生活のレベルが低下し、衛生面も健康面も含めていろいろなところに影響があることを改めて実感しました。特に、女性から上がってきた問題は、なかなか洗濯ができないということでした。下着を用意していても、洗うことができないと困ってしまいます。これは毎日毎日起こる問題です。たまった洗濯物を持ってコインランドリーに行って、1時間ぐらい並んで、約900円かけて洗濯しても、次の日からまた洗濯物が増えていくということで、またお金がかかる、また並ぶ、というように、洗濯だけで1日を使い、お金を使い、本当に大変な思いをされていました。

トイレについても、益城町に設置された仮設トイレはなぜか和式が多く、十数個並んでいる仮設トイレのうち、わずか2個しか洋式トイレがありませんでした。これは、今までの被災地でも言われていたことですが、仮設トイレには、照明がなくて夜間不便だったり、杖や傘を置く場所がなかったり、段差があって、足腰の不自由な方や車椅子を利用している方には使えなかったり使いづらかったりという問題もありました。

お風呂についても、長い時間待って、ようやく入れるのは5分ぐらい。他の方が待っているから急いで出なくてはということで、時間を気にしながら急いで出てくることになると、待つ時間がもったいないし、疲れてしまうということがあって毎日は入れなくなってきます。特に高齢者の方はそれを負担に感じて、お風呂に入る回数を減らしていったということもありました。

このように断水したときにそれに代わるような備えを事前にしておかないと、非常につらい被災生活を送らなければならなくなります。そのためにも、イメージとして、断水したときに何が困るのかを考え、水を必要としない災害用のトイレや紙おむつ、体を拭くウェットタオルや水を必要としない口腔ケアとしての液体ハミガキなど、いろいろな代用品をしっかり用意しておくことが大事なことだと思います。

日本初の試み ~福祉避難所用トレーラーハウス~

今回の熊本地震では、これまでの被災地にはない、画期的な新しい取り組みが導入されました。それが益城町に設置された福祉避難所用のトレーラーハウスです。トレーラーハウスというと皆さんプレハブのようなイメージをされるかもしれませんが、ツーバイフォーの工法で作られた、いわゆる家をイメージして下さい。車道を走れるぐらいの幅の家に、車輪が付いているイメージです。家ならではの環境の良さがあるトレーラーハウスを、道路を走らせて益城町に持って来て、そこに優先的に配慮を必要とする要配慮者の方々に入っていただきました。そのトレーラーハウスを見て、周りの被災地の方々からは、福祉避難所以外にもいろいろな用途で使いたいという声がありました。

これは日本で初めての試みですが、今後ますます災害時におけるトレーラーハウスの活用は広がっていくのではないかと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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